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少年Y

第三者による生命の選択

少年Y とうじたつや ハジメ
名無し

映画の『CUBE』を見たのはもう10年以上前だと気づいて、ウワーという気持ちになっております。当時衝撃を受けた『CUBE』は、ソリッド・シチュエーション・スリラーというジャンルに区分されるらしいのですが、なにがなんやらよくわかりません。デスゲームものといったほうがわかりやすいですね。考えてみれば、マンガにもこのデスゲームものは結構古くからあるような気がします。私が遡れるのは『銀と金』(福本伸行 1992年連載開始)くらいですが、デスゲームマンガの起源はどこにあるのでしょうか。  なんとなくですが、ここ数年、デスゲームが粗製乱造されているように感じています。私も、読み始めはテンション高いのですが、段々どうでもよくなっていってしまうのです。  それは、登場人物が、賭けられた命のことよりも、ゲームのことばかりに注目してしまっているからです。命を賭したゲームですから、登場人物も必死に考えてはいるのですが、何か真剣味が足りないような…。そんな気持ちを払拭したのが『少年Y』です。  転校生であるユズルが初めてクラスに入ると、そこにいるはずの全ての人が死んでいる…そんな衝撃的な展開から物語は始まります。そしてユズルの前に謎の少女ワビコが現れ、彼に「5分以内に生き返らせるべき価値のある人間をひとり選べ」と迫ります。出会ってさえいない人々の中から彼はどうやってその一人を選ぶのでしょうか。  『少年Y』ではこのような、第三者による生命の選択の場面が描かれます。「自分の中で無関係な人々の中から助かる一人をどうやって選べばいいのか?」「人から聞いた情報で人を断罪してしまっていいのか」「特別な一人のために他を犠牲にしてもよいのか?」これらがふざけたゲームの中で描かれているというのがとても効果的だと思います。例えば雪山の極限状況で2人から1人を選ぶ行為はそれがどのような選択でも、ある程度の“しょうがなさ”があるとおもいます。しかし『少年Y』は“しょうがなさ”を許しません。ユズルその選択に正解はもちろんないし、前後で矛盾もある。当然開き直りもします。しかし、ユズルがすがろうとする、考えは揺さぶられつづけるのです。そんなユズルが最後に得るものはなにか…ものすごい物語が生まれようとしているのかもしれません。

不揃いの連理

タイトルから見る"伴侶"の形

不揃いの連理
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

ここではタイトル『不揃いの連理』の語義と内容をリンクさせながら、(6巻までで)四組の女性ペアの関係を追う本作の魅力を書いてみたいと思います。 「連理木(れんりぼく・れんりぎ)」というのは、隣りあった木々の接触した枝や幹が一つにくっつき、木目まで混ざり合った状態のこと。そこから「連理」という言葉は二人の深い契りを表すのだそうです。 幸せな予感のある「連理」という言葉。では「不揃いの」という言葉はどうでしょう? 登場するペアは、いずれも全然タイプの違う二人。そしてどちらか片方、もしくは両方とも「ダメな人」だったりもします。 まっとうな会社員×元不良は見た目に反して、ダメなのは会社員の方。いかにも悪そうな人と優等生のJKコンビは、優等生が意外と暴力的etc……。でもそんな二人が何故か寄り添う。 ではそこにどんな心があるのか。 ある人に惹かれる理由を、言葉で言い表すのは難しい。でも、なぜある人の側にいるかは、理由を言える場合もある。 この作品でそれが分かりやすいのは、ダメな漫画家に接する生真面目な編集者。彼女は恋愛的惹かれの他に、ダメな漫画家を支える動機としての「ある気持ち」を持っている。そして同じようなものは、他の三組にも見て取れる。「ある気持ち」はおそらく頼りない人に対する普遍的な心情なので、納得する人は多いと思います。 「ある気持ち」で支え合い、接するうち、彼女たちはいつのまにか離れ難くなっていく。そこには理屈ではなく、もはや必然として一つになった連理木が生まれている。 伴侶って、こういうことだよな……大きな安心感とエモーションが同居する感じ。実はかなり暴力描写・しんどい内容も多いのにそれはとても不思議な感覚で、いつまでもこの物語を追う動機となってゆくのです。 ダメな人に対する、共通する「ある気持ち」......どんなものか、ぜひ本作から探してみてください。 さあ、まだ不穏な堅物教師×生徒の物語はどうなるかな? (6巻までの感想) (追記:実はマンバ読書会でリアルタイムで書いたものから、細かく改稿しています。どんなふうに変化しているか、ぜひ配信と比較してみてください! https://www.youtube.com/watch?v=FgBPuVvUHFI) #マンバ読書会 #クチコミを書く回

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