高校生家族

出オチに見せかけた、本格青春漫画

高校生家族 仲間りょう
名無し

頭を空っぽにして心の底から笑えるのに、熱くなり、切なくなり、続きが気になって仕方がない。で、「なんでこんな熱くなってんだ自分」と自分につっこむそんな作品。 40代の父母、8歳の妹が、同じ高校に進学すると入学式の日に知った家谷光太郎。家谷家は、一家全員が高校生の高校生家族。 出オチとしか思えない、読み切りにしか使えなさそうなこの設定でなぜ8巻以上も連載が続くのか。 それは仲間りょう先生が家谷家、一人ひとりの青春を本気で描いているからだ。 本気で30年ぶりの部活に打ち込む父、本気で野球部員の青春を支える母。将棋の才能ゆえに重い宿命を背負ってしまう妹。普通に部活をしたり片想いする主人公。 それぞれの視点での努力や成長や達成感を、描いた結果、バレー漫画、野球漫画、将棋漫画、そして青春恋愛漫画の大トロの部分だけを詰め込まれた唯一無二の作品になっている。 展開としての純粋な熱さと、「家族で高校生をしてる」というブレないネタ部分が相互作用して、めちゃくちゃ笑える。そして熱くなったりほっこりしたり、時には自分の青春を思い出して切なくもなれる。 仲間りょうの天才的なストーリーテリングを是非みんなに味わって欲しい。

あさひなぐ

「何者でもない」人たちのものがたり

あさひなぐ こざき亜衣
酒チャビン
酒チャビン

とあとがきで先生がおっしゃってるとおりのマンガです。 まず主人公がいなか臭いです。絶妙ないなか臭さで、いなか臭すぎるとマンガ臭くなってしまうのですが、本当にいそうで絶妙です。 ですがそれも素晴らしいです。 よく『ちはやふる』が少女マンガの皮をかむった少年マンガと言われていて、私すごく好きなのですが、それに近いスポ根的な部分もかなりあり、すごくこちらの作品も面白いです。つうか、よく高評価されてるのは見かけてはいましたが、こぎゃん面白いマンガとは思ってもみませんでした。ただ、若干こちらの方が少年度が低いというか、女子っぽい部分が多めでしょうか。そこも良かったと思います。 つうか最初の数巻は、わざとなのか描写不足なのか、別にそこまで皆頑張ってる感じがせず、したがって主人公のチームが負けようが特に何の感傷もなかったのですが(どちらかというと敵役の一堂選手の方が言い分もわかるし思い入れがありました。一堂という苗字も、世界的名作である奇面組へのリスペクトが感じられて好感が持てます)、途中からかなりよくなってくるので、5〜6巻くらいまでは諦めないで続けてほしいです! あと、こういう「冴えない主人公が強い人に憧れて頑張って強くなる」っていうのは定番ですが、本作品がレアなのは、憧れだった強い人から何かを受け継いで強くなった主人公が、憧れられる側だった人間に何かを返すところまで描かれている点です。 主に最終巻の話になってしまうのですが、大体前述の定番ものですと、最終巻は緊迫したストーリー運びながらも、どこか「どうせ優勝やろ」みたいなところもあるのですが、本作は最後の最後一捻りが聞いていてすごく心に残る作品となりました。 個人的には紺野選手とやす子が好きですね。すごくいいと思います。というか、このマンガの特徴として、マンガ自体とかストーリーとかが好きっていうよりも、若干脇役っぽい方も含めた登場人物のことがすごく好きになるっていう点があります。あまりそういった経験がなかったので、それも高評価をつけた理由です。 推しってこういうところからスタートするのですかね?? いずれにしても、自分ががんばっている人にはまず間違いなくオススメできる世界レベルの名作ですので、ぜひ読んでみてください!!全34巻と、完全に読者の心を入り口から折りにかかってきますが、がんばれる人なら大丈夫です!!!がんばってない人、頑張れる自信がない人はハンチョウを読みましょう!

ほっとけないよ九条くん

「起立! ヘイ!」 #1巻応援

ほっとけないよ九条くん みかづき唯
兎来栄寿
兎来栄寿

幾重もの締切に追い立てられながら、差し込みのなるはや案件にも応対し続け、役所に提出する書類作成や確定申告のために慣れない計算やソフトを使った処理を行い、そういうときに限って続発する属人的なタスク群等々で脳の普段使わない部分までフル活用して、おまけに10年で最も飛散している花粉によるデバフも盛り盛りで疲れ切った日にはこういう作品が沁みます。 学級委員で皆からの信頼が厚い優等生の九条くんが実は極度のポンコツであることに唯一気付いている女の子、みあが九条くんや世界にツッコみまくる学園コメディです。 とにかくボケがコンスタントに次々と繰り出され、ヒロインはそれに怒涛の勢いでツッコみまくっていきます。そのテンポの良さがまず気持ちいです。 「季節外れのカツラ…」 「ロケット花火を足につけて彼自身が花火として打ち上がったのか…!?」 などパワー溢れるセリフも満載。 「試食してまずかったらお前らをひき肉にする」 という調理実習担当や、 「骨が砕けても走り続けろ!!」 というサッカー部など、ナチュラルに物騒な学校なのも好きです。 そして、ヒロインもツッコみきれていないですが4話最後で胴上げをされている九条くんの高度が、『キャプテン翼』の強引なドリブルで吹っ飛ばされた人くらい高いところなども好きです。 イケメン転校生の南雲みつるくんの謎な登場シーンや、「おもしれー男」認定も見どころ。 デビュー単行本であり、巻末には読切の「花園さんは天使です!」も収録されています。ズボラすぎるヒロイン・花園さんのお話なのですが、あまりにズボラ過ぎてインスタに投稿するときにハッシュタグを色々付けるのが面倒くさくてあらゆる投稿に「#森羅万象」と付けているという件など本当に大好きです。 国民的人気を誇る『ちびまる子ちゃん』や、今なお連載中の『HIGH SCORE』、伝説的な存在となっている岡田あーみんさんの諸作品など、やはり雑誌『りぼん』にはギャグマンガのDNAが一定割合含まれていると思いますし、このようなパワフルに笑わせてくれる作品があり続けてほしいです。 『坂本ですが?』のようなシュールギャグが好きな方にお薦めです。