魂を救ってくれる作品
好きなひとが幸せであればいい。自分の声なんて届かなくても、幸せでいてくれたらそれでいい。 でも、声が届いてしまったら。側にいたいと思ってしまったら。 ネットの中だけで活動する歌姫・ヒナ。ヒナの歌声に救われたひきこもりの少女・かなえ。 偶然の出会いにより、2人の距離が縮まっていきます。 誰かに届いていればそれでいい 歌声が聴けたらそれでいい ささやかな望みは、2人が出会うことによって膨らんでしまいます。 あなたが幸せであればそれでいい、でも側にいたい。あなたに聴いてほしい。 膨らみきった望みが行き着く先は、切実だけどシンプル。 多くを求めてしまっても、距離が近づいても離れても、根底にあるものは変わらないのです。 ナヲコ先生が描く結論は、いつだって優しくて確かなものです。 本当に本当に多くの人に読んでほしい。 魂の柔らかいところに優しく触れてくれる作品です。
こんなに繊細で優しい「救い」の物語が、「コミック百合姫」黎明期に存在した奇跡を思う(「百合姫」の前身、「百合姉妹」から続いた連載)。
キスシーンひとつ無い、女性同士の様々な感情を包摂したこの作品こそが、現在の拡張していく「百合」世界の、感性の基礎になったと言えると思うし、今読んでもその内容は、全く色褪せない。
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ネットで出会った歌声に心を救われた、引き篭もりの女子高生は、不意にその「歌姫」と知り合う。会う度に親密になる二人だが、歌姫が歌に打ち込む為、会えなくなると言う時、二人の心は……。
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神様と出会ってしまった女子高生の、浮かれる気持ちと浮かれてしまった後悔、そして会う度に募らせた気持ちが胸に迫る。
一方、女子高生に温かさをもらい、辛い過去を振り切り、勇気を出してネットの世界から出ようとする歌姫もまた、切実だ。
傷を持つ二人が、互いへの想いをよすがに現実へと踏み出す、繊細な友愛の物語。成人誌でも(同性・異性の別無く)傷ついた心を思い遣る関係性を描いて来た、ナヲコ先生ならではの作品と言えるだろう。
(成人誌の作品に関しては短編集『からだのきもち』をご覧下さい)。