ピッコリーナ

男とバニーガールと笑顔とやきとりと #1巻応援

ピッコリーナ 大槻一翔
兎来栄寿
兎来栄寿

『欅姉妹の四季』の大槻一翔さんが、舞台を『青騎士』に移して新たに素敵な世界を紡いでくださっています。 バニーガール×やきとり。 何を言ってるのかわからないと思いますが、私もわかりません。考えずに感じてください。美人がやきとりを美味しそうに食べて幸せそうになっている、それだけで救われる命もあります。 タイトルの「ピッコリーナ(piccolina)」とは、イタリア語で「小さい」「小さくてかわいいもの」の意。ヒロインのバニーガール峰香(ほうか)さんは、どちらかというと170cm近くあって高身長なのに、タイトルはどういう意味なのだろうと思うかもしれません。その意味も、読んでいくと解ってきます。 本作の1番の見どころは主人公の朗(あきら)と蜂香さんとの関係性の進展に他なりません。美人すぎる蜂香さんとの距離感に戸惑いながらも、少しずつ関係を深めて行こうとする朗、それに対する蜂香さんのひとつひとつの反応が実に良い味わいです。ささやかなやり取りの中に、深い良さみがあります。 それに加えて、大槻一翔さんの画力があるからこそ描ける華やかなバニークラブの様子なども良いです。セクシーではありながら、爽やかで嫌らしさがないのが流石です。あまりこういったキャバクラ含むクラブを楽しむ文化圏にはいなかったのですが、その楽しさを教えられた気がします。 読むと炭火で焼いた美味しいやきとりを食べたくて仕方なくなりますので、読むタイミングにはゆめゆめお気をつけください。

201号室のおとなりさん

大学生ヒロインの純情な感情 #1巻応援

201号室のおとなりさん 日向きょう
兎来栄寿
兎来栄寿

『ブラザー・トラップ』の日向きょうさんが送る新作です。巻末には、『ブラザー・トラップ』の撮影現場へ訪れた際のレポートマンガも描かれており、非常に幸せな実写化であったことが伝わってきます。 『201号室のおとなりさん』もまた、良い感じに心を擽られる大学生×社会人のラブコメです。 ヒロインの美和、通称みーすけは ・弟妹が多く裕福ではない家庭を助けるために、大学ではしっかり勉強してちゃんと稼げる仕事に就きたい ・同世代が興味津々のお洒落や恋愛などに全然興味がない ・マイノリティな趣味のマスコットキャラクターが好きで常々珍妙な柄の服を着たりスタンプを送ったりする など、朴訥とした新大学1年生。大学時代、身近にもこういう子いたなぁと懐かしむと共に、性別が違うので事情も違うとはいえ後ろの2つは個人的にも共感を覚えるところです。 しかし、そんな彼女をかき乱す存在が幼馴染でもあり、隣人であり大家代理でもある社外人の千暁(ちあき)。生活力に乏しく、女性関係へのだらしなさを感じさせる再会時の印象が、色々なイベントを経て徐々に覆っていきます。 容姿端麗で外面も良くモテモテである千暁は逆にグイグイ来ない美和のような子の方が落ち着ける(ある意味で「おもしれー女」)というところがポイントとなっており、美和もそのことを徐々に理解しながらも自分としても初めて抱く気持ちの芽生えに翻弄されていく様子が見どころです。大学生になってからの初恋というのも乙なものですね。 美和と奇跡的に趣味が似通って友達になる同期の子や、同じアパートの住人たち、また1巻最後で登場する新キャラの子など脇を固めるサブキャラたちも魅力的で良い群像劇となっていきそうです。 ズボラな面もありつつ頼れてカッコいい男性像を見せながらも、その裏には陰をも感じさせる千暁との関係は周りを巻き込みつつどう展開していくのか。そして、気になるきぐるみあにまる同好会の活動内容とは。 本作も順調に進めばメディア化して人気を博して行きそうな盤石感を覚えます。ピュアで真面目なヒロインのラブコメを読みたい方にお薦めです。

メゾン・ド・レインボー

優れた人間観察の賜物 #1巻応援

メゾン・ド・レインボー 榎屋克優 レインボー
兎来栄寿
兎来栄寿

芸人のレインボーさんのコントをコミカライズした異色作です。 今やレインボーさんはYouTubeのチャンネル登録者数も90万人に迫り『おはスタ』などにも出演する大人気芸人です。以前、まだ世間ではそこまで有名ではなかった頃に私がやっていたお店のイベントに何度か足を運んでくださっていました。とても人当たりが良い方々で、オフでのフリートークも面白く、またマンガ愛にも溢れていて、もちろんお二方の努力故なのですが「売れるべくして売れた」という印象が非常に強いです。 『日々ロック』や『ミツコの詩』などがとても好きな身からすると、そんなレインボーさんたちのネタが榎屋克優さんによってコミカライズされるというのは何とも不思議で嬉しいです。 元々、池田さんが「人間図鑑」というものをInstagramでやっていたこともあり、現実に存在しそうなキャラクターを生み出すことにかけては卓抜しているというのは大きな強みです。本作でも、「いるいる!」と思えるような人物たちが躍動しています。 「人間が興味あるのは、結局人間」 と言われることもありますが、そういう意味では人間への観察眼を磨いて練られた芸人さんのネタはストーリーやキャラクターの造型が非常に優れた作品が多いので、こういったコミカライズをしても(恐らく何の予備知識もなしに初めて読む人であっても)十分に楽しめるであろうものが出来上がるんだなぁと感心します。 余談ですが、本作にもポケモンをやっているシーンが登場しますが池田さんがポケカを好きすぎて生まれたポケカをやってる社会人シリーズのネタが個人的に好きです。実在の商品が絡むので許可も必要そうですが、あのネタもマンガでも見てみたい気持ちがあります。