ここは天国じゃないけど

天国から遠い場所で咲く百合 #1巻応援

ここは天国じゃないけど majoccoid
兎来栄寿
兎来栄寿

『傷痕王子妃は幸せになりたい』、『イケメン女と箱入り娘』のmajoccoidさんが個人でC101にて発行したオリジナル創作百合の同人誌です。この度、その電子版が発売になりました。 『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』のしめさばさんと組んでの新連載『たゆたう煙は掴めない』も注目していますが、何しろmajoccoidさんは絵が良いしマンガも上手いです。 本作はとある理由で天国から追放された天使と、ガールズバー内でしていた恋愛に破れた女性が出逢うという内容です。 しっとりと切なく綴られる物語の中での絶妙な間の取り方であったり、敢えて表情を描かずに溜めて溜めて緩急をつけて繰り出す決めゴマであったり、短いページ数の中にもプロの技を感じさせられます。P31~32の一連のモノローグやセリフなどには百合作品としての良さが凝縮されていて好きです。 作中では天国が天国ではなかったという話が出てきてタイトルが回収されますが、世界中の神話を眺めているとそれぞれの神々は決して清廉潔白で公明正大な存在ではなく、むしろ人間に近い卑俗な欲望を持っていたり権力を振りかざして無茶苦茶なことをしていたりします。それ故に、神が統治する天国が誰にとっても完璧な世界ではない方が自然に思えます。 しかし、そうなると大多数からはみ出してしまう存在が、天国を天国として享受できないものが出てきます。そして、差別や諍いが起こってしまいます。他の多くのものと同じようにそこに属せないことは悲しみを生むことでしょう。けれど、天国とされている場所以外でも幸せになることはできます。 『新世紀エヴァンゲリオン』の碇ユイ曰く、 「生きていこうと思えばどこだって天国になるわよ。だって、生きているんですもの」 と。渦中にいるときにはそんな風に思う余裕がないことも多いですが、それでも広い世界に目をやれば他にも生きられる場所はあるものです。 願わくば、彼女たちが違う場所で安らかな呼吸を手に入れることができますように。

36才のオタクが急にハマれなくなった話

36歳という年齢がまた

36才のオタクが急にハマれなくなった話 一秒
ゆゆゆ
ゆゆゆ

36歳独身子なし実家住み、オタクを糧に生きている企業からしたら美味しい逸材である、子どもおばさんなお姉ちゃん。 年齢を経るにつれて、ついにこれまで読んでいた10-20代向け作品に共感できなくなり、アタフタする。 おそらく幼い頃に「結婚して子供を産んで育てて」というルートを歩むものだと埋め込まれている、子どもおばさんなお姉ちゃん。 長年オタク趣味に生きて満足しつつも、ふと、歩むであろうと想像した未来を思い出し、現状を振り返って、思うことがあったようで。 一方、結婚して子育て中の妹は、家事に育児に追われ、昔のように趣味にハマる時間も感覚も持つことができない。 だからこそ、実家にパラサイトしている姉が、老いた親へ家事を頼りきっている状況に不満を抱いている。 ちなみに、添付画像のページから放たれる駄目姉のオーラは、この漫画を最後まで読むことを諦める人を呼びそうだなと思った。 タイトルがリアルエッセイ風なので、漫画の冒頭でフィクションだと書かれても忘れて、作者がそうなのかと思ってしまう。 作者さん、すごすぎて損をしている気がしてならない。 個人的な感想を述べると、キャラクターに共感できなくてハマれないのはつまらないけど、昔の漫画を読み直して、大人視点でも理解できるようになったのは、二度美味しい感じがして嬉しい。