シグルイ

武士道は死に狂いなり

シグルイ 南條範夫 山口貴由
名無し

「武士道は死に狂いなり」は“武士道”の代名詞ともいえる「葉隠」に書かれた言葉です。『シグルイ』という作品のタイトルは、もちろん、ここからとられたものです。ストーリーは御前試合で盲目の剣士・伊良子清玄と隻腕の剣士・藤木源之助が対峙するところから始まり、そこから彼らの因縁に遡っていきます。もともろ『シグルイ』は、直木賞作家・南條範夫の『駿河城御前試合』という連作短編集の一編「無明逆流れ」をコミカライズした作品。残酷もののブームを作ったといわれる南條範夫の原作も凄惨ですが『シグルイ』も相当に凄惨です。そこら中で内臓の花が咲きます。「封建社会の完成形は 少数のサディストと多数のマゾヒストによって構成されるのだ」このセリフに表されている通り、登場人物達の多くは、自分の能力の如何に関わらず身分という枠の中でしか動くことができません。枠の中でしか動けない人々は、自身の行動を合理化していく過程でマゾヒストになっていくのです。その結果、主君の常軌を逸した命令でさえ、家臣は顔色一つ変えず、平静な心のままに実行していくのです。主人公の一人・藤木源之助もそのタイプで、自分の範疇から一歩もでることなく、許された唯一つの事――剣術を鬼気迫る勢いで極めていきます。逆に伊良子清玄は、類まれな才能を使って、どこまでも上に向かおうという野心がある、封建社会のはぐれ者です。この二人は互いに互いを殺そうと思っています。ただその殺意がどのようなものであるのか、言葉で言い表すことのできない複雑な感情を『シグルイ』では15巻にわたって描かれていきます。  『覚悟のススメ』や『悟空道』など、山口貴由さんのそれまでの作品はド迫力の絵とその上に大きな文字がバンバンと置かれるという描写が多かったと思います。『シグルイ』でも、初めはそのような目立たせる演出が多いのですが、段々とそのような描写はなくなり、セリフ自体も減っていきます。その結果、より研ぎ澄まされた言葉と静謐な描写は、人々の内面にこもった狂気をこれでもかと醸し出し、作品全体に不穏な空気を漂わせていきます。私が特に好きなシーンは、3巻の終わり「この日 生まれ出でた 怪物は二匹」「いや 三……」というところ。文字だけでみればなんてことはないセリフですが、ここにいたる構成が素晴らしすぎるのです。研ぎ澄まされたこの2つのセリフが、この後どのような意味を持つのか…。続きは是非よんでみてください。

空手小公子 小日向海流

空手小公子 小日向海流

空手小公子 小日向海流 馬場康誌
さいろく
さいろく

小日向海流 格闘技はお好きですか?なんか聞いたことあるキャッチですが…格闘技というと空手、柔道、ムエタイ、コマンド・サンボ、柔術、レスリング、テコンドー、マーシャル・アーツ、ボクシングと様々なジャンルや流派がありまよね。主役である小日向海流はもちろん空手ベースです。しかしこの作品には実に多種多様な、一人一人がしっかり印象付くような名脇役たちが出てきます。中でも実在の人物をモチーフとしたキャラたちが生き生きと描かれているところに着目して欲しいですね。私はプロレス好きでして、先日武道館にて故・三沢光晴氏の追悼興行に行って参りました。と、ここで三沢さんの話を書いてたのでは文字数が足りないので省きます…が、その三沢さんそっくりのキャラも出てきます。34巻なんかでは某インディ団体のエースにそっくりなプロレスラー・田伏隼との試合が描かれていますが、この田伏のキャラクターが実にイイ!他にも魔●斗氏やレ・バ●ナなど、素晴らしいキャラたちがオリジナルキャラたちとうま~く絡んでます。無論、面白い漫画を構成するに必要な要素は全て揃ってますので、安心してお読み頂ける作品ではないかと。あ、女の子もカワイイですよ!