アカデミックSOS

最高学府の闇に抗うサスペンス #1巻応援

アカデミックSOS まつかわ
兎来栄寿
兎来栄寿
大学を舞台にした作品は数多くありますが、大学というアカデミックな場で現実的に起こっているリアルな問題をメインテーマとして扱っている作品は珍しいです。 本作では、大学の金銭的な問題や歪なパワーバランスによって生まれる闇の部分が描かれます。最高学府といえども、経営や研究を維持していくためには先立つものが絶対に必要です。そして、大学における研究はときに莫大な富を生む原動力となります。そこで動く金額の大きさやそれに付随する諸々は、望まずとも腐敗を招く要因となり得ます。また、閉鎖的な世界では一部の者の権利が不当に強くなることがままあります。そして、普通では有り得ないことも起こってしまい、あまつさえそれが闇の中に葬られてしまうことも。 そうした闇に対して、主人公が立ち向かうという構図はシンプルで共感しやすくなっています。大学というピンポイントな場所での出来事を扱ってはいますが、似たようなことは世界でたくさん起こっており、またこの作品で苦しんでいる人と同じ苦しみを持つ人もたくさんいることでしょう。「アカデミックハラスメント」というと難しそうと感じるかもしれませんが、多くの人にとっては想像以上に解りやすいエンターテインメントとして楽しめるはずです。 この作品の最大の美点は何よりも非常にテンポが良いことです。第1話からその良さが存分に出ているので、まず1話だけでも読んでみてください。1話で大きな目標が掲げられるのですが、そこで強く主人公に感情移入させられることで話に乗っていけます。サクサクと話が進んでいくのですが、しっかりと1話ごとに見せ場も強い引きも作られていて素直に「面白い!」と思える作品です。 実写ドラマ化なども非常にやりやすく映えるでしょう。作画こそまだ初々しさが出ていますが、キャラクターの魅力やマンガ力などもっと大事な部分の力量を感じる作者さんですので、今後も楽しみです。
明日、私は誰かのカノジョ

定期的に心を抉られます

明日、私は誰かのカノジョ をのひなお
あいざっく
あいざっく
現代のニッチな層が抱える闇や悩みにスポットライトを当てる大きなきっかけになったと思います。 私も登場人物に共通する部分が多々あるので、 (整形や歌舞伎町など諸々。。。) 共感というよりは、定期的に心が抉られました。 例えば、萌ちゃんが楓にされていた言動は明らかに営業なので (分かる人には分かる!) 友達と心を痛めながら鑑賞しておりました笑 読む人によって色んな感情で読める、面白い作品だと思います。 「夜王」など歌舞伎町などをテーマにした作品は今までにもよくありましたが、 ゆあてゃなどのキャラクターが可愛くて印象に残りやすい、 パパ活やレンタル彼女など現代で注目され始めているテーマも取り上げている、 SNSが売上を左右するようになり、SNSで有名なホストがで一般人の目にもつくようになってきたタイミングでホス狂を取り扱ったなどのポイントが 明日カノがヒットした大きな理由なのかなと思います。 個人的には、今までのどの話よりも最新シリーズがリアルで共感もできるのかなと思いますが、 皆が求めているのはゆあてゃや萌ちゃんが出てくる辺りの、馴染みのない世界だけどリアルに感じるようなものなのかなとも思います。
かみさまの贖罪

かみさまの為なら人を殺せるのか

かみさまの贖罪 大塚素
Nano
Nano
サイコミで始まった新連載。 ブラック会社で働くも毎日怒鳴られ、苦痛な日々を送る主人公佐藤。ある日、松明という名のSNSアカウントを見つけ、彼のつぶやきに救われながらも社畜生活を続ける。しかしクビを言い渡され父にも怒られ、ついに生きる理由を失ってしまう。松明に遺書まがいのDMを送ってはオーバードーズでもしてもう死んでしまおうかと考えるが、松明からの返信は「会いたいです」という思いがけないものだった。 社畜の描写が結構キツイかもしれませんが、だからこそ胸に響きます。佐藤みたいな人、いっぱいいるよなあ。 松明から初めて返信が来た時の、雨が止んで朝日が差すシーンがたまらなく好きです。佐藤にとって松明からの返信は、まさしく光だったんだなと思いました。 松明の言葉や容姿の雰囲気、1話のあの「手伝って」のシーン。全体通して暗いのに、どこか甘美で綺麗だと思ってしまった。 2話の「神様みたいな人だ」と松明に対して思う佐藤も、すごいなあと純粋に感心した。そういう観点を持つ佐藤、真面目で本当に良い人なんだろうな。 3話のスピード感も最高です。この2人がどんな結末を迎えるのか、しっかり最後まで追いたい。