御存命であれば90代のお婆さんがまだ幼少の頃の話。彼女が生まれ育った田舎は、当時まだ土葬であった。小学校にも上がらない小さなころ、親戚の叔母が若くして亡くなった。葬儀まで滞りなく終わったのだが。初七日を迎えるころ、眠りについたはずの彼女はいつの間にか墓地にいた。叔母の墓前まで歩いていくと、ざわざわとした悪寒を感じるとともに足元から白い手が……。初出:オーディオブックCD 「実説 城谷怪談撰集 八」収録
ボクサーの会葉は実力はありながら、不運が起こり連敗が続いていた。不運は自分がサゲマンだからと思いつめた彼女の保菜美は…。
「信をなくしたら博徒は廃れる…」時代の波に翻弄され歴史の泡と消えていった男と女を描く時代劇シリーズ第1弾!
「最後の博徒」として日本ヤクザ界に広くその名が知れ渡っていたのが波谷守之である。広島の「仁義なき戦い」とも多少の縁があったこの金筋博徒は、昭和52年の三国事件(「北陸の帝王」と呼ばれた川内弘・川内組組長射殺事件)で服役していた。しかしこれは冤罪であり、昭和59年晴れて出所。以降、彼を慕う三百人以上の若者が結集、波谷組が結成されていた。ところが平成2年、山口組弘道会系組織との間で、組員の移籍を巡って抗争に発展する。世に言う「山波抗争」である。抗争は苛烈を極め、人違い誤射殺事件、走行中の南海電車からの組事務所発砲事件、アジトでのロシアンルーレット誤発砲事件(一人死亡)など世の中を震撼させる事件が相次いだ。これは、命をかけた男たちの壮絶な戦いの軌跡である。