嫌われても、泣いても、私は勝つ。
父の借金返済の為、世界的カードゲームの大会に出る一ノ瀬まなか。母譲りの「不快な」戦い方で、恋も友情も捨てる覚悟で戦いに臨む、まだ中学生のまなかは、戦いの果てに何を見出すのか……。 母の命を繋ぐ為に必死でゲームに強くなった幼少期、そして今は家族を守る為……。中学生のまなかが背負う荷物は、重すぎる。 それに耐えるように、試合中のまなかはいつでも無表情。それが彼女の試合の、異様な緊張感の演出になっていて、息苦しい。 まなかの戦術は「パーミッション」と呼ばれる、相手の行動を阻害するもの。それだけでもいやらしいのに、彼女はプレイに神経戦を持ち込み、相手を陥れる。これがハマる瞬間の、相手が「何も出来ずに呆然と見送る」絶望感が気持ち良い。 楽しくプレイするプレイヤーには嫌われる覚悟のまなかだったが、意外とプレイヤー達は、猛者であればあるほど、まなかを放ってはおかない。そして戦いの合間に、思いがけず人に好かれ、ガードが緩み感涙するまなかに、こちらも涙を誘われる。 このゲーム自体が嫌いだ、と思っているまなかは、次々と出会う猛者達の、様々な「好き」の形を見ることで、抑圧していた自分の心と少しずつ向かい合う。 この作品、例えば何らかの競技者で「自分は才能はあるが、競技への愛情が不足している」と悩んでいる人に届いて欲しい。まなかの心の確かめ方から、新たな気付きを得られるかもしれない。
このマンガ、カードゲームの世界の描き方がかなりリアルだなと思いました。
ショップの雰囲気とか、戦術への感触とか…。
パーミとかカウンターって別に当たり前の戦術なんですけど、ビミョーな印象の悪さがある感じとか、カードやったことある人だったら「あ、あぁ〜〜〜ッ!!」ってなる瞬間がとめどなく押し寄せてくるような。
多くのカードアニメって主人公が闇堕ちしたときに「そのゲームが楽しい」っていう思いを取り戻す展開があると思うんですけど、これだけリアルな世界観でそれをやられるとちょっとベクトルの違う迫力がありました。
ラブコメの魅力もさることながら、まだあまり知られていない競技カードゲームの世界の魅力と厳しさに触れるのにもいい作品だなと思います。