エリスの聖杯

無実の罪で処刑された悪役令嬢、幽霊となり真相を探る

エリスの聖杯 桃山ひなせ 夕薙 常磐くじら
ゆゆゆ
ゆゆゆ

10年前に処刑された、希代の悪女と呼ばれたスカーレットの死の真相を探るミステリー。 小説家になろうのテンプレートでいくと、悪役令嬢が婚約者をとられ、さらに処刑ルートに回った10年後のお話となる。 10年が経ち、真相を探るのが難しくなった部分と、貴族社会の難しさやいやらしさで真相を探ろうにも一筋縄ではいかない部分と。 そこがストーリーのおもしろさを増している。 悪役令嬢の話ばかり書いたが、主人公はスカーレットでなく、誠実さだけが取り柄の家系に生まれた地味な少女コニー。一応貴族。 コニーが、ある夜会でトラブルに陥って助けを求めたとき、唯一、そして偶然にも応えてくれたのが10年前に処刑されたスカーレットの幽霊。 手助けしてもらったことをきっかけに、コニーは「無実の罪で処刑されたスカーレットの死の真相を探る手伝い」をすることになる。 スカーレットがすごく良い人に見えるけど、悪女伝説はだいたい真実。背景を知れば仕方がないかなとも思えるけど、だいたい真実。さすが悪役令嬢役。 そして、非常に強気なスカーレットは見ていて気持ちがいい。 処刑されなかったルートのスカーレットを見たくなるほど、魅力的なキャラクター。 言葉を重ねるより、漫画でスカーレットをみてもらったほうが、彼女から溢れ出る魅力は理解しやすい。 そして彼女がいたからこそ、「誠実」という家柄に甘んじず、強かに成長する主人公コニーも見ることができる。

外見至上主義

大人気Webtoonの横スクロール電書化 #1巻応援

外見至上主義 T.Jun
兎来栄寿
兎来栄寿

Webtoonを全く読んだことのない人に最初に薦めるとしたら、T.Junさんの作品は筆頭に上がるでしょう。『外見至上主義』、『喧嘩独学』、『人生崩壊』はどれも面白く抜群の人気を誇る作品です。 T.Junさんは鳥山明さんを一番尊敬しつつ、古谷実さんが一番好きな漫画家で、『闇金ウシジマくん』なども好きだと公言しています。となれば、どんな作品が生み出されるかは想像に難くないことでしょう。 少なくとも、『外見至上主義』はタイトルとあらすじで想像されるものよりは多様な魅力を湛えた作品です。私は連載で読んでいて、泣かされたシーンもありました。 本作の最大の美点は、何と言っても躍動するキャラクターです。先に進めば進むほどたくさんの魅力あふれるキャラクターが登場して、その魅力をさまざまなエピソードで見せてくれます。2巻表紙のバスコや3巻表紙の四宮などは皆好きになるキャラクターでしょう。「マンガはキャラクター」とよく言われますが、友情あり恋愛ありで無限にエピソードを作れるだろうなと感じる生きたキャラクターの群像劇になっています。ギャグも多めでありながらシリアス部も光る構成は、T.Junさんが好きだと語る『今日から俺は!!』からの影響も感じます。 そして、エンターテインメント性とテーマ性を兼ねた設定の妙。経済的な豊かさ、ルックスの良さ、腕力の強さ……。残酷なまでの格差に支配される社会で、それを逆転する手段を手にした主人公が普段とはまったく違う扱いを受けていくところは、無双的なカタルシスがあります。しかし、一方で諸々の格差自体は厳然と存在し続け、それによって不条理を強いられる人間もいます。それぞれの生き様、戦いや抗いも見所です。 また、これはWebtoonの王道設定なのですが、母親が辛い境遇に遭いそれに主人公が立ち向かっていくというシチュエーションが本作でも描かれます。家族という単位は万国共通。基本的にT.Junさんは韓国の読者向けに作品を作っていてグローバル化は考えていなかったそうですが、国境を越えて伝わる魅力と強度を持っています。 もしどうしても縦スクロールは受け付けないという方がいたら、この通常のマンガと同じ形式に編集されたこちらのバージョンで読んでみると良いかと思います。そしてこちらの電子書籍版が2/1に発売となりました。昨年末にはNetflixでアニメ化もされ盛り上がっていますので、この期に推薦します。