30以上の言語に翻訳された名著 ピューリッツァー賞を受賞した最初のグラフィック・ノヴェル 本書は、マンガ家アート・スピーゲルマンの代表作『マウス』と『マウス II』を一体化させ、翻訳に改訂を施した“完全版”。 ホロコーストのユダヤ人生存者ヴラデックの体験談を、息子のアート・スピーゲルマンがマンガに書き起こした傑作。独自の手法と視点で、これまでに語られてこなかった現実を伝え、世界に衝撃を与えた。本書の一番の特徴は、ユダヤ人をネズミ(=マウス)、ドイツ人をネコ、ポーランド人をブタ、アメリカ人をイヌとして描いていることだ。斬新かつ親しみやすいアプローチで、読者をホロコーストの真実へと引き込んでいく。 語り手の父ヴラデックはポーランド出身。大戦後は妻とともにニューヨークに移住した。第1部では、ヴラデックの青年時代から結婚、過酷な逃亡生活を経て、ナチの手に落ちアウシュヴィッツに収容されるまで。第2部では、アウシュヴィッツでの悲惨な体験、解放、そして故郷ソスノヴェツへの帰還までが綴られている。全編をとおして、著者が父の体験談を聞くニューヨークでの場面が織り込まれている。それにより、生存によってもたらされた罪悪感を背景に、いつまでも消えない恐怖と闘うヴラデックのその後と、両親がホロコーストで負ったトラウマが、息子にどのような影響を及ぼしたのかまでを描ききっている。また、本書の第1部である『マウス』発売後の予想外の反響に、アート・スピーゲルマンが心のバランスを崩した様子も第2部に盛り込まれている。 ひとり、またひとりと家族が減っていく悲しさ、徐々に普段の生活が崩壊していくやるせなさ、迫害、飢餓、虐待、死……言葉ではなく視覚に訴えるグラフィック・ノベルだからこその恐ろしさが伝わる。全人類必読の「ある父親の記憶」。
完成に22年をかけたスペクタクル! 20カ国語に翻訳されたグラフィックノベルのベストセラー。 特設ページ『ベルリン 1928-1933』アートメモドイツの大都市を、住民の目を通して精巧に描きだした歴史大作。煙草のけむりが充満するサロン、崩れかけた歩道、にぎやかな駅、華やかなカバレット……ワイマール時代のベルリンはヨーロッパの最先端であり、創造性、政治思想、性的自由が、忍び寄るファシズムの足音にもみ消される前に明るく輝いていた――激動の時代を見事に表現した傑作。 圧巻のストーリー、衝撃の結末! 1928年、マルテ・ミュラーは引き寄せられるように脈動する首都ベルリンへ向かった。芸術アカデミーに通いはじめた彼女は、それからの数年間、時代の豊かさと悲惨さを経験する。カバレットやサロンではアメリカのジャズが流れ、性の解放が進むいっぽうで、経済危機と過激な政治活動がすでに路上を埋めつくしていた。矛盾する世界が並存する混沌の街で、マルテはみずからのアイデンティティをたしかめようとする。しかし、ドイツという国がそうであったように、未来への選択を迫られていき……。 崩壊が進むワイマール共和国を舞台に、マルテとほかの人物たちの人生がからみあっていく。活字への信頼を失ったジャーナリスト、貧困と政治に引き裂かれた労働者家族、反ユダヤ主義の標的にされたユダヤ人の少年……それぞれの運命がベルリンの街角で交差する。
埼玉県飯能市にある通称バタトンネルは有名な心霊スポットである。全寮制の高校に通っていた秋山君は小さい頃から怪奇現象に興味津々、あちこちの心霊スポットを巡るのが趣味だった。いつもビデオで現場を映像に納め後から見直しては楽しんでいたのだが、その年も悪友と連れ立ってどこに行こうかと算段を練っていると同級のY君を同行させようということになった。臆病者の友人を連れていき現場で驚かしてやろうというつもりだったのだが、そのいたずら心が招いた悲劇の結末とは……。初出:オーディオブックCD 「実説 城谷怪談撰集 四」収録
霊感の強いAさんの体験談。店を開業するにあたり、お祝いをかねて仲間たちと行きつけの居酒屋で飲んだ帰り、終電間際の某駅でのできごと。酔っぱらった友人の一人が「電車がよく止まる駅は決まっている、そして今いる駅こそがそうなんだ」と話しはじめた。ホームの端でふざけあっている内、Aさんは何者かに強く引っ張られ膝をついて四つん這いに。その視線の先にいたものは……。初出:オーディオブックCD 「実説 城谷怪談撰集 八」収録
墓荒らし
御存命であれば90代のお婆さんがまだ幼少の頃の話。彼女が生まれ育った田舎は、当時まだ土葬であった。小学校にも上がらない小さなころ、親戚の叔母が若くして亡くなった。葬儀まで滞りなく終わったのだが。初七日を迎えるころ、眠りについたはずの彼女はいつの間にか墓地にいた。叔母の墓前まで歩いていくと、ざわざわとした悪寒を感じるとともに足元から白い手が……。初出:オーディオブックCD 「実説 城谷怪談撰集 八」収録
百物語
8月下旬の暑い盛り。仲間と共に順番に怪談話を語り合う百物語をやろうと算段がまとまる。場所は村木とその彼女が住んでいる築年数の古いアパートの一室。幾話もの怪談話が出尽くした夜更け、村木の彼女が眠気に耐え切れず別の部屋に移動すると、村木が住んでいるアパートでの不可解な体験を語り始めた……。初出:オーディオブックCD 「実説 城谷怪談撰集 七」収録
若い女性タレントと、霊感の強いその母親が共に体験したエピソード。 当時小学生だった体験者とその母は、夏の夜、福岡市内にある一軒の女性専用のビジネスホテルに宿泊することとなった。 夜も更けており、二人はチェックイン後、早速汗を流そうと地階にある大浴場に入ることにした。母子二人だけのはずの深夜の浴場の引き戸が開き、一人の人影がゆっくりと入ってきたのだが……。初出:オーディオブックCD 「実説 城谷怪談撰集 六」収録
ゆみちゃんが念願だった独り暮らしを始めたのは大学2年の春。大好きなぬいぐるみを部屋中に飾り付け、早速仲良しの女友達を招いて引っ越しパーティを開く事になった。ところが、ある時期からいくら誘っても誰も遊びに来てくれなくなってしまう。勇気を出して原因を尋ねると、困った顔の友人が重い口を開いた。「前に上からテレビの音が聞こえるって言ったでしょ…あれねテレビの音じゃないんだ」 一体友人は件の夜、何を聞いたのか……。初出:オーディオブックCD 「実説 城谷怪談撰集 七」収録
いつの時代も密かなブームを呼ぶ「降霊術」。城谷が小学生だった三十年ほど前、世間で「こっくりさん」が大流行したことがあった。ある日の夕刻、クラスの女子が待ち構えて、先生に内緒で禁止されているこっくりさんをやろうと言い出した。好奇心も手伝って、四人で始めた訳だが、あまりに顕著な反応を示す降霊の儀式に不信感を抱いた城谷はタブーを敢えておかしてみたのだが……。初出:オーディオブックCD 「実説 城谷怪談撰集 九」収録
とにかく安い部屋を。その条件だけで初めての一人暮らしに望んだ体験者が案内されたのは築数十年のアパート。最上階まで階段でしか上がれないボロボロの建物だったが、部屋を見るとリフォーム済みでユニットバスに水洗トイレもあり、不満なく暮らし始めた。しばらくたったある晩、廊下の奥からチンというエレベーターの到着音が聞こえ、小さな子供達の嬌声と駆け回る足音を聞いた。そこには、ないと思い込んでいたエレベーターが一基だけ存在していたのだった……。初出:オーディオブックCD 「実説 城谷怪談撰集 九」収録
訪ねてくる女
体験者がまだ新社会人だった二十数年前、就職先も決まり彼女も出来、都内某所の新しいマンションの角部屋に引っ越して間もない頃。出勤するのに部屋を出た朝にふと気づくと自分好みの綺麗な女性が廊下の奥に立っているのに気が付いた。それから毎朝のようにすれ違い、ある日とうとう男女の一線を越えてしまう。逢瀬を重ねて一カ月、本命の彼女からかかってきた一本の電話から事の異変を知らされることになるのだが……。初出:オーディオブックCD 「実説 城谷怪談撰集 八」収録
ジョーク
海上保安庁の船員である23歳の青年の体験。船員になって間もない夏、休暇のスケジュールを道東にいる親友に伝え、小樽まで迎えに来てもらう約束をした。親友は高校時代から仲の良いお人よし。 二人は約束の日、久しぶりの再会を喜び昼食を済ませると夕方に札幌を立ち、一路地元を目指したのだがその道中、怪談好きの青年は怖がりの友人にある悪戯を仕掛けようと思いつく。見えもしない幽霊が見える振りをして、翻弄してやろうと……。軽はずみなジョークのつもりだったのだが、思いもよらない結末が待ち受けていた。