十角館の殺人

動機変更が影を落とす

十角館の殺人 清原紘 綾辻行人
名無し

原作が映像不可能とされて来たトリックは漫画しか出来ない手法で頑張ってたのではないかと思います。絵も綺麗ですし良くコミカライズされているなと(一部キャラクターの性転換もそんな違和感ない)。 けれども、核心となる動機面が原作よりページ割いてスポットを当てられているにも関わらず、改悪としか言えないものになっていました。 警察から誰も悪くない真相が関係者には既に告知されていたのですが(解決編パートで警察が調べてない訳ないだろと強調され)、自分達が殺したんだみたく何故だか皆で騒ぎ合い続けて(エラリィなんかは殺される最期まで自分が殺したと言い張る)、聞きつけた犯人が復讐に及んで勘違いオチになっていたのはなんだかなあと・・・。ショック受けて自殺に走りますが滑稽に見えます。 原作のも被害者からすれば殺されるほどのことかと主張したくなるものでしたが、犯人からすれば成立し得なくもないものではありましたし(現実に問題になった大学サークルトラブル)、島田の追及さえも証拠がないとかわしきって安心した後に、犯行前に良心として瓶詰めした流した計画書が戻ってた運命を悟ることで、「あの人にこれを渡してくれないか」が清涼感すら覚えるラストになったのですが、漫画版では台詞は同じでも情けなく後味悪さを覚えてしまいました。

最果てのセレナード

あらすじを読まずに1巻を読んでみて欲しい。 #1巻応援

最果てのセレナード ひの宙子
兎来栄寿
兎来栄寿

『グッド・バイ・プロミネンス』で鮮烈な才気を惜しみなく発揮して現れた新星・ひの宙子さんの注目の連載作品がついに発売されました。 公式のあらすじが物語の内容をかなり克明に書いてあるのですが、ネタバレを気にするタイプの人で初めて読む方はあらすじは避けてから読んだ方がより楽しめるかもしれません。 冒頭の8ページがフルカラーから始まりますが、その僅かなページだけでも「上手さ」が伝わってきて、その後の面白さを予感させてくれます。小夜の顔を、表情を印象的に見せる無言の大ゴマの魅力たるや。ウユニ塩湖の上でピアノを弾いているような扉絵も、関係性や特性・属性を暗喩しているような構図でありながら、シンプルに美しく心惹かれます。 ピアニストの転校生小夜と、そのピアノ教師の娘であり小説家になる夢を持つ律の何とも言えない関係性の萌芽、そして花笑み。しかし、そこに小夜の母親のただならなさが一抹の不穏として去来し、物語を攪拌していきます。 ひの宙子さんの、名前を付け難い感情や想いを絵ですこぶる巧みに表現する力が素晴らしいです。加えて、マンガとしての構成も秀逸で初連載としては非常にレベルが高いと思わされます。 25日に発売予定の短編集『やがて明日に至る蝉』と併せて、強く推したい間違いなく面白い作品です。