音のレガート
心を音を、滑らかに繋げる #1巻応援
音のレガート すいと
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
楽器未経験の病弱女子が、高校で金管五重奏の仲間に加わるお話。音楽を演奏する理由や仲間とは何なのかについて、優しくも真剣に伝えてくれる内容でした。 秋のアンサンブルコンテストが目標の五人。しかし初心者の主人公と、とにかく音を合わせるのが楽しい面々に、上を目指す緊張感は当初ありませんでした。 私はそこがすごく良いと思うのですが、強豪校との強烈な出会いによって、難しく考え始めてしまう。しかしそこで得られる新たな思考も前向きで、音楽の楽しみに向き合えているのが良いのです。 とかく部活漫画は、頂点を目指してキツい遣り取りがなされるのが常ですが、本作の五重奏は、仲間の結束を強めながら皆で目標を決め、真剣でも楽しく穏やかに取り組む。 タイトルの「レガート」とは音楽用語で「音を滑らかに繋げる」という意味。メンバー達の絆が次第に強まるのを見ていると、心を重ねて思いを繋げ、滑らかで美しい調和を作り上げる、そんな「音楽の喜び」のための作品になってくれそうだ、と感じました。 ★余談★ 高校生の吹奏楽部員にとって、夏の普門館(今は別会場)と秋冬のアンサンブルコンテストが二大大会になりますが(あとはマーチングもあるけど……)大所帯の吹奏楽部のアンコンはまず部内選抜から始まります。よってアンコンに出たことのある人は、実は少数派です。私は出られませんでした……。
なでしこドレミソラ
音楽表現と和楽器JKのブレイクスルー!
なでしこドレミソラ みやびあきの
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
音楽の表現に「擬音」を使わない事。これがこの作品の最大の特徴である。 擬音による音楽表現は、分かりやすい反面、表現できない事も多い。例えば音色は、伝えたい音を擬音で描いても(ポンとかガーッとか)結局は読者の脳内補完が頼り。正確な伝達とは言えない。また、合奏での、旋律やリズムが絡む感覚は表現しにくい。 『なでしこドレミソラ』では、流水紋で旋律の雰囲気、和柄で和楽器らしさを仄めかすのみ。絵で魅了したら、音は完全に読者の想像に委ねる、割り切りの良さ。しかし流水紋は音楽が流れる時間・空間感覚となり、それを重ねる事で各パートが混ざり合い、響き合う表現となっていて、今までに無い「穏やかな」ゾクゾク感がある。 かつて音楽漫画が発想しなかった「音楽表現」のブレイクスルーを、音楽漫画が好きな方には、ぜひ読んでいただきたい! ♫♫♫♫♫ 物語は、地味な自分を変えたい主人公・美弥を始め、和楽器同好会に集まったメンバー四人の、様々な「ブレイクスルー」の過程が描かれる。分かりやすい子から一見分かりにくい子まで、自分の拗らせを知り、悩み、殻を破って成長する物語は明るく、清々しい。 これは、四人が対等な関係で互いの音を聴き、自分の音を重ねる真の「合奏」を目指す物語。そしてそれは音楽を越えて人間関係でも、自分から動く事と、相手を見る事のどちらも大事だという「個性と調和」の物語になっていく。 少し拗らせていた女子高生達が、真に自立したメンバーの一員として舞台に立つ終幕は、とてつもない歓びに満ちている!
ねことちよ
猫みたいな幼児に癒される日々 #1巻応援
ねことちよ せらみっく
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
OLの「ちよ」は幼児の「ねこ」と二人暮らし。髪型や行動がどことなく猫っぽい、人間(?)の幼児のねこに、ちよは毎日癒される。 ねこの「猫っぽい」様子が独特で愛らしい。動作や習性等、本当にねこが「猫」にしか見えない時があり、そんなねこを見ているのが楽しい。 漫画の中の幼児を、例えば『よつばと!』のよつばの様な表情豊かな子供と、例えば『学園ベビーシッターズ』の虎太郎の様な無表情な子とに分けるとしたら、ねこは後者。目の形が変化せず、口角も上がらない。 しかし無表情は、却って細かな感情を雄弁に語る。目の色の変化、顔の紅潮、口の結び方と開き方、そして動作。この子色々考えてるなぁ、と細かな機微を感じ取れることが楽しく、愛らしさを一層増す。 1巻では何故この二人が共に暮らしているのか明記されない(親……ではなさそうな)。それにねこの「猫っぽさ」や、その他にも結構謎の部分がある。しかし、謎に引っかかるものの、ねこの感情の機微と、溺愛しつつもねことちゃんと向き合うちよ、時折ちょっと悪いことをねこに教えるお姉さん・まきとの日々の様子は、ゆっくり見守りたいと思わせるものがある。 子供の日々の歩みに寄り添うような、優しい子育て漫画だ。
スローループ
フライフィッシングと女子の友情問題
スローループ うちのまいこ
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
近年数多い「釣り女子漫画」。大抵の作品は様々な釣法を紹介してくれるが、この『スローループ』という作品が他と違うのは、 「フライフィッシング」 これがメインである点だ。 しかも最初が「海フライ」。 マニアックすぎる……。 そんなマニアックな釣りを亡き父に教わった女子・ひよりは、突堤で料理が得意な女子・小春と出会う。互いの親の再婚で姉妹となった二人は、釣りと料理を通じて仲を深める。 ★★★★★ この作品では、「釣り」と「女子の友情」の微妙な問題が描かれている。 ひよりは人見知り故、孤独に釣行していた。 また、ひよりの親友の恋は、ひよりの父が亡くなった時、海に独り居るひよりの側にいなかった事に後悔を残す。 彼女達は小春の積極性に触れ、変化していく。そのストーリーは確かに「小さな春」のような暖かさだ。 そして釣り船屋の次女・小学生の二葉の悩みに、前向きになったお姉さん達が力を貸す。 二葉は釣りや外遊びが好きだが、そのせいで周囲の女子との関係に悩み、自分らしさを押し殺してしまう。それに対してひよりと恋が提示した解決法は、彼女達の変化と優しさを感じさせ、胸熱くなる。 女子には理解されにくい「釣り」という趣味を女子が続けるには、孤独に極めるのも良いだろう。だがもし、同性の「釣り仲間」がいたら……それは意外と楽しいかも。だからちょっと声かけてみようよ、と明るく誘うこの作品、とても優しく心に響く。 それにしてもフライフィッシング、女子の釣りとしては合っているかもしれない。 何と言っても生き餌が要らないのが大きい!毛針を色々揃えたり、自作するのも楽しいだろう。釣れなくてもじっと待つことはなく、常に考えポイントを変えて動き回るのも、飽きが来なくていい。(尤もサビキ釣りなどの爆釣の興奮には敵わないかも……と作中でもあったけれど) 2巻までに突堤、管理釣り場、キャンプ場、釣り船、ときて、3巻いよいよ渓流へ……ここからが本番!?
SA07
人はなぜ絵を描くのか #1巻応援
SA07 津留崎優
ANAGUMA
ANAGUMA
それは絵上手くなってちやほやされて承認欲求を満たしたいから!!!(ドン!!!) 本書1巻の帯には堂々たるフォントで核心を突く答えが刻まれておりました。わかるみんなそうだよな。 身近に絵を描く人間が多い環境で育った人なら1巻を読むだけでも「あっ、あぁ〜〜〜〜!!」というシーンが無限に続くこと請負い!共感と羞恥と熱量がすごい勢いで押し寄せてくるぞ! キャラもみんなすげ〜〜〜〜「っぽい」んですよ…。 アニメーター志望のガチムチ伊藤くん、抜群にうまいけど人付き合いが苦手な宮田くん、すべてを兼ね備えた美少女絵描きカガリさん、絵よりも設定考えたりが得意なグラサンの田町くん…。居ますこういう濃いひとたちがリアルにも割と(※個人の環境です)。 ラブコメ的にも矢印の方向がしっちゃかめっちゃかになっているのが読んでて笑えます。現実だったら笑えないかもしれない(怖い)。 漫画家マンガや画家マンガ、アニメーターマンガに美大マンガ…世の中さまざまな「お絵描きマンガ」があるわけですが、ある意味本作ほど「絵を描く人間」の本質(生態?)を捉えた作品もないような気がします。 人間としての絵描きの姿が『SA07』にはまさに息づいていますよ!
球詠
魔球も、百合も、あるんだよ。
球詠 マウンテンプクイチ
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
カラーボール野球で「魔球」を開発した二人の少女。別々のチームで、一人は投手として、硬式球で魔球を完成させ、もう一人は捕手として、全国レベルの実力をつける。 二人は高校で再び出会う。不祥事で廃れた野球部に十人の仲間が集った時、一人が言う。 「一緒に全国を目指して欲しい」 ……可愛い女子高生達が主役の、この「きらら系」作品だが、本気の野球漫画として、かなり力が入っている。 個性的なチームメイトも、対戦相手にも、設定が沢山あり、面白い。 例えば主人公の「魔球」は、ストレートと同じ球速で大きく縦に割れる、カーブっぽい球。鋭い変化の割に球速が落ちない理由とは……。 他にも、人のプレイのコピーが上手い選手のトリッキーな作戦や、試合自体をクイックに進める相手に翻弄される、など、実際に出来るかどうか、ギリギリの発想が楽しい。 どこか水島新司先生の自由さがある一方、試合の緻密な駆け引き、戦略などは『おおきく振りかぶって』を思わせる。更に洗練されたプレイを大胆に魅せる絵で『ダイヤのA』のように興奮させる。 様々な野球漫画の楽しみを「女子」で魅せてくれる、贅沢な作品。バッテリーや上級生のロマンシスや、もう少しで百合な関係性も生まれ、これからが楽しみ。(ロマンシス=女子の強固な友情、バディ関係。恋愛に近い程の親しい関係。日本人による造語) 大会序盤、早速優勝候補に挑む彼女達。ジャイアントキリングなるか!?
はるかなレシーブ
二人の絆が、ボールを繋ぐよ!
はるかなレシーブ 如意自在
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
とかくマスコミやカメラ小僧の下衆な視線に晒されがちな、ビーチバレーという競技。本当はこんなにも魅せるスポーツなのかと、本作を読むと驚かされる。 沖縄の青い空、白い砂浜。 そこを躍動する若い身体! 柔らかい砂地のおかげで、ハードに転がれる特性を活かして、とにかく女子高生達のプレイが伸びやかで、大胆だ。 様々なアングルで、プレイの迫力と勢いを描き、試合をグイグイと読ませる。線が細い事を除けば、マガジン等で連載でもおかしくない、勢いのある表現だ。 一方で、例えば試合用の水着を買うのに、機能性も重要だけど可愛さも大事だよね、という感覚はスポ根的感覚を和らげてくれる。 一度は挫折したかなたの復帰を、元気に後押しするはるかと、それに応えるかなた。二人の息の合ったプレイと、醸成される信頼関係に胸が熱くなる。見ているこちらが照れ臭い二人のやり取りは、明るく真っ直ぐなロマンシス。 (ロマンシス=女子の強固な友情、恋愛に見える程の親しい関係。日本人による造語) 戦略的な部分もかなり緻密で、ビーチバレーの面白さに溢れているこの作品。見開きがド迫力なので、大きめのタブレットで見ると最高!
観音寺睡蓮の苦悩(読切)
カエルDX、驚愕の百合マンガ
観音寺睡蓮の苦悩(読切) カエルDX
オタク
カエルDX氏といえばTwitterなんかでのオタクレポ漫画で人気の、ある種「ネタ漫画家」として半端ない腕前を発揮しているイメージの人だった。 のだが…。 なにこの普通にレベル高い漫画???女の子めっちゃかわいい。 いつもカエルの絵しか見てないから圧倒的な違和感がある…。絵うま…。 とはいえ、実は氏の画力の高さ自体はちょいちょい小出しにされていて、例えばこのポケモンのイラストとか。 https://twitter.com/kaeru_dx/status/1195842501057236992 それ自体に驚きはないのだが、単純にここまでかわいい女の子の表情を描かれると普通に降参という感じです。 余談だがメディア欄からこのツイートを見つけ出すまでにめっちゃ時間かかった。(飯とアニメグッズの画像が多すぎる) キャラクターとしても、完璧超人の観音寺さんが百合観測オタクとして女の子たちのキャッキャウフフするサマを眺めるのはヒネリが効いていて面白い。 観音寺さんとともにその様子をもっと見ていたいと思わせる出来だ。 この「見守りオタク感」というか、そういうアイデアは氏ならではの視点のようにも感じる。 いちカエルファンのオタクとしては、オリジナルマンガ作品での氏のさらなる活躍を望んでやまない。きららは是非ともカエルDXを激推していってほしい。 腕組みながら後方彼氏面で新たな作品を待つこととする。 カラーもめっちゃいいぞ! https://twitter.com/kaeru_dx/status/1209307806555398147