野原広子先生のエッセイが好きで基本全作網羅しているマンですが、本作は父親目線として、特に刺さりました。

主人公は、バツイチの子持ち。
しかし、別れるとき、奥さんが子供と一緒に失踪当然でいなくなったことで、離婚後は子供に会えず、どこに住んでいるかもわからない状況で10年が経過する。

勤務先のスーパーで、鈴木さんという若い子が入り、彼女と娘を重ねて親密になっていくなかで、物語が少しずつ進んでいく展開。
鈴木さんの行動力と助言で、娘と再会し、そして・・・という感じ。

主人公の立場、奥さんの立場、そして娘の立場で、それぞれ描かれており、読めば読むほど真実はどこにあるのかわからなくなって、まさに

真実は人の数だけある
事実は小説より奇なり

とはこのことなんだと痛感します。

というのも、最初は、娘に会えない主人公に同情してました。
しかも、主人公の言い分としては、
「元奥さんが娘を洗脳し、誘拐している」
とか言うし、また娘を思い
「お腹すかせていないか」
「寒くないか」
と夜な夜な考えては眠れなくなっている様子は、子を思う親の気持ちに共感しかなく、読んでいて苦しい気持ちでいっぱいでした。

一方でで、ストーリーがすすむと、奥さん側の言い分もでてきて、そこには、主人公とその家族との不和で一緒にやっていけなくなったこと、弁護士を通してありもしないこと吹聴している主人公の様子が出てきて、どっちもどっちな感じになっていきます。

ただ、一つ言えるのは
夫婦、双方の言い分があるにせよ、一番ツライのは、それに振り回された子供という点は共通していて、それもまた読んでいて胸が苦しくなりました。

最後は仲直りしてみんなハッピー、なんてことは起きない。
壊れた関係は修復なんてされない。
悲しいけどこれが現実。

何が正しくて何が悪いのか一概には言えない、夫婦、親子関係の難しさを実感する、そんな作品でした。

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iメンター すべては遺伝子に支配された
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iメンター すべては遺伝子に支配された
六文銭
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グリーンボックス【合冊版】
六文銭
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武士沢レシーブ
謎に読み返したくなる
武士沢レシーブ
六文銭
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思春期に「セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん」をリアルタイムで読んでいた人はわかってくれると思うのだが、ギャグ漫画としてのマサルさんの衝撃はとにかく凄まじかった。 意味不明なのに爆笑できるという体験をさせてもらった作品で、シュールのような斜に構えたものでもなく、浦安鉄筋家族のようなわかりやすいギャグでもない。 でも面白い!という今でも強烈に覚えているほど私には衝撃的だった。 そのうえで、次回作がコレ。 そして、『ピューと吹く!ジャガー』に続く。 つまり、マサルさんとジャガーの間が本作。 わかりやすく言うと打ち切りなのだが、これはこれで私にとっては衝撃的だった。 マサルさんの衝撃後、同著者の新連載ということで本作を読んだら、文字通り ??? となった。リアルタイムで読んでいた人は(以下略 雰囲気はマサルさんチックなのだが、ヒーローに憧れるとかバトル要素が強く、どことなくギャグのキレも弱い。 でも、大人になるとなぜか無償に読みたくなる。 マサルさんの著者なのになぜ?と友人とよく話していた思い出補正もある。 加えて、マサルさんからジャガーへ昇華される段階なのか?という捉え方ができたり、純粋に天才だと思った作家の人間味を感じる。 ギャグ漫画の鬼才だと思っていた人間も、迷走するんだなと。 (マサルさんの後半も結構失速感はあった) 大好きな作家の、そんな一部が垣間見えるということで、謎に読み返したくなる作品です。 作家ファンの人にとっては貴重な体験になるのではないでしょうか。 最後に、ギャグのキレが弱いと言いましたが。「イヌーピー」(要はアレ)というキャラだけは、腹かかえて笑いました。
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