素敵な失恋
よくできた話だなーって思うけど、決して現実的ではないということ。でもそれがいい。失恋したヤケでパリの名店に飛び込んで、いきなり修業させてもらえて、しかもそこの御曹司を連れて帰国するなんてもうマンガすぎ。 世の中、こんなに賢くて自分と向き合える人ばかりじゃないよなぁ。たとえばサエコさん。あれが無自覚でずるい女の人だったらそこら中にいそうだけど、自分のことを理解したうえであれだけの努力をしてるんだったらかっこいいし、むしろ尊敬する。そこに気づいて彼女から学び成長した薫子さんも、なかなか真似できない。嫉妬から離れて冷静になるのは案外難しいよね。 そういう人たちを間近にリアルに感じられて、感情移入できちゃうのがうまいところなんだろうなぁと思う。 たくさん学ばせてもらった物語。私も言葉を尽くして人と関わっていきたいし、何より自分とちゃんと向き合っていきたいと思った。
一人の女性に執着するという行為はみっともないと言われがちだけど、それを糧にショコラティエとして成長できるのが、とてもいい。作中でも言われているように爽太君は「自分で作り上げたサエコさんが好き」、「失恋してるという状態を終わらせたくない」という、幸せにならない恋愛の典型みたな恋をしてるけど、そのことによって今の爽太君ができているところに、理屈ではない「本当に好きなんだなぁー」という愛を感じる。全9巻を通して「恋の終わり」がきれいに書かれている。