影絵が趣味
1年以上前
この漫画のなにが素晴らしいって、作者のいしかわじゅんが実際に骨をうずめている吉祥寺という街が舞台であり、その街の模様が住んでいる者の目で丹念に描かれているからだと思う。
我々が人間が、やれ小説だ、やれ映画だ、やれ漫画だ、といくら物語をつくってみたところで、それは現実という名の途方もなく巨大な氷山の一角にすぎない。しかし、この吉祥寺キャットウォークという漫画を読んでいると、ふいに、なにかボロッと、物語の下にひっそりと佇む巨大な山脈の一端を覗いてしまったような気持ちになるのだ。それは物語と地続きでありながら話には描かれない吉祥寺という街の風景のなかで日々起こっている無数のストーリー。それは別に人間でなくて猫でもいいし、吉祥寺に生えている街路樹の四季の移り変わりでもいいのだ。