打ち切り漫画家(28歳)、パパになる。

どんな状態でも父親になるという覚悟

打ち切り漫画家(28歳)、パパになる。 富士屋カツヒト
六文銭
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『しょせん他人事ですから』が控えめにいっても最高だったので、同じ作家さん縛りをしたら、『19番目のカルテ 徳重晃の問診』もこの方だと知って驚く。 両方とも、現在進行系で、今私が好きな作品。 さぞ売れっ子作家さんなのだろうなぁと思ったら、なんとこんな作品があった。 え、打ち切りマンガ家だったんだと。 タイトルの「パパになる」という部分も、気になり読んでみましたが、同じ父親として、ものすごく勇気をもらえました。 特に上記作品にある、作者の現在の活躍をみると、男は家族を背負い父親になると強くなるのか、とうなります。 さて内容ですが、主人公(=著者)は漫画家として鳴かず飛ばずななか、子供ができてしまう。 生活のために、いったん漫画家を諦め大工になるも、全く使い物にならず罵られる日々。 漫画家としての道も、数少ないチャンスはあるが一向にモノにできない。 そんな生活を詳らかに描いた実録エッセイ作品。 上述しましたが、現在の漫画家としての活躍を知らなければ胸が苦しくなる展開ばかりなのですが、知っている私は、逆にここから復活できたことに本当に勇気づけられます。 人間、何があっても、何度でも這い上がれるんだと自信を与えてくれます。 実録エッセイなだけにリアリティはさることながら、 最終話のお子さんへの思いは純粋に涙しました。 そうそう、そうなんだよ。って私は、なりました。 子をもつ父親の人は共感できる&勇気づけられる内容だと思います。

しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~

SNSの闇を知れる

しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~ 左藤真通 富士屋カツヒト 清水陽平
六文銭
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SNS上の誹謗中傷によって自殺まで発展する事件をみると、他人事でありながら得も言われぬ不快感を覚えます。 実際、すごいですよね。 会ったこともない人間に対して「死ね」だの「消えろ」だの直接伝えられるとか。 恐ろしいです。 本作は、そんな被害者と法的措置をサポートする弁護士の話。 なんとも今っぽい題材で、内容自体、非常に興味深いです。 特に、誹謗中傷を書きこんだ人間の情報開示までの流れの、困難さは度肝抜きます。 また、名誉毀損にあたるあたらないなども、世間一般(というか私の尺度)よりも大分厳し目なのがびっくりしました。 そりゃ、ネット上の書き込みが何でも名誉毀損になったら裁判所はパンクするでしょうから、なんでもかんでもそうしないのはわかるのですが、どうも釈然としない。 加害者が 皆やっていることだから全く悪気がない むしろ被害者は言われて当たり前だろ みたいな態度をとる感じが、ホント胸糞悪い。 もっとも、ジャンルとしては「もやスカ」な題材なので、最終的にはきちんと成敗されるので、その点も魅力です。 読んでいてスッキリします。 ただの主婦だったり、会社員だったりが、ふとしたストレスのはけ口でしてしまう感じはSNS、現代社会の闇だなと痛感します。 余談ですが、開示請求されれば、いつどこで書き込んだかバレるようなので、会社PCでSNSとかはやめしょう。そう心に誓ったのでした。

去勢転生

展開の早さに予想つかない

去勢転生 宮月新 おちゃう
六文銭
六文銭

エロ×バイオレンス×異世界というわかりやすいいテーマを扱った本作。 最愛の人を強姦され殺された経験をもつ主人公が、その復讐から性犯罪者を15人も殺し死刑となる。 死刑執行の日、死んだと思ったら、自分がいた世界と同じようでどこか違う平行世界のような異世界に飛ばされてしまう。 そこでは、太陽フレアの影響で地球が崩壊し、なぜか男性が知性を失い凶悪化して、女性を襲うだけの「ケダモノ」となってしまっている状況。 この世界の女性たちは、その「ケダモノ」から逃げて暮らす生活を強いられている。 そんな中、主人公はクラスメイトたちと一緒に、こっちの世界では殺されずに生きている最愛の人を探す旅に出るという流れ。 とにかく展開がはやくて読んでいてスリリングかつ予測不能です。 そして、割りと重要そうなキャラクターたちも、次の瞬間、躊躇なく殺されたりするからビビります。 特に、こんな終末世界だからか、人間の悪い本性むき出しで、クラスメイト同士で裏切ったり裏切られたりがすごくて、その凄惨さが読んでいてエグいです。 こんなにも安心して読めない作品、久しぶりです。 最後、どういうオチをつけるのか、それもまた楽しみです。 転生だから、戻るのかな?

コンチェルト

女×女の校内活動百合短編集(百合の日2022記念④)

コンチェルト はっとりみつる
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

はっとりみつる先生といえば現在『かいじゅう色の島』で重めの百合を、『綺麗にしてもらえますか』では女性同士の様々な友情を描き、また「つぼみ vol.1」への寄稿や『ショコラ (2) 社会人百合アンソロジー』のカバーイラスト等、百合作品を量産しているわけではないのですが百合親和性の高い作家さんです。 そんな先生が『ケンコー全裸系水泳部 ウミショー』から『さんかれあ』の時期までに発表した百合短編集が、この『コンチェルト』です。 「部活動(生徒会含)」縛りのオムニバス。生徒同士から教師×生徒まで。エロ成分高めですが、星やポップな擬音、ミュシャ的枠表現で明るい画面。そして女子同士の恋を肯定する物語は負から正への振れ幅が大きくて、とても気持ちよくドキドキできます。 ●第1話は幼馴染のギター×ピアノのデュオ。演奏が評判の二人は卒業式での演奏を依頼されるが、恋の行き違いで……。 ●第2話は弓道部のエースに恋する後輩。強いはずの先輩の「体格コンプレックス」は後輩にとっては……? ●第3話は調理部女子ハーレムを作る女教師が、好みの生徒をお持ち帰り?……これが1番ヤバい内容。魔法のスパイス、危険過ぎる。 ●第4話は美術部のレアキャラ先輩と遭遇した後輩。才能に惚れた後輩に、先輩は一度限りのモデルを申し込むが……モデルって……。 ●第5話は生徒会の会長と書記の同棲ライフ。とんでもないところを偶然母親に見つかってからの、駆け落ち!