僕の小規模な生活

僕の小規模な失敗も!

僕の小規模な生活 福満しげゆき
影絵が趣味
影絵が趣味

最近、"妻"がツイッターにハマっているらしく、福満しげゆきのアカウントから過去作の切り抜きがたびたびアップされているのを目にする。一世を風靡している100日のワニほどではないにしても数百から数千、ときには万単位のいいねがついている。アックスは青林工藝舎時代からの読者としては真に感慨深いものがある。 (ちなみにマンバさん、福満しげゆきの青林工藝舎から出ているタイトルがすべて載っていないので、何卒載せてあげて下さい) とくに『僕の小規模な生活』のもとになった、というより、小規模な生活がそれの続編にあたる『僕の小規模な失敗』(青林工藝舎)はいったい何度読み返したことだろう。そればかりではなく、家に何冊も備蓄しておいて、遊びにきた友人知人に「これめっちゃオモシロイから読んでくれ!」と半ば強制的に持ち帰らせていた。反応はまずまずだったと思う。 小規模な失敗はとにかく気合いが凄かった。最近の漫画はコマを縦に三段で割るくらいが一般的だが、手塚時代でもせいぜい四段で割るくらいだったが、福満しげゆきは五段とか六段とかまでいっちゃう。コマが豆粒みたいになって読みにくいんだけど、たぶん本人にもその自覚があって、始めのほうは大きくコマを取っているんだけど、だんだん描きたいことと残りのページとの釣り合いがとれなくなってコマが小さくなっていく。それでも加速度的に熱が籠もっているからなのか、小さなコマを追っていってしまう。 気合いの入った熱い漫画家であるいっぽう、大変なひねくれ者でもあるようなので、自身の漫画を自分のツイッターで宣伝するなんてできなさそうなところを妻がナイスアシストでツイートしている。いやあ、なんだか羨ましいですなあ。

鉄腕ガール

女子プロ野球に、太陽は昇るか。

鉄腕ガール 高橋ツトム
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

【世界と戦うアスリート漫画①〜スポーツコラム風に】 1934(昭和9)年、あのベーブ・ルースを擁した米国選抜チームを相手に一人、気を吐いた日本人投手がいた。その年、彼を中心に日本初の男子プロ野球チームが誕生する。 彼の名は、沢村栄治。背番号14。 学生野球が盛んな日本にようやく生まれたプロ野球の中心で、彼は自ら輝き、日本中を熱中させた「太陽」だった……というのは史実。 ★★★★★★ そしてここからは架空の話。 例えば太平洋戦争敗戦後に日本で女子プロ野球リーグを構想するとして、もし沢村栄治のような「太陽」が女子にいたら、どうなっただろう? カフェの女給を寄せ集めたチームの中に、ずば抜けた身体能力と負けん気を持った女がいた。彼女は化粧品会社の女性社長のチームで、日本を代表する豪腕……まるで沢村のような……に成長する。 彼女の名は、加納トメ。背番号14。 その豪速球とマウンド度胸は、周囲に夢を見させる。しかし彼女を待っていたのは、プロリーグではなかった。 女性社長と彼女の弟はプロリーグ構想を骨抜きにし、米国資本との賭け試合を仕掛ける。米国との「経済戦争」は日本中を熱狂させるが、その先に待っていたのは……。 プロリーグとは縁遠い場所で、加納トメは全身全霊で戦い続ける。勝負の場を作るために自ら前線に立ち、女が野球をやる権利を賭けた大博打を打つ。そして圧倒的な才能にも関わらず、常に格上に挑み、負けて当然のギリギリの闘いをする。 その姿は時に清々しく、時にひどく見苦しい。しかし彼女は周囲を惹きつけ、「太陽」として日本を明るく照らし、現代の我々の網膜にも忘れ難い影を焼き付ける。 ★★★★★ ……という強烈な印象を残す本作。その現実離れした物語は実際のスポーツ興行には参考にし難いと思われるかもしれない。しかし私達は本来、現実離れした圧倒的な才能・物凄いプレイを観たくて、競技場に足を運び、ニュースに一喜一憂するのではなかったか。 例えば『1518! イチゴーイチハチ!』の環会長や、『球詠』の選手達が将来飛び込む女子プロ野球の歴史に、もし加納トメがいたら……と想像するのはとても楽しい。それは彼女達が加納トメというとんでもない才能を目標にし、いつか凌駕し、歴史を上書きする瞬間を見せてくれることを期待するからだ。