母40歳、女子高生になりました

懐かしい手触りと令和の質感の同居 #1巻応援

母40歳、女子高生になりました 七尾ゆず
兎来栄寿
兎来栄寿

表紙やタイトルからはかなりイロモノ的な印象を受けるかもしれませんが、笑って感じ入ることのできる素敵な作品です。 40歳で女子高生になる、というタイトルは主人公の森梅(もりうめ)が定時制高校に通い始めることを意味しています。10代で娘を産むも、夫に逃げられ高校もしっかり卒業できなかった梅。母子家庭で身を粉にして必死に働いてきた梅が、定時制高校で出逢うさまざまな人々との交流を通して人生の後悔を取り戻していく物語となっています。 それなりの苦労をし、人生経験を積んできた梅ですが、そんな彼女ですら想像が及ばないような生き方や思考をしている人がたくさん通う定時制。花ちゃんやキララなど、一筋縄ではいかない訳アリでキャラの濃いクラスメイトひとりひとりのエピソードに見どころがあります。 さまざまな不遇の原因を「個々人の努力不足」と断じることに対して、近年はそもそも努力ができる環境にあった人は自分が恵まれていたことを理解していないケースが非常に多く、また身体的な理由や精神的な理由によって同じ環境であっても同じパフォーマンスが出せない人もいるという当たり前のことが少しずつ浸透してきてはいます。しかし、まだ十分ではありません。人間は自分の当たり前を基準に他人のことも推し量ってしまいがちですが、それが通じない相手も数多くいることを肝に銘じておかねばならないと感じさせてくれます。 ともあれ、コミュニケーションや言動で失敗を重ねながら、それでも持ち前の性格や行動力で道を切り拓いていく梅を見ているととても元気が出ます。 少女マンガのカテゴリーですが、恋愛メインではなく人間ドラマが中心なので男性にも非常にお薦めしやすいですし、実写化も映えそうです。古き良き少女マンガの性別を問わない人情コメディを思わせながら、価値観としては令和の今に応じて描かれている、そんな作品です。

OH MY DOG! まっすぐにいこう。~キキの場合~

いろんなものが意外だった新作

OH MY DOG! まっすぐにいこう。~キキの場合~ きら
nyae
nyae

まっすぐにいこう。を読んでいた感覚で新作だ!と思って読み始めると、その違いにけっこう戸惑うかもしれません。 主人公も20代なかばの女性で、その恋のお相手はアラ還のイケオジ。 それでも犬たちの描写はやっぱりきら先生だなという感じで、「かわいい」だけじゃない犬の姿をコミカルに描いてくれてます。レイモンさんの犬への名付けセンスが最高でした。 主人公のキキですが、芸能界へのあこがれが強いものの、見た目の美しさ以外に特出したものを持っていないので上手くいかず、挫折を味わっているという設定ですが、その性格というかキャラクターがなかなか掴みきれないです。一見、さっぱりした人なのかなと思いきや自分の見栄のために人を利用しようとしたり、子供っぽく嫉妬を顕にしたり、コスプレ狂だったり…面白いヒロインだなーと。 ちなみに主人公がバイトするコンビニの店長が渡部京介だったり、ちらっとマメタロウやハナコちゃんのイラストが出てきたりもします。今後もシリーズとして定期的に読みたいですね。 一緒に載ってる読み切り「おねがいプラスワン!」は普通におもしろいラブコメでした。