るろうに剣心―明治剣客浪漫譚― モノクロ版

青春時代の思い出

るろうに剣心―明治剣客浪漫譚― モノクロ版 和月伸宏
六文銭
六文銭

続編の北海道編もある程度巻数たまってきたので、いっちょ全編通しで読んでみようかと改めて読みなおしてみました。 連載開始がもう28年かと思うとビビるのですが、それでも色褪せない魅力と、絵も古く感じないのは圧巻の一言。 名作中の名作なので内容というよりは、好きな点をいくつか。 全28巻のうち大きくは以下の構成。 ーーー 東京編 (1~6巻) 京都編 (7巻~17巻) 人誅編 (18巻~28巻) ーーー こうして通して読むと、剣心は常に人斬りだった過去の何かと闘っていますね。 東京編では、エピソード的に過去の敵だった人間たちと、京都編は人斬りの後継者だった志々雄、人誅編は過去の因縁。 幕末から明治にかけての激動の時代は、その後自分自身何冊か時代小説を読んでから、改めてるろ剣を読むとまた違った印象をうけます。 過去に囚われた敵キャラたちに、小学生時代では なんでこんな昔のことにこだわっているんだろ? ぐらいだったのですが、今だったらよくわかる。そういう時代だったんだなと敵キャラにも未練を超えた執念を感じさせてくれる。(しかし、縁、おめーはダメだ。あと雷十太。) 大人になった今、もう一度読み直すと、そういう面で敵の魅力がグッとまして見えます。 土方歳三的な負けても生き様をみせてくれる感じ。 ここがスゴク素敵です。 次に、これは内容というよりは本編のおまけである制作秘話。 本作には話と話の幕間に、さらっと登場人物の制作秘話がのっていて(電子版では割愛されるかと思ったが載ってて良かった!)これがすっごい面白いんです! 「〇〇のキャラにインスパイアうけて」 (たいてい、ゲームのサムライスピリッツ) とか、言うわなければ気づかないことまで言ってくれるし、あまつさえ 「もろパクリです」 という暴露とともに、謝罪までする始末。 小さい頃は、あ、そんなことまで言うんだと妙な新規感を覚えていたのですが、この歳になると更に尊敬の念がでる。 仮に影響うけたとしても、自分のものとしちゃうズルさが大人にあると思うのですが、それをしない潔さ。 これも本作、というか著者さんの魅力ですね。 いずれにせよ、王道なバトル展開は、昔と変わらず面白く青春時代を思い出させてくれます。

アオアシ

アニメみてめっちゃハマった

アオアシ 小林有吾 上野直彦
六文銭
六文銭

アニメから興味をもって、改めて読んだらめっちゃ面白い。 スポーツ漫画で今一番好きな作品です。 個人的な話をして申し訳ないんですが、サッカーってあんま好きじゃなかったんですよね。 なんか「自己中の塊」みたいなスポーツという認識でいました。 だって、野球のように、攻めと守りのタイミングが明確にきまっているわけでもなく、下手したらボールもった瞬間、ずっとドリブルで突破したり、シュートしてもいいわけで。 それらを、誰の許しをもらうわけでもなく自己判断でできるわけですよ。 すっごい、自己中じゃありません? (別にサッカー部に彼女を奪われたとか、親を殺されたわけではありませんのであしからず。) ・・・と、思っていた時期がワタシにもありました。 上記の理由であまりサッカー漫画を読んでこなかったのですが、本作は自分のサッカー感を覆してくれるかの如く、目からウロコ的に面白かった。 『アオアシ』というタイトル、もちろんの主人公の名前でもあるとは思うのですが、それ以上に 「人間は考える葦である」 からきていると思えるくらい、登場人物全員が戦術、戦略を考えに考えぬいて、その時に最適解を導き出し動いている感じ。 上述した「自己中」とはかけ離れたスポーツ、それがサッカーなんだと自分は再認識しました。 相手の特徴からそれに合わせて動きを瞬時に変える、そしてそれを個人単位だけではなく組織(チーム)単位でやる。 誰かからの明確な指示があるわけでもなく、メンバーの動きを察知して、自分の動きも変えていく。 どこにいて何をすべきか、どう進めるべきかを常に考えている。 すごいスポーツだぜ、サッカー!!と本作を読んで、痛感しました。 自己中とか言っていた自分がはずかしい。 むしろ、どのスポーツよりも戦略的というか戦略が重要な戦争に近いと思う。 王道スポーツ漫画的な要素(努力・友情・勝利的なの)ももちろんあって、そのアツイ展開も魅力なのですが、個人的にはサッカーに対する考え方、見方を変えてくれた、そんな作品でした。 展開もはやいのでグイグイひきこまれて、そして特に直近の26~27巻が、もう・・めっちゃやばいっ!

紛争でしたら八田まで

『MASTERキートン』好きにはオススメしたい新連載!

紛争でしたら八田まで 田素弘
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

この新連載はどうなるんだろう、とモーニングで様子を見ていたけど、もう面白いことが確定したので安心して楽しめる!! 八田さんが世界各地で小さく起きている民族間、言語、思想のすれ違いで巻き起こる問題を知性とちょっとした格闘で解決!解決したらまた次の現場へ急行し、その地域の言語や慣習、政治など多角的にみっちり叩き込んで問題へ挑んでいく。 世界中を交渉して回る解決屋! その仕事の名は、「地政学リスクコンサルタント」! もう、こんなの間違いなく面白いに決まってる! 『MASTERキートン』好きな人にはぜひオススメしたい。 キートンは考古学者兼保険屋だけど、元軍人で戦えるし、それぞれの土地に詳しい必要があったり争いの仲裁を行ったりもしていた気がする。 すっごくざっくり言うと、立場や職業こそ違えど八田さんも似たようなものだ。 実は『勇午』をちゃんと読めてないのでいつか読みたい。ふわっとしか知らないけど同ジャンルなのかな。 まず、タイトルにもある「紛争」。 何を持って紛争と呼ぶのか調べてみた。 『一般的に「紛争」とは、「少なくとも2つ以上の主体が、希少な 資源(富や権力など)を同時に獲得しようとして相争う社会状況」と定義される』 この漫画で最初に出てくる事例がとても分かりやすい。 イングランドとアイルランドが揉めるという内容。 まさに、2つの主体が争う状況なわけでそこで八田さんは華麗に解決するかと思いきやわりかし腕力でねじ伏せている。それもたまには必要だよね。 八田さんのネーミングって「切った張ったの世界」って言葉から来てたりするのかなって少し思った。 https://comic-days.com/episode/10834108156713454523 そして、2話から描かれる呼び出された土地はミャンマー。 「歴史・宗教・政治・経済・軍事・エトセトラエトセトラ」を一週間でビッチリ詰め込んで挑むが・・。 「ミャンマー企業紛争編」から「タンザニア魔女狩り騒乱編」へ。面白い~! 世界を少し移動すれば何かしらで揉めている。 具体的にも抽象的にも何かしらの境界線があれば揉めるのが人間だ。 八田さんの旅が終わることはあるのか?お金次第? 人や場所、環境が変われば揉める内容も変わるので一生楽しめる漫画になるんじゃないかとワクワクしている。 単純に、国際情勢へ興味を持つきっかけにもなるし! ありがたや~! 作者の過去の読切がこちら。 主人公のキャラクターが少し似てるかも? 『定時退社でライフルシュート』 https://comic-days.com/episode/10834108156637582721

ローゼンメイデン 愛蔵版

まきますか まきませんか

ローゼンメイデン 愛蔵版 PEACH-PIT
Nano
Nano

引きこもりの中学生桜田ジュンは、怪しげな通販サイトで様々なものを買っては期限ぎりぎりにクーリングオフをするというちょっと暗い趣味を持ちつつ日々を過ごしていた。 ある日、大きな鞄が届く。 こんなもの頼んだ覚えはないと思いつつ開けてみると、そこには美しい少女人形が入っていた。 薇を回してみると、なんとその人形はまるで生きているかのように喋り動き出すのだった。 彼女は真紅と名乗り、そしてジュンに問う。 「死にたくなければ、誓いなさい。薔薇の指輪にかけて」 20周年&愛蔵版発売おめでとうございます!!! ずっと昔から大好きな作品です。人生のバイブルです。 まず画がずっと美しい。書き込みすごい。 小学生時代めちゃくちゃ模写したのを覚えています。大変だった。 そして個性豊かなキャラクター。 7体のドールズと人間たち。みんな魅力的。 特に蒼星石が本当にマジで大好きです。愛してます。 彼女の事を語り出すとキリがないので割愛させていただきます。 それとローゼンメイデンには数々の名言があると思います。 帯にも書かれている真紅の「闘うことって生きるってことでしょう?」はすごく印象深いし、とてもいい言葉だと思います。 アニメもすごくいいです。声優さんが合いすぎてる。 旧アニメも新アニメも何週もしました。 私の人生で最も影響を受けた作品といっても過言ではないくらい、今までずっと触れてきた作品です。 今回20周年ということで刊行された愛蔵版、これさえ読めば漫画ローゼンメイデンのこと丸わかりです。 今まで触れてこられなかった方も、この機会にぜひお手に取ってみてはいかがでしょうか!

Odds VS!

ギャンブル・スポーツに対する本音感覚が見事

Odds VS! 石渡治
名無し

スポーツといえば純粋なもの、というイメージは 深く広く世間に浸透していると思うのです。 代表的なのが高校野球とか甲子園とか。 主に学生スポーツの世界を中心に存在しています。 それらのイメージは素晴らしいでしょうし尊重したいとも思います。 けれど世の中のスポーツ関係は、現実にはどうしたって お金が絡むんですよね。 ようは金にならなきゃ成立しない。存続できない。 プロ野球、Jリーグ、そしていまではオリンピックに至るまで 金を生まないスポーツは結局は存在していかれないのが現実。 で、そう言う意味で極端に逆方向のリアルな方向に 徹してしまったのが公営賭博である競馬や競艇や、 競輪を扱った従来の漫画だったと思います。 最初から「国の運営費を稼ぐために」で創設され、 「公正明大に国民に娯楽を提供するため」の大義名分のもとに 一般大衆からアブク銭を巻き上げる世界です。 「Odds VS!」は公営賭博である競輪が所詮は賭博であると いうことを前提としながら、それ以上の面白さを描いています。 もちろん、過去から今まで競輪だけでなく競馬や競艇など 公営賭博を舞台にしながらそれらのスポーツの醍醐味を描いた 名作漫画は他にもあります。 なので個々に優劣を論ずるのは難しいのですが、 各種ある公営賭博を舞台にした漫画では、そのほとんどが 「儲ける」「儲けたい」という、その公営賭博に手を出す人の 最大にして当たり前の動機から目を反らした漫画が 多い気がします。 「儲けること、稼ぐことがその競技の目的とか  存在理由じゃあないんだよ」 と、なんかそういっているような漫画が多かった気がします。 (田中誠先生のギャンブルレーサーは除く(笑)) 「odds~」はそのあたりをかなりシビアに描いています。 いやいや、ギャンブルだから面白いんじゃん、 そこが面白いじゃん、みたいに。 選手たちは獲得賞金を目的に走るし、客は儲けるために 車券を買うし。そのへんにリアリティを感じます。 そこに加えて主人公・リンタと彼女との話とかで 適度にエロイ要素もブッこんで来るんですよね。 まあ他のエロ漫画に比べたらカワイイくらいの内容ですが。 しかしギャンブル好きの人間なんて大体はエロ好きですし、 掲載誌が漫画アクションということからも、 読者のニーズにちゃんと合わせてきてもいる感じです。 さらにそれでいて個人的な感想ですが凄いなと思ったのが、 石渡先生がかつて「スーパーライダー」「B・B」などの作品で 超絶的でハイパーな能力を持った主人公の話を描いていたのに 「odds~」では超絶的にぶっ飛んではいない リアルにありそうなレベルでいて強い主人公を描いている ことです。 この話に超絶でいかにも漫画的なハイパーな主人公を 描いたらリアリティが吹っ飛んでしまっていたでしょう。 そのあたりが凄く上手く描かれていて面白い漫画に なっていると思いました。