押見修造先生の表現はどこまで進化するのか
押見修造先生の最新作。新たな代表作である「血の轍」も出身地の群馬県が舞台になっていて実体験がベースにあるような気がしましたが、今作「ひろみ」はよりそれを感じました。ペンタッチがいい意味で力が抜けているのも、頭の中の朧げな記憶をそのまま描き表したい意図があるように思えました。すでに「血の轍」の時点で、研ぎ澄まされた心理描写は誰も真似できない地点にありましたが、押見先生の表現がこれから更に進化することを予感させられますね。物語の展開としてもちろん後編が気になりますが、その前に子供である主人公に罪悪感を植え付けた女教師はマジ許すまじ…!
年間400万件の遺失物を扱う警視庁の遺失物係に勤める主人公の元に、ある日変わった落とし物が届けられる。偶然、持ち主につながる情報が見つかったものの、落とし主は期日までに現れなかった。「それ」は通常通り処分されそうになるが、主人公はそれを自宅に持ち帰えり、妻とともに落とし主を探すことにする。
1ページ目を見たとき、「それ」が何なのか見ただけでは何なのか検討もつかなかったので、頭の中にある知識と繋がったときは本当に驚いた(「それ」を落とし物する、という設定がすごいと思う)。
その落とし物から様々な人が互いを思い合う姿が見えてきて、愛情深さにジーンときた。