救いがあるのかないのか
魂をもった自律胴人形・ヴァンデミエール。背中に翼をはやし容姿は天使のようだが、その翼で空を飛ぶことはできない。そんな彼女たちが自由を手に入れようとする8つのストーリー。救いがあるのかどうかよくわからない、そんな話です。ヴァンデミエールは見せものだったり慰みものだったりで、創造主に気に入らないことがあれば壊される存在。そして人間としても機械としても、ましてや天使としても偽物でしかない。そんなまがいものとしての哀しさを自覚しながらも、各エピソードにおいて、心に傷をもつ少年や青年たちとともに、自由への扉を開けようとする。その行動には自立とか自我とかの暗示が散りばめられていて、各物語の結末は心にグサリと突き刺さります。単行本用には最終話として描き下ろされた「ヴァンデミエールの滑走」というストーリーがあり、これなどは特に意味深。読後しばらくして、滑走とは飛び立つ前の助走だよなと気付き、結構切ない気分になりました。