「エジプト・シリア編」感想
縁あってイタリア人夫と結婚することになりそのままイタリアで暮らすのかと思いきや、その古代ローマオタクの夫(実際はもっと広い範囲のオタクだと思うけどよく分からない)の「アラビア文学を勉強したい」という希望だけで、エジプトで結婚することになる作者。 1巻に引き続き、凄い人を夫にしてしまったことで遊牧民型にさらに拍車がかかる2巻です。 結婚式を挙げるだけでそんなに苦労するか⁇ってくらい紆余曲折あり笑えます。タクシー代をぼったくられないために、乗るときはとにかく陰鬱な顔をするのがルールになってるのが面白すぎました。はしゃぐとぼられるそうです。笑 エジプトの歴史的建造物などをひと通り巡り、夫がエジプトに飽きた頃、次はさらに古い歴史を感じるシリアのダマスカスへお引越し。 またそれとは別に作者が今まで乗ってきた各国の飛行機事情を描いたエピソードも読み応えありすぎる。改めて日本のサービスレベルの高さを実感。 シリアでの生活も興味深いですが、この2巻では高レベルのオタクの生態をリアルに感じることができます。ベッピーノのオタクレベルは高すぎる。そしてそれに着いてく作者も同様。 2巻の巻末では同人誌「赤い牙」の掲載されたシリアのある女性を主人公にした読切が載ってます。本編のエピソードとリンクしてるのでそこも見所です。 さて次は「チベット編」だ。
チベット編とはなってますが、半分くらいはシリア(というよりヨルダン旅行)の話。それまでは日本にいた作者のご子息・デルスくんをシリアへ呼び寄せようとしたところ日本のマンガアニメが大好きなデルスは断固拒否。しかしシリアのお隣ヨルダンでインディージョーンズの撮影地へ連れて行くというのを餌に釣り上げることに成功。
しかしヨルダンへ着くなり、大人のオタクたちが違うところで大はしゃぎしてデルスくん置いてけぼり。こうして忍耐強く自立した青年に成長したんだなとしみじみしました。
そしてシリアやヨルダンの良さを日本とイタリアそれぞれの家族へ伝えていたら、どちらからも「行く」という連絡があり、日伊合同ツアーが敢行されます。とにかく自由なイタリア人チームに、ツアコンを務めたベッピーノも早々にあきらめムード。旅行にはハプニングがつきもの!という話を色々超越してる部分も無きにしもあらずですが、全部ひっくるめて楽しい思い出になってるのが作者の懐の深さと言うか許容量の多さというか、そういうやつなんでしょう。
さらにチベット編より前に、テルマエ・ロマエの翻訳版が出たのをきっかけにイタリアとフランスでサイン会をする話も描かれます。開催されているコミックフェスティバル内で行われたため、谷口ジローさんなど日本の大物作家との遭遇エピソードが満載。10代の頃に訪れて痛い目にあって最悪のイメージだったパリでは、たくさんいい思い出ができたことでそれが覆ったのがいい話でした。
肝心のチベット編は、漫画業が忙しすぎて限界に達していたとき、現実逃避で一人旅を強行した話です。元々憧れの地だったらしくウキウキで訪れるものの、さっそく高山病にかかるなど、やはりハプニングだらけの旅です。しかし病気になろうと飯がまずかろうとバター茶の飲みすぎて腹を壊そうと、とにかくタフに全力でチベットを楽しむ姿からほんとうに元気をもらえます。
最後に少しだけ、台湾編も載っていて、ここでも腹を壊している作者。もはやそのイメージしかない。
巻末に「また4巻で」と書いてあるので気を長くして続刊を待ちたいと思ってます。