アフタヌーンの感想・レビュー502件<<1314151617>>難しい事なのにわかりやすいフラジャイル 草水敏 恵三朗名無しただ難しい専門用語を並べまくってストーリー的には面白くない漫画、多そうなのですが、これ面白い! なんででしょう、わかりやすい! しかも自然と感情移入できるしキャラクターも立ってるんですよね… 漫画的な部分もありリアルなところ、業界あるあるもあり… すげー!って感じです 語彙力ないですけどいや本当にメディアミックスと同時多発コミカライズ武士道シックスティーン 安藤慈朗 誉田哲也starstarstarstarstarひさぴよ「薬屋のひとりごと」が話題になってますね。なろう原作の大ヒットからのコミカライズですが、2019年現在、別々の雑誌(「月刊ビッグガンガン」「月刊サンデーGX」)で同時期にコミカライズを連載するという事態になってます。これはまぁ、色々とメディアミックスに関わる事情があってこういう事が起きてるんでしょうか。 で、過去にも同時コミカライズパターンあったな〜と思い出したのが、この「武士道シックスティーン」です。2009年に、「アフタヌーン」と「マーガレット」が同じようにコミカライズを展開していたのですね。結局どっちの方が売れたのか?今更ながら気になるところですが、とりあえずここではアフタヌーン版の感想を書こうと思います。 作画は安藤慈郎。「しおんの王」のコミカライズを経験し、次の作品で今度は武士道シックティーンの作画を手掛けています。他作品と比較してみて、特に違いを感じるのはキャラの性格付け。個人的にはアフタ版の方が地味…いや、落ち着いた雰囲気があって好きです。逆に、「地味なのは嫌!」という人はマーガレット版を読むのがいいかと。 キャラの性格の違いについて。剣道エリート・磯山香織に関して言うと、表情の変化こそ少ないものの、武士のような真剣味や生真面目さ、気迫のこもった表情が良いんですよね。これは、青年誌だからこそ磯山の「男っぽい」部分をより上手く引き出せたのかなと。 対する西荻早苗についても、ウザくなりすぎない天真爛漫さ(←ここ大事)と、舞踊の経験から来るしなやかさ、芯の強さを感じます。磯山と西荻、どちらも過不足なく、対比の描き分けが秀逸です。 メディアミックス化作品の場合、小説、映画、漫画のどこから触れるかで、作品の印象は変わるものだと思います。そういう意味では、最初にこの漫画から読めたのは自分にとって幸せなことでした。キャラのパワフルさがすごい!波よ聞いてくれ 沙村広明あくあキャラのパワフルさに持ってかれて、気付いたら読了してた。内容は、しがないカレー屋店員の女子が、失恋をきっかけにラジオのパーソナリティに抜擢される話……と一言でまとめた時点ですでに意味不明。一応サクセスストーリー、なのか……? あと、いちいち挟まれる小ネタにビクンビクン反応してしまったけど、筋少の『労働者M』は労働中にぜったい聴きたくない曲ナンバーワンだと思うw触手ヒロインに萌えるシドニアの騎士 弐瓶勉あくあぶっちゃけ序盤は「?」状態だった。バトルシーンとか世界観とか掴めないうちに、ストーリーがジェットコースターで進むし、回収されない伏線もいっぱいあるし……なんてことは最早どーでもいい。つむぎたんかわいいよつむぎたん! まさか触手ヒロインに萌える日が来るとは……物書き志望ならぜひ読むべき。かわいいヒロインキャラ=姿かたちではない、心が大事なのだと実感できる。あさりよしとお作品のストーリーものでは一番好きですワッハマン あさりよしとおなかやま小学生の時に学研の「まんがサイエンス」に夢中になって漫画の道へ・・・ 私の原点のような、あさりよしとお先生 ほぼほぼ作品はすべて読んでいますが、ストーリものであればこの「ワッハマン」が最高傑作だと思っています。 11巻という読みやすい巻数、本当に綺麗に美しく締めくくったラスト ※連載版はラストが違うとのことですが読んだことないです(読みたい) この作品は正直1巻では面白さが伝えきれないところが残念 だまされたと思って3巻ぐらいまで読ん頂けると面白さがわかるかと ストーリー 1万年前、アトランティス技術で不死身の体を手に入れたワッハマンは敵対する「パパ」と激闘の末、記憶を失ってしまう。 1万年後、目覚めたワッハマンは再度敵対する「パパ」とその組織との戦いを回りの人々を巻き込みながら繰り広げていく 死ねない体に人の心を宿しているワッハマンといずれ死んでしまう人々との交流 基本的にはあさりよしとお先生が得意とする1話完結&コメディ調で進んでいくのですが、徐々に話の骨格が見えてくるところが面白いです。早く続きを青野くんに触りたいから死にたい 椎名うみ名無し怖くなかったの1巻の始めだけ。一旦こわい!と思ったらどのシーン読んでもこわいよぉ~。エログロってよくあるけど、青春ぽくしたらこんな感じなのかもね。こわいドキドキと恋愛感情のドキドキって混ざりそうだし。 こっくりさん系のこわさってほんと無理だし勘弁なんだけど解決したところを見ないとずっとこわいので早く続きを読みたい。読み終わりたい。 ノリというかテンションというかテンポというか、すごい好き菫画報 小原愼司地獄の田中すみれの無茶苦茶加減というのか、そういうのがすごい好きだったな たまにSFっぽい展開になるけど、特にそういうことは気にしないでぶん殴って解決するみたいな感じっていうのかな、ああいうノリというかテンションというか、すごい好きだった窒息しそうな緻密な地獄の中でも、河童がいる天水 花輪和一にわか民謡のような、説話のようなテイストが特徴的。いうなれば日本文学をマンガに落とし込んで、和風ファンタジーとして完成させたような作品。 個人的には、読者のストレスコントロールが完璧なところが素晴らしいと感じた。前半部は世界のどうしようもなさを、河童の愛嬌でうまく釣り合いを取り、後半部の緻密に書き込まれたドロドロの地獄をオチで、綺麗に飛ばす。河童の存在が終始とてもいいバランス感を保っていた。 河童は読者の救いであり、なによりも主人公の救いだった。 WEBで無料で公開もされているが、なんとなく、この読書体験は紙でしてほしいと思った。一味違う切り口の時代劇考える侍 山田芳裕マウナケア私が山田芳裕作品を知ったのは、わりと早くて「大正野郎」の単行本が出たころでした。弟の部屋に本が転がっていて、最初は「なんてレトロな絵なんだろう」と思って、あまりそそられなかったんですが、ページをめくっていくうちに、ついつい読み込んでしまっていました。なぜなら、どうしてこんな地味なところを突けるんだろう、という着眼点の凄さと、それを作品にまで仕上げるパワーに心ひかれたから。「大正野郎」はタイトル通り大正時代にこだわっています。そしてその後もスタイルには大きな変化がなく、今作ではこだわる部分が“哲学”に。侍が刺客に対して仏陀を引き合いに出してダメ出しし、林羅山を説いても、作品中では何の違和感も無い。葛飾北斎に意見したり、松尾芭蕉を船頭と語ったり、さらにはソクラテス、ナポレオンなどなんでもござれ。タイトルもパスカルのもじりですし。これがうまく武士道や粋、そして生き方といった、目に見えない観念とマッチしているんですね。まさに一味違う切り口の時代劇、です。派手な演出は無いが、心理描写は丹念呪街 惣本蒼マウナケア「呪い」…人を殺したり傷つけたりすることに限定された超能力。そして精神力にその力は比例する。こんな特殊な能力だからこそ、この作品はドラマ性が色濃く出る結果になったのでしょう。呪力合戦に派手な演出は無し。一方、作品の核である命を奪う能力をもつ人々の心理描写はこれでもかというほど丹念。2つの話を交互に描き、補完し合ってじわじわとドラマを盛り上げているのも効果的です。この作品における呪力とは、思春期から20代にかけて発症する能力。この能力をもつ者は呪街に行かなければならない。12歳で発症してしまった優愛菜は能力を中和することのできる火詠とともに呪街に向かう、というのがひとつめの話。そしてもうひとつは呪街四天王・笠音と、彼女に預けられた真魚が、権力争いに巻き込まれるという話。能力に疑問をもつ者と、強力な能力をもつが故に安らぎを求める者。この2人のストーリーが最終的にどう交わるのかがまさに焦点です。ようやく最終巻がリリースされましたので、その衝撃のラストを心して読んでください。完成度が抜群に高い遠い食卓 イシダナオキstarstarstarstarstarひさぴよ「ビッグコミックの読切に載ってそうなマンガだなあ」というのがアフタヌーン誌面で読んだ時の印象。同じアフタヌーン作品で言えば、豊田徹也の「珈琲時間」に近いテイストでしょうか。味のあるキャラクターたちと、生活感の溢れた風景、そして庶民的なおいしそうな食べ物の数々。一色まこと作品が好きな人とかにおすすめです。食にまつわる短編集は、世の中に数多くありますが、これは完成度が抜群に高いです。個人的にはずっと手元に置いておきたくなる本の一つ。 各話が微妙にリンクしながら物語は進み、クライマックスの九・十皿目「浅い茶筒」まで、笑いあり涙ありの全1巻の道中です。この本は電子書籍でも買えますが、できれば紙の本で読む方が作品の良さを感じられると思います。今までの推理ものとはパターンが違う探偵プロビデンス 迷宮事件解明録 外木寸starstarstarstarstar_borderマンガトリツカレ男※ネタバレを含むクチコミです。読む人を選ぶ作品THE END 真鍋昌平マウナケア同著者の『闇金ウシジマくん』よりもさらに息苦しく感じますね。何もかもに意味を見いだせず、イラついてばかりの青年が主人公のSF。暴力表現は『闇金』の現実的描写に対して、SF作品であるためにより過激。心理面でもそれに比例して深い部分までえぐらざるおえない。では、重く過ぎてつまらないのかというとそうではないのですね。ストーリーはむしろ好きな部類であるロードムービーふう。無為な日々をすごすシロウ。空から降ってくる少女。ルーシーと名乗る少女との生活と突然の終焉。謎の敵とシロウの消された過去。そしてかつての仲間を探す旅…、と矢継ぎ早でテンポ良い。キャラも個性的でぶっ飛んでいる。じゃあなんで息苦しいんだろう?と考えて見つけた答えは、過激描写のせいではなくて、短いページでシロウの救いのない閉塞感を感じてしまった、これじゃないかと。この辺のシロウの心中を素直に受け止められると、エピローグの全員寝そべるシーンが心に染みてくる思うんですが、どうでしょうか。う~ん、この作品もやっぱり『闇金』同様、読む人を選んでしまうかな。神戸在住神戸在住 木村紺マウナケア海と山の間のわずかばかりの平地で18年間育った私にとって、神戸は好きな街、というよりは憧れに近い街。神戸初体験は受験のときで、海はあるわ、丘はあるわ、繁華街に異人街に大学に、そして食べ物もおいしいと、ほんの少しの滞在経験で街にひと目ぼれしたような感覚になり、住んでみたいと思いました。この作品を読むと、その時の気持ちがよみがえります。神戸の大学に通う主人公の女性のモノローグで話が進むエッセイ風漫画。神戸の紹介的な部分だけがクローズアップされてるわけではなく、そこに暮らす人々のようすや友達のこと、お祭りなどのイベント、出会いと別れ、そして震災と、街のさまざまな側面を描いていて、タイトル通りの在住疑似体験ができます。コマの間に入る手書き文字や、トーンを使わない画風などもあって、全体としてほんわかとした雰囲気。ですがドキッとするセリフも出てきて、作者の土地に対する誇りやこだわりがいいアクセントにもなっているよう。う~ん、やっぱりいつかは住んでみたいと思ってしまいますね。けれどもうしばらくはこの作品で我慢します。フラジャイル雑談板フラジャイル 草水敏 恵三朗名無しなかったので。なんでも思ったこととか、気づいたこと書いてネ 今月も超面白かった。特にメッタメタの榊野くんに笑った三橋くんの未来を見たかのような林優樹くんおおきく振りかぶって ひぐちアサ影絵が趣味9月も半ばを過ぎて、いつしか心身に沁みる涼しい風が吹いてくるようになりました。はなしは数ヶ月前にさかのぼり、夏の甲子園の県予選が始まるよりも前。U18侍ジャパンの一次選考合宿の記事に、かの有名な佐々木朗希くんと並んで、U15の選手が間違えて紛れ込んだかのような体格の林優樹くんが写っていたのに心をときめかせたものでした。 彼こそが去年の夏の甲子園の準々決勝で、近江が金足農にツーランスクイズを決められたまさにその時、マウンドにいて泣き崩れていた投手でした。この時バッテリーを組む有馬くん共にまだ2年生。甲子園球場が金農旋風に沸くなか、TV中継で祈るように林くんを応援していたのは、近江の甲子園初戦を偶然みて一目惚れしたからでした。優勝候補にも数えられる智辯和歌山の強力打線を相手に、林くんは小さな身体から「おおきく足を振りあげて」淡々と飄々と投げ込んでアウトを重ねてゆく。そして2回戦の対前橋育英では、2点のビハインドを背負う3回からリリーフして残りの9回までを無失点で切り抜け、近江は9回にサヨナラの一打で勝利。そして3回戦の対常葉大菊川では先発し、8回まで投げて3安打11奪三振の大好投。奪った三振のほとんどは、のちに魔球と言われダルビッシュ選手にも凄いと称賛される右打者の外に大きく逃げながら落ちるチェンジアップでした。球速は130前後ながら、内外高低の制球がすばらしく、とくに右打者の内角をクロスファイアで深くえぐってから外角低めに落とすチェンジアップは芸術的とさえ言いたくなる出来栄えでした。チェンジアップだけではなく、伏線のまっすぐも余程コントロールに自信がなければあれほど内角いっぱいには投げられないし、クロスステップでかなり角度があるからなのか、膝もとに向かってくるまっすぐに打者が驚いて避けていながらもストライクを取られている場面も多々ありました。ほとんど無名のノーマークでありながら蓋を開けてみれば、まだ2年生ながら大会屈指の左腕として取り沙汰されていました。 大会後に色々調べてみると、1年時には秋季近畿大会の準決で黄金世代(根尾・藤原・柿木・横川の4人が高卒ドラフト、ドカベンか!)の大阪桐蔭を相手に先発したり、その後のセンバツでは同じく1年の奥川がいる星稜を相手にも先発していたらしい。その頃から足を高く上げるフォームではあったものの、まだ「おおきく足を振りあげて」というほどではなく、それからひと冬を経て、振りあげた膝を肩にまでぶつける勢いのあるフォームに変化していったらしいのです。 そして女房役の有馬くんは、かなり早い段階からドラフト候補にも名前の挙がっていた、これまた非常にクレバーなタイプの捕手で、インタビューを読んでみると、小学生の頃から父親と野球中継をみては配球について語り合っていたという生え抜きの配球オタクであり、対戦相手の監督からも「試合の状況や展開をみて目まぐるしく配球を変えてくる非常にデータの取りにくい捕手」だと嫌がられていました。本人も「自分は相手の嫌がりそうなところを徹底的に突くタイプの捕手」だと自己分析しています。もう、林くんが三橋くんならば、有馬くんは阿部くんなのかと問い詰めたくなってしまいます。ちなみに林くんのインタビューによるとツーランスクイズを決められたときに投げたのはストレート、有馬くんのサインのスライダーに首を振って投げたそうです。それ以来、首を振ったことを後悔して、有馬くんのサインを信じて投げ抜くことに決めたんだとか。 2年生バッテリーはチームの中心として最上級生になり、秋は滋賀大会優勝で乗りこんだ近畿大会の初戦で同じく左腕エースの林投手が率いる報徳とのダブル林対決にまさかの敗退、センバツ出場を逃します。この日の林くんは自身MAXの136キロを計測しているのだけれど、これがおそらく敗因に繋がっている。夏に吉田輝星のまっすぐを目のまえで目のあたりして以来、まっすぐの球質を上げる特訓に励んだそうで、この日はまさに球の走りがよく絶好調だったとか。ただ阪急ーオリックスの星野伸之(スローカーブが有名の!)がそうだったように球が走っている日は、自分の本来の持ち味を忘れて、まっすぐで押してしまい、かえって打ち込まれることが多かったと言います。 この惜敗からチームは夏の甲子園までいっさいの負けなしで突き進みます。冬明けのシーズン開幕すぐに組んでいた奥川率いる星稜との練習試合では林vs奥川の投手戦で1-1の同点、これを先駆けに春の滋賀大会、近畿大会をそれぞれ優勝で飾り、このままの勢いでマークのかなり厳しいなか、林くんは夏の滋賀大会すべてを無失点で切り抜き2季連続の甲子園に導きます。滋賀大会決勝の光泉戦はほんとうにヒリヒリする投手戦(1-0)で、相手ピッチャーはドラフト候補の吉田くん(また吉田かい!)。9回に林くんはとうとう二死一三塁にまで追い込まれ、打者は去年のトラウマを思い起こさせたいのか二死なのに何故かバントの構えで威嚇する。値千金の1点を完封で守り切った林くんはベンチで号泣、1年間ずっと応援していたわたしも中継をみて泣いてしまった。 夏の甲子園ではバッテリーをみっちり研究してきた東海大相模のアグレッシブベースボールに敗退するものの、林くんは早くから評価の高かった女房役の有馬くんをさしおいてU18侍ジャパンのメンバーに選出される。アメリカの屈強な打者に対しても、コースいっぱいを突いた見逃しや伝家の宝刀チェンジアップで三振を奪っていました。高校野球引退後、有馬くんはインタビューで「林には本当に感謝している、林に出会えて良かった。林のコントロールのおかげで自分は配球というそこだけは誰にも負けない力を発揮することができた。またいつかバッテリーを組みたい」というようなことを言っていました。これはもう、三橋くんと阿部くんに聞かせてあげたいセリフですね。 スキップとローファーの高松美咲さんがSFを描いていたとは知らなかったカナリアたちの舟 高松美咲名無し部活と進路に悩む普通の女子高生である主人公の日常が描かれていると思ったら、いきなり得体の知れない生命体が人類を襲ってきて、目が覚めると地球ではない場所にいた…から始まる物語。スケールはハリウッド並みに壮大ですが、一番の魅力は繊細な人物の心情表現です。あり得ない状況でも主人公に感情移入できるのはここにリアルがあるからだと思います。ある意味で期待を裏切る展開なのがいい!全1巻でまとまりも良くめちゃくちゃ面白いです。Me And The Devil Blues俺と悪魔のブルーズ 平本アキラマウナケアある日、テレビを観ていたら都市伝説系の番組で「悪魔に魂を売ったミュージシャン」といった内容をやってました。出るかな、と思ってましたがやっぱり出ましたね、ロバート・ジョンソンの名前。彼が十字路で魂を悪魔に売り、引き換えに超人的技術を身に付けたという通説はその筋ではわりと有名。で、この話に興味を持った方にはこちらをどうぞ。この「クロスロード伝説」が真実だったら、という視点で描かれたのが本作。モノローグから入り、主人公のRJをブルーズの悪魔が迎えにいくまでの冒頭部が意味深。タイトルにもなっている「Me And The Devil Blues」の歌詞をひっくり返したような展開(歌詞は悪魔に「出かけよう」と声をかける)で、これは意識的にやっているのかな? 農夫・RJの性格も小心者として描かれ、R・ジョンソンとはイメージが違う印象。そして彼は悪魔と白人と旅に出る、というのですからあえて通説を変えていこうとしているのでしょう。著者は「アゴなしゲンとオレ物語」で有名。様々な意味で著者の違う一面が見られます。完結していないのが残念ですが…。仕事に疲れた時に読むべしヨコハマ買い出し紀行 芦奈野ひとしマウナケア特に何もなければ、私はあと30年かそこらは生きられると思います。でも死ぬ前ってどう生きればいいんでしょう。よく田舎でゆっくりなんて聞きますが、田舎の不便さは重々承知している私はパス。便利な都会もいいんだけど、かといってコンクリに囲まれて生きるのもなあ。だったら、文明は進化して環境だけ自然に戻れないか。なんてジジくさい考えなんですが、ある意味その理想形がこの作品です。主人公はロボットのアルファで、この辺が近未来。世の中は落ち着いてむしろ終末観を漂わせる様相。そこで人々はのんびり生きている。アルファは旅に出たオーナーを待ちながら喫茶店を切り盛りし、仲良しのタカヒロの成長を見守って過ごす。そこには人間と同じ時間の流れを共有できない、ロボットであるが故の悲哀も描かれるののですけど、私はこうして自分と関係ない、日々の流れを見続けるのも悪くない気がします。そんなゆったりした話だからこそ、サラリーマンに人気があるのかも(私の知人調べ)。仕事に疲れた時などは癒される作品だと思いますよ。茄子は気にせず読むべし茄子 黒田硫黄マウナケアこの作者の作品をちゃんと読んだのはわりと最近のことです。初めて絵を見たのはドラマの「セクシーボイスアンドロボ」の企画書に載っていたカット。絵のうまいスタッフが描いたのかな、なんて思っていたのですが、これは原作漫画で何かの賞をとっていて、各界の評価が凄く高いらしいと聞いて、読む気になったわけです。それでとりあえず読んだのがこの作品。何でもありというか見てきたような嘘をつくというか、ペテン師だなこの作者は、という印象でした。ありそうでたぶんない、日常っぽくみえる話なんて、まるっきりの嘘より難しいし、またネームが巧みで。まんまと乗せられてしまいました。時々すばらしく切れるフレーズが入ってくるんですよね。それが淡々としているように見える画風とよく合います。評価が高いのも納得。しかし「茄子」をモチーフというのは企画倒れかと。作者もあとがきで書いてはおりますが。その辺気にせずに読んでみてはと思います。救いがあるのかないのかヴァンデミエールの翼 鬼頭莫宏マウナケア魂をもった自律胴人形・ヴァンデミエール。背中に翼をはやし容姿は天使のようだが、その翼で空を飛ぶことはできない。そんな彼女たちが自由を手に入れようとする8つのストーリー。救いがあるのかどうかよくわからない、そんな話です。ヴァンデミエールは見せものだったり慰みものだったりで、創造主に気に入らないことがあれば壊される存在。そして人間としても機械としても、ましてや天使としても偽物でしかない。そんなまがいものとしての哀しさを自覚しながらも、各エピソードにおいて、心に傷をもつ少年や青年たちとともに、自由への扉を開けようとする。その行動には自立とか自我とかの暗示が散りばめられていて、各物語の結末は心にグサリと突き刺さります。単行本用には最終話として描き下ろされた「ヴァンデミエールの滑走」というストーリーがあり、これなどは特に意味深。読後しばらくして、滑走とは飛び立つ前の助走だよなと気付き、結構切ない気分になりました。昔話を読んでいる、という感覚蟲師 漆原友紀マウナケアこの作品を読み進めていくうちに、あれっ、と気づくことがあった。それは、昔話を読んでいる、という感覚だ。怪異の原因を普通の人には見えない”蟲”のしわざと捉え、主人公である蟲師のギンコがその謎を解き明かしてゆく、というのがこの作品の筋立てである。舞台は山里であったり漁村であったりさまざまで、時代は江戸か明治といった風情。そこで怪異が起こる。そしてその怪異には理由があり、村人の回想でそれは語られる。子供のころ聞いた、「この山には昔々大グモが住んでいて…、だからこの池はいつも水が枯れないんだよ」といった祖母の話に似ている、と思ったのだ。なんともいえない懐かしさ。この作品にはそんなノスタルジーと、謎解きのカタルシスが同居して、素直に心に響く――。と、書いたところでもうひとつ思ったのが、どうも故郷を思い出す風景描写だな、ということ。私の田舎も夜になると、いまだに人以外の何かが徘徊していてもおかしくないようなところ。帰省の時期でもあるし、いい具合に里心がつきました。植物から“人間”という存在そのものを考えさせられる緑の黙示録 岡崎二郎名無し手塚治虫や藤子不二雄、少女マンガの諸作品を読んでいて思うのは、昔は本当に短編マンガが多かったなあということです。そのどれもに鋭くきらめくようなアイディアがあって、それが短いページ数でドラマチックに展開してハッとする落ちそして、いつまでも記憶に残る読後感がそこに生まれます。手塚治虫作品でいえば「ドオベルマン」、藤子・F・不二雄作品なら「カンビュセスの籤」に「ノスタル爺」。大友克洋作品で「宇宙パトロール・シゲマ」。諸星大二郎作品なら「感情のある風景」と、どの作品も、読んだその日の情景まで思い出させるほど、記憶に強く残っています。 そういえば、『ブラック・ジャック』『MASTERキートン』のようなオムニバスの作品も減ってきたイメージ。短編マンガは、現代のマンガ状況では完全に日陰者のようです。 そんな今でもショートショートのような味わいの短編を数多く発表しているのが岡崎二郎という漫画家です。代表シリーズの『アフター0』は、これはもう完全に星新一ショートショートの世界。一編一編新しいアイディアのつまった短編がこれでもかと並んでいてとても贅沢な作品群となっております。その後、発表された作品は完全に短編という形ではないものの、やはり連作短編形式のものが多く、一話一話できちんと完結し、独特な読後感を残す作品ばかりです。 僕が特に好きなのは『緑の黙示録』です。樹木と心を通い合わすことができる少女・山之辺美由の4編の物語です。 山之辺美由の能力は超常的なものですが、そこから起きる事件に関しては科学的な説明がなされるというのも面白いです。「第一話 ウパス」では温室で育てられたウパスという木の下で人が死んでいたという事件に山之辺美由が関わるという筋書きです。もともとウパスは矢毒につかわれるような毒を持つ木ではあるのですが、原因がわからない。そこで美由が自分の能力で事件の真相に近づこうとします…。 岡崎二郎作品の魅力はこういった科学的なワンダーが全て人間につながって行くことです。恐竜や宇宙や動物や植物といった人間以外を題材にしていながら、そこから“人間”という存在そのものを考えさせられる、そのダイナミックな読後感にいつもぼーっとなってしまうのです。夏の夜に読みたくなるマンガほしにねがいを 中川貴賀starstarstarstarstarひさぴよ双子の高校生、藤木輝と香夜は夏休みに入った日、祖父に呼び出され、隕石の落下地点に行くことになった。その目的は隕石を人に変えることだと祖父は言う…。 正直、あらすじだけでは何を言ってるのか訳がわからないと思うが、この物語は実際そういう話だ。 この世界では、「落ちてきた星(隕石)を人に変える」という世にも不思議な仕事があり、お祖父さんはその役目を担う一人だったのだ。 人に変えられた星たちは、見た目は人間と変わらないがスーパーマン(表立っては活動したりはしない) のような存在に近く、考え方のスケールは、ヒトとは全く異なる存在だ。 星を人に変えた者は、願いを一つだけ何でも叶えてくれるという約束があり、お祖父さんは、その役目を主人公たちに託す。しかし輝と香夜は願いを決めることがなかなかできない。 実は主人公一家は、過去にとてつもない理不尽な目にあっていて、「いま何を願うか」と星から問われ、それぞれが葛藤しながら田舎での日々を過ごす…。 この漫画の魅力のすべてを言葉で説明することは難しい。まぁ全体的に優しい人間しか登場しないので、ほのぼのSFな雰囲気なのだけど、双子の男女それぞれの目線で、過去の喪失であったり、やり場のない憎しみと向き合い成長する姿に一番心を動かされた。この1冊の中に、ちょっと詰め込みすぎかな?と思ったけど、最後はどうなるんだ!?というところで、駆け抜けるようなラストの終わり方が好き。 <<1314151617>>
ただ難しい専門用語を並べまくってストーリー的には面白くない漫画、多そうなのですが、これ面白い! なんででしょう、わかりやすい! しかも自然と感情移入できるしキャラクターも立ってるんですよね… 漫画的な部分もありリアルなところ、業界あるあるもあり… すげー!って感じです 語彙力ないですけどいや本当に