八百森のエリー

野菜の流通で繋ぐもの、繋げる意味

八百森のエリー 仔鹿リナ
名無し

グルメ漫画でもありビジネス漫画でもあり 人間ドラマでもあるという感じがする良い漫画。 いきなり第一話から第三話くらいにかけて 青果市場・仲卸という野菜流通の現場が とてもリアルに判り易く描かれている。 漫画らしく都合よすぎではあるがテンポが良いし、 深刻な場面も適度に愛嬌のある展開で面白く読める。 その中に野菜への愛着と人間関係の愛情みたいなものも ちゃんと、たっぷりと入っているが、 けしてくどくなく、ベタベタしたところがない。 まさに新鮮野菜の風味が生きている煮物、 という感じの美味しい面白さ(笑) グルメ漫画は、美味いが絶対、になりやすい。 ビジネス漫画は、リアルに描きすぎると怜悧な感じになりやすい。 人情漫画は強く描きすぎると、重くてクドクなりがち。 その点「八百森のエリー」は、どれかの要素が突出しすぎたり することがなくて話が上手く整っている感じがする。 バランスがとれているというか。くどくなくて後味がいい。 読後感は健康的に良いと言ってもいいだろう。 野菜をメインに扱った漫画だけに。 リアリティがない?部分をあえてあげるとすれば、 やたらと長身イケメン、ややジャニーズ系、少々BLっぽい、 そんなキャラが市場男子として多数登場することか(笑)

お母さん二人いてもいいかな!?

壮絶だけどその辺で普通に生活している人の話

お母さん二人いてもいいかな!? 中村珍 中村キヨ
nyae
nyae

読み始め、作者の中村キヨさんが前の奥さんを病気で亡くして別の女性と再婚するところから始まるんですが、別れの部分があまりに衝撃的だったので「その話を描いたエッセイがあるのでは」と思って探したんですけど、多分ないみたいです。そして、作中でも亡くなった方とどのような暮らしをしていたかはほぼ語られません。 メインは酔っ払って道端で座り込んでいたところを中村さんが介抱してあげたことがきっかけで知り合い、結婚(もちろん事実婚)したサツキさんとの生活が描かれますが、その中身は私が想像できるレズビアン同士のやり取りからは想像を遥かに超えるものがありました。 ただそれは、この人達がこうなだけであって、レズビアンとはLGBTとはこういうものという話ではなく、言うなればその辺で生きてるとあるカップルの日常を描いたに過ぎない。 サツキさんには息子が3人いるのですが、当然中村さんとは血の繋がりはありませんので、父と母が1人ずつではない家庭を彼らなりに受け入れなければならない。そこで親が先駆けて周りにカミングアウトするのもありではという中村さんに対し、サツキさんが「子は親を選べない以上、選べることは全て選ばせたい」「遠くの1億人が理解してくれたって、身近な10人が無理解だったら地獄でしょ」と伝えます。ほんとその通りですね。 「愛とはなんなのか」というのも常に問い続けているのも印象に残ります。もちろん答えは見つかりませんが、読者として感じたのは、愛する人が幸せであるように願うこと、かもなと思いました。

レピッシュ!

人生しょせんバクチだよ!!

レピッシュ! ひうらさとる
野愛
野愛

怖いものなんてない、失うものなんてないというマインドはやっぱり守るものや抱えるものが多くなればなるほど失われていくものだと思います。 ということは最強に守られていて愛されていて全てを手にしているけどそんなこと知ったこっちゃない子どもたちって死ぬほど強いのではないでしょうか。強盗に入られたら超こわくて通報すらまともにできない気がするけど子どもだったらみんな全盛期のマコーレカルキンくらいのことできちゃうもんな(偏見) そんな無邪気で聡明で金持ちで怖いものなしの子どもたちが大活躍するのがレピッシュ! 小学生なのに人生はバクチだとか言っちゃうの最強すぎる。飛行機とか電車自由に動かせるくらいの金持ちなんだからそもそも人生勝ち戦じゃねえかと思いつつも、無鉄砲で素直なチャコたちが眩しくて仕方ないのです。 怖いものなんてない、失うものなんてないように見えるけれど、原動力は大切なひとを守るため。無鉄砲なだけじゃなくて優しくて強いのが素晴らしいところです。 主人公が小学生だからといって侮るなかれ、バトルありスリルあり胸キュンありの最強エンターテイメント漫画です!

わたしはだんだんわたしになる 自己肯定感が欲しい!

生きづらい人が生きづらい理由

わたしはだんだんわたしになる 自己肯定感が欲しい! akko
hysysk
hysysk

私は多少趣味やキャリアパスが人と違っても、それを誇りに思うタイプなので全く生きづらさを感じてこなかった。むしろ逆境が活力になっていたりする。 そういう人間からするとこの作者みたいな人はめちゃくちゃイライラして、「そんなんだから駄目なんだよ」「虐められる側にも原因がある」みたいなことを言いたくなってしまう。母親がきつく当たっていたのも分かる気がする。 しかし。こういう人達がどのように感じ、何に苦しんでいるのか、考えたことはあっただろうか?いや、考えることはできないのだ。人の気持ちを想像するというのは、その人の思考方法をインストールしないことには無理と言ってもいい。そして初めて知る。 こんなに細かいことを考えていたのか、と。 とにかく考え過ぎだし、正解があると思い過ぎだし、原因と結果を安易に結びつけがち。自分の中だけで思考が先走り過ぎてずれまくっている(話の中で彼女が納得している答えも私から見ると違っているように思える)。そりゃ生きづらいわ。。 世の中には色んな人がいて、色んな考え方がある。私とは全く違うタイプだしほとんど共感もできないけど、だからこそ非常に参考になったし尊重したいと思った。

MAKOTO 完全版

すべてのひとに救いがありますように

MAKOTO 完全版 郷田マモラ
野愛
野愛

死んでしまったひとに、何故死んでしまったのかを問うてもわからない。残されたひとは残されたものから何かを拾い集め、つなぎ合わせて、生きていくしかない。 真言のように幽霊が見えて解剖ができて警察官の友人がいれば別かもしれないけれど、それでも真実にたどり着くのは難しいことだ。 無念を晴らす、真実を突き止めるという行為は死んでしまったひとのためでもあるが、残されたひとが前を向いて生きるための行為でもあるのだと思う。 真言の能力によって、死んでいったひとたちだけではなく残されたひとたちも救われているのだ。 世の中の多くのひとは、幽霊も見えないし医者でも警察でもない。真言のように真実に向かって突き進めるひとは一握りだ。 それでも、残されたひとは生きていかなければいけない。死んでいったひとのことを忘れずに、できうる限りのことをして、前を向いて生きていかなければならない。 生きているひとにも、死んでいったひとにも救いがある世界でありますように。 最後のお話で真言自身にも救いがあったのがよかったなあ。 決して押し付けがましくなく、前を向いて生きるひとを優しく支えてくれるような作品でした。

ヤング・アライブ・イン・ラブ 完全版

恋とマシンガン

ヤング・アライブ・イン・ラブ 完全版 西島大介
野愛
野愛

この世界を憂えているふりして、お前らとは違う世界の真実に気づいているんだなんて本気で思っていて、そんな自分が痛いことも知ってるけどかっこいいとも思ってる、みたいな人に刺さるやつ!そんなやついるかよ、って自分だよ。大人になっても厨二病のままだしそんな自分可愛いって思ってる。 3.11をモチーフにした作品がぶっ刺さるような時代がまたやって来た。3.11の傷も癒えてないうちに。 非日常を受け入れて見ないふりするのが得意な私達だから、放射能だろうとウイルスだろうと幽霊だろうと当たり前のように日常に馴染ませて一丁前にこわいねえなんて言って生きている。 その中で真実が見えているマコトとマナが出会うのは運命だし必然で。最高にキュートで痛くて愛おしい!!!!霊霊霊霊!!!! なすすべもなく絶望するだけなら主人公じゃなくてもできるけど、ちゃんと開眼して世界を救おうとしてくれるのが西島作品の少年少女たち。世界の果てで絶望しながら愛を育むボーイミーツガールだったら面白くない。 かっこよく立ち向かって、虚構とリアルが混ざり合ったところで、虚構すぎて虚構大爆発なラストシーン。 最初から本当の話なんてしてないってわかってるのに、憤りを覚えるほど気持ちよく終わってしまう。このハッピーな突き放し方がわたしは好きです。 こんなむちゃくちゃな世界で生きてるんだ、好き勝手想像して創造して、思い通り描き変えてしまえばいい。 デビュー作の凹村戦争から揺らがない、やけっぱちな世界のぶち壊し方が最高です。現代を生きる上で読んどいたほうがいい!!闘える!! マナはゲロを吐くシーンが多くて最高にかわいい。かわいい。

イレブン

一に練習、二に練習、とにかく頑張る

イレブン 七三太朗 高橋広
名無し

ちばてつや氏やちばあきお氏のご兄弟である七三太郎氏原作のサッカー漫画ですが、内容は、あの「キャプテン」のサッカー版と考えて貰って差し支えないです。 キャプテンで主人公は、よその学校でも球拾いではあるが野球部だったと言う実績がありますが、こちらのイレブンでは、父親の育成方針で中学までは陸上部に在籍していたため、本当にゼロからのスタートとなります。 主人公の青葉茂はルールも知らず、ボールの蹴り方もきちんと知りませんし、ドリブルもこなれていません。 それを練習に次ぐ練習で克服していき、弱小だった高校サッカー部を成長させ、世界から侮られていたジュニアユースでブラジルの度肝を抜き、五輪の選抜ではセリエAからの引き抜きを受け、Jリーグでは怪我を克服してチームに勢いを持たせる。 最後には父親の夢だった五輪の日本代表にまで上り詰める。 素人がそんな所まで行けるものかと思うかもしれませんが、コミックス全43巻の内容は全て主人公の練習と試合中の試行錯誤なので、ステップアップしていくのに不自然さを感じません。 この漫画のラストシーンの、名も知れぬサッカー部員のセリフがこの作品の事を端的に表現しています。 「俺も青葉茂みたいになれっかな」 「頑張ればきっとな!」

魔法なんて信じない。でも君は信じる。完全版

魔法なんて信じない。でも西島先生は信じる。 #1巻応援

魔法なんて信じない。でも君は信じる。完全版 西島大介 大谷能生
野愛
野愛

世界の終わりの魔法使いⅢの原稿が魔法のように消えてしまったという事件のドキュメンタリー漫画。 トラブルをおもしろおかしく描いたものでもなければ、原稿を紛失してしまった出版社を告発するようなものでもない。 原稿紛失事故をきっかけに、漫画ってなんだろうという根源的な問い、消えたことによって新たに生み出されることとなったせかまほⅢ、ゆるやかな人と人との繋がり、それらすべてがどことなく世界の終わりの魔法使いとリンクしている。 失われたせかまほⅢは影の世界みたいにどこかで完璧に世界を繰り返しているのだろうか。それも読んでみたかったように思うけど、今読むことのできるせかまほⅢが好きだからこれでよかったのかな。 具体的な保証金額など生々しいお話も出てくるし、実際にはここに描かれた以上の悲しみや怒りがあったはず。それでもこの困難を乗り越えて世界の終わりの魔法使いⅢが出版されたことに感謝しかない。 魔法なんて信じないけど、サン・フェアリー・アンの愛の魔法なのかもしれない。プー。 これ読んだらとりあえず世界の終わりの魔法使い読みましょう。読む前でもよいです!!