シェアハウスのようなはじまり
奇妙なシェアハウスの物語。叔父さんの彼女かと思いきや女装の占い師、ひげメガネの大学教授、なんの組み合わせなのか不審に思いながらも不思議な生活が始まる。真相をしって直達はどのように心情が変わっていくのか展開が気になります。
「あの人、本当は怒りたいんじゃないの?」高校への進学を機に、叔父の家に居候することになった直達。だが最寄りの駅に迎えにきたのは見知らぬ大人の女性、榊さんだった。案内された家の住人は、親に黙って脱サラしたマンガ家(叔父)、女装の占い師、ヒゲメガネの大学教授、どこか影のある25歳OLと、いずれも曲者揃い。そこに高校1年生の直達を加えて、男女5人での一つ屋根の下、奇妙な共同生活が始まった。共同生活を送るうち、日々を淡々と過ごす25歳OLの榊さんに淡い思いを抱き始める直達だったが、彼女と自分との間には思いも寄らぬ因縁が……。少年が家族の元を離れて初めて知る、家族の「罪」。自分もその被害者なのかもしれないが、加害者でもあるような気がする。割り切れないモヤモヤした思いを抱きながら、少年は少しずつ家族を知り、大人の階段を上っていく。前作から4年の沈黙を破った田島列島が、ユーモラスかつセンシティブな独特の筆致で描くのは、家族の元を離れて始まる、家族の物語。家族の元を離れて始まる、家族の物語。高1春、曲者揃いの住人たちと男女5人の共同生活を始めた直達。彼が淡い想いを寄せる25歳OLの榊さんとの間には、思いも寄らぬ因縁が……。「別冊マガジン」連載時より作家、著名人、漫画読みから絶賛の声が続々!宝島社「このマンガがすごい!2015」オトコ編第3位、マンガ大賞2015第2位など各漫画賞を総ナメにした名作『子供はわかってあげない』の田島列島、待望の最新作!
両親は駆け落ちしてもいいけれど、雨は降っていたほうがいい。
田島列島の約5年ぶりとなる新作は、いきなり非常に印象的な雨のコマから始まっている。しかも、その雨を介して、人と人とが出会う。降りつのる雨は街を浸して、水たまりには雨の波紋が幾重にもひろがり、濡れしきる道路は自動車のヘッドライトから伸びる二つの閃光のひかりを反射している。
およそ何年もマンガというものを読んできたけれど、ここまで明確な雨、降っていなければならない雨、人と人とが出会うべくして出会う雨というのを私はほかにあまり知らない。因縁のふたりはこの雨を介して邂逅することになる。始めはふたつだった傘が、今度はひとつになり、さぁ未来はどうなるのか。それは私たちには及び知らないことだけれども、邂逅のたびに降るこの雨が、どうやら海に向かって流れることだけは確からしい。