不動産屋に紹介された低家賃の古い洋館に住み始めた男。2階の物音に気付いてのぞいてみると……。サスペンスミステリ「死神」をはじめ、命を狙われた殺し屋が生き延びるためにある作戦を考えた「殺しの稼業」、馬主でもあった著者が競馬の世界を舞台に描いたサスペンス「汚れた勝負服」など、これまで単行本未収録だった短編9作を収録した傑作短編集。60年代後半から70年にかけて、勃興期の青年コミック誌や青年向け週刊誌に横山光輝が発表した現代もの青年コミックの数々が時代を超えて蘇る。当時一世を風靡した<劇画>の影響を受けながらも、新しい時代の青年コミックを模索したエンタテインメントの巨匠がつくりあげた魅力触れる作品群。
ひな子ちゃん
本書は1958年に刊行された単行本の完全復刻。後に『漫画家残酷物語』などで青春漫画の教祖となる著者が、それ以前に手塚治虫直系の愛らしい絵柄で描いた少女漫画。若き日の漫画への情熱をぶつけて描いた幻の傑作。※電子書籍版に「ひな子ちゃん・旅路」(解説)は収録されていません。
ペスよおをふれ
1957年から『なかよし』に連載された、少女漫画としては前代未聞の大ヒット作。強い絆で結ばれた少女と愛犬ペスが離別を繰り返しながら放浪する物語で、松下トモ子主演でドラマ化もされて熱狂的な人気となった。※電子書籍版に『「ペスよおをふれ」読本』(巻末解説)は収録されていません。
さくら並木
流麗な筆致で描かれる、めくるめく少女学園ものの先駆作。バレエ、クラスメイトの嫉妬と和解、そこはかとなく漂うエスの気配。『NANA』にまでつながる「少女マンガのお手本」(嶽本野ばら)※電子書籍版に『「パリ~東京」「さくら並木」読本』(別冊インタビュー・解説・対談)は収録されていません。
パリ~東京
劇画発祥の地となった大阪・日の丸文庫に、乙女画の巨匠がひっそりと残した、知られざる逸品!花売りの少女、憧れのパリ、と少女の夢に欠かせない、「少女マンガの黄金律」(嶽本野ばら)!※電子書籍版に『「パリ~東京」「さくら並木」読本』(別冊インタビュー・解説・対談)は収録されていません。
人形少女
著者が貸本恐怖マンガの第一人者として活躍中だった1960年、学年誌「たのしい五年生」「たのしい六年生」に連載した、雑誌連載作で、連載ならではの仕掛けやアイデアが盛り込まれたことでこの時期を代表する長編。当時としては異例ともいえる、貸本出版社から装いをかえて4度も刊行されたことも、当時のこの作品の人気ぶりを物語る。今回は、初出の雑誌を原本とし、カラーページも再現した完全復刻版。物語の主人公は小学6年生にして一家を背負い奉公に出た久美子。主人公が人形をめぐるさまざまな事件に巻き込まれる怪異譚。初出時の「たのしい五年生」連載の3回分はこれまで一度も収録されたことがない貴重な初復刻。また、4色カラー扉、2色カラーページも初めて再現。※電子書籍版に別冊『人形少女研究』は収録されていません。
青い花びら
1958年に著者が「松本あきら」名義で刊行した貸本単行本で、デビュー第二作目。雑誌「少女」に発表された読み切り短編3作を収録。当時の少女漫画の枠を超えて描かれたサスペンスと幻想溢れる幻の傑作ファンタジー。※電子書籍版に『「青い花びら」読本』(特別付録)は収録されていません。
森の兄妹
中学2年生だった楳図かずおと京都在住の少女マンガ家・水谷武子との共作で、楳図にとってはデビュー作となる単行本。前半と後半を楳図が、中盤を水谷が描いている。楳図と水谷は、「改漫クラブ」というマンガサークルのメンバーで、楳図から共作を依頼したものである。原作はグリム童話の『ヘンゼルとグレーテル』だが、のちのホラーの巨匠・楳図を思い起こさせる翻案が随所に見られる。また、背景の細かな描写など、早熟な天才の並外れた画力には驚かされる。※電子書籍版に『「森の兄妹」「底のない町」読本』は収録されていません。
緑の天使
アトランチスにある国家の滅亡劇や、中世ヨーロッパを舞台にした妖精と人間の恋愛をめぐる悲劇などが叙情性豊かに描かれた初期の傑作。後の松本作品を彩るさまざまな要素が、ふんだんに登場するファン必見の作品。※電子書籍版に『「緑の天使」読本』(別冊付録)は収録されていません。
宇宙作戦第一号
松本あきらの名で出版され、昭和30年代SFブームの先駆けとなった、夢と冒険とロマンあふれる名作。後の『銀河鉄道999』や『宇宙戦艦ヤマト』などの作品に登場するヒーローやヒロインの原型がここにある。※電子書籍版に『「宇宙作戦第一号」読本』(別冊付録)は収録されていません。
呪われた村
1959年に刊行された単行本の復刻です。平家の落人伝説を舞台に、人里離れた深山の集落に隠された謎と恐怖が交錯する幻想奇譚。劇画調の手法をとりいれ、岬探偵の冒険と伝説をミステリアスに描いた著者の初期代表作。※電子書籍版に『「呪われた村」読本』(別冊解説・インタビュー)は収録されていません。
星よきえないで
1960年に刊行された著者初の長編で、前編、後編の2冊に渡る大作です。物語は主人公の少女の持つ人形に隠された秘密をめぐって展開され、手に汗にぎる描写が続くドラマチックなストーリーになっています。舞台は東京から九州、また山奥の温泉場と次つぎと移り、テンポ良く進んでゆきます。※電子書籍版に『「星よきえないで前編」読本』『「星よきえないで後編」読本』(別冊付録)は収録されていません。
単行本のタイトルになってるだけあって「死神」が1番面白かったです。こういう主人公が死神になっちゃうオチってよくあるはずなのに上手いことダマされました。好奇心は身を滅ぼすっていうことよりも、前任の死神の消滅の仕方が後味悪いのが大人向けの漫画っぽくていいですね。2番目に好きなのは「汚れた勝負服」かな。ラスト1ページで主人公が極悪人だったことが判明するダイナミックさに驚いた。