荒唐無稽な美術マンガだけど数パーセントの真実があるにコメントする

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hysysk
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1年以上前
石川サブロウ先生は『本日も休診』など絶妙に抑えの効いたヒューマニズム(感動を押し売りしない)で素晴らしいのだが、この作品はなかなか手放しで称賛するのは難しい。 主人公で小作人の大山竹蔵と、御曹司の龍太郎が運命に翻弄されながら互いの絵を高め合う。話の途中で黒田清輝や青木繁、ピカソやセザンヌなど美術に興味がなくても知っている実在の人物が登場し、果ては美術学校に落ちたヒトラーまでもが絡んでくる(人物画ができないというエピソードも史実に沿っている)。 表紙だけ見ると「素朴で絵を描くしか能力のない不器用な青年が頑張る話かな?」と思うだろうが、実は『男!日本海』ばりのあほらしさで、竹蔵は女の裸しか描けない。しかも、より良い絵を描くにはセックスをしなければならない…。 現実の美術界はめちゃくちゃ学歴社会な上に、単に美しいとか技術的に優れているというよりは、その作品がどのように歴史を更新しうるかという点が重視されるので、この話のようなことはそもそも起こりえないのだけども、「芸術か猥褻か」という問題や、「誰が歴史を作るのか」といったすっきりした答えがない問題についても考えさせてくれる。 最終的に竹蔵と龍太郎は美術「業界」とは違った道を歩むことになるが、誰に見せるでもなく1万5000ページもの大作(ペニスの生えた少女が戦う話)を描いていたヘンリー・ダーガーなどもいるように、何らかの形で認められることにはなるかも知れない。

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hysysk
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1年以上前
石川サブロウ先生は『本日も休診』など絶妙に抑えの効いたヒューマニズム(感動を押し売りしない)で素晴らしいのだが、この作品はなかなか手放しで称賛するのは難しい。 主人公で小作人の大山竹蔵と、御曹司の龍太郎が運命に翻弄されながら互いの絵を高め合う。話の途中で黒田清輝や青木繁、ピカソやセザンヌなど美術に興味がなくても知っている実在の人物が登場し、果ては美術学校に落ちたヒトラーまでもが絡んでくる(人物画ができないというエピソードも史実に沿っている)。 表紙だけ見ると「素朴で絵を描くしか能力のない不器用な青年が頑張る話かな?」と思うだろうが、実は『男!日本海』ばりのあほらしさで、竹蔵は女の裸しか描けない。しかも、より良い絵を描くにはセックスをしなければならない…。 現実の美術界はめちゃくちゃ学歴社会な上に、単に美しいとか技術的に優れているというよりは、その作品がどのように歴史を更新しうるかという点が重視されるので、この話のようなことはそもそも起こりえないのだけども、「芸術か猥褻か」という問題や、「誰が歴史を作るのか」といったすっきりした答えがない問題についても考えさせてくれる。 最終的に竹蔵と龍太郎は美術「業界」とは違った道を歩むことになるが、誰に見せるでもなく1万5000ページもの大作(ペニスの生えた少女が戦う話)を描いていたヘンリー・ダーガーなどもいるように、何らかの形で認められることにはなるかも知れない。
ねずみロワイアル
かわいい恐怖の殺し合い #1巻応援
ねずみロワイアル
兎来栄寿
兎来栄寿
『ムムリン』や『オオカミの子』の佐々木順一郎さんのかわいい絵柄で描かれる、残酷なバトルロワイアル。 そう、まさに高見広春さんの『バトル・ロワイアル』と同じようなクラスメイト同士の殺し合いが描かれていきます。1999年に出てリアルタイムで読んだ小説が、四半世紀経った今でもこうして色濃く影響を与え続けてフォロワーを生んでいるのは感慨深いです。 基本的なルールも『バトル・ロワイアル』に準拠しており ・殺し合いは島で行われる ・生徒たちには全員爆発する首輪が付けられている ・島にはランダムで刃物や銃器など武器が配置されている ・1日ごとに禁止エリアが設定され行動エリアが狭まっていく といった具合です。進化しているのは、スマホのような携帯端末でさまざまな情報を得られるということ。ただそれもどこかで充電ができないとずっと使い続けることはできないという制約も面白いです。 殺し合いのゲームが進行する傍らで頻繁にエモーショナルな回想が挟まっていく構成もまた『バトル・ロワイアル』を思い出します。それぞれの同級生たちが、普段の学校生活では見られない陰の姿を持っていたり、非日常だからこそ剥き出しになる感情を表したりといった醍醐味の部分もしっかり描かれていて刺さります。本家も、もちろんゲーム的な部分の面白さもありつつ思春期の少年少女たちが織りなす人間ドラマの模様が名作を名作たらしめた部分ですからね。 同じネズミでありながらそれぞれのキャラクターがしっかり描き分けられているのもすごいです。外見は似ているにも関わらず、それぞれがちゃんと個性的に立てられています。そして、このかわいさがあればこそ本家さながらの酷薄な展開が引き立ちます。 血と裏切りに塗れた島で、彼らの運命はどうなるのか。どのような結末を見せてくれるのか。目が離せません。
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