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死んでしまったひとに、何故死んでしまったのかを問うてもわからない。残されたひとは残されたものから何かを拾い集め、つなぎ合わせて、生きていくしかない。
真言のように幽霊が見えて解剖ができて警察官の友人がいれば別かもしれないけれど、それでも真実にたどり着くのは難しいことだ。
無念を晴らす、真実を突き止めるという行為は死んでしまったひとのためでもあるが、残されたひとが前を向いて生きるための行為でもあるのだと思う。
真言の能力によって、死んでいったひとたちだけではなく残されたひとたちも救われているのだ。
世の中の多くのひとは、幽霊も見えないし医者でも警察でもない。真言のように真実に向かって突き進めるひとは一握りだ。
それでも、残されたひとは生きていかなければいけない。死んでいったひとのことを忘れずに、できうる限りのことをして、前を向いて生きていかなければならない。
生きているひとにも、死んでいったひとにも救いがある世界でありますように。
最後のお話で真言自身にも救いがあったのがよかったなあ。
決して押し付けがましくなく、前を向いて生きるひとを優しく支えてくれるような作品でした。