真剣にシす

幕末博徒譚 #1巻応援

真剣にシす 盛田賢司 グループSNE 河端ジュン一 西岡拓哉
兎来栄寿
兎来栄寿

皆さん、ギャンブルマンガは好きですか。私は好きです。時に命や命以上のものを賭け、知力を尽くしてバチバチにぶつかり合う様は手に汗握ります。 本作は、幕末を舞台にしたギャンブルマンガ。主人公の医者・夜市(やいち)が「天下博徒御前仕合」に出る権利を持つ博徒の最高峰「真剣士」を目指し、1万両献上の条件を達成すべく江戸時代に実際に行える賭博勝負がテンポよく次々と行われていきます。 ギャンブルにつきもののイカサマももちろんありますし、一方で心理戦に偏った勝負もあり見応えがあります。1巻ではサイコロや花札といったメジャーなものもあれば、ちょっと奇抜な種目も。 ギャンブルマンガでよくあるのが相手を暴の力で圧倒して不戦勝にするか負けても反故にしてしまえば良いのでは? という状況。それをケアした上で外連味とエンタメ性を最大限に与えた『嘘喰い』という先達もいますが、本作でも博打で負けた相手の武力行使に対しては用心棒の左門次といういぶし銀なサブキャラクターを配置することで上手く解決しています。普段は好々爺然としていながら、いざというときの格好良さたるや。『青色ストライプ』好きだったマンとしては、森田賢司さんの真剣での殺陣の良さに感じ入ります。 今後も色々な江戸時代ならではの博打が出てくると思いますし、「天下博徒御前仕合」に出てくる真剣士たち、あるいは外ツ国の者たちとの勝負はこれまで以上に熱くなるはずなので期待しています。

殺っちゃえ!! 宇喜多さん

こういう強さも、ある #1巻応援

殺っちゃえ!! 宇喜多さん 重野なおき
兎来栄寿
兎来栄寿

松永久秀、斎藤道三と並び戦国三大梟雄と称される宇喜多直家を描いた戦国4コママンガです。 かわいらしい絵ながら、内容はしっかりとしていることに定評のある重野なおきさん。「梟雄」と呼ばれた男の激烈な生き様を、多分にギャグも交えながらもシリアスに描いていきます。普通に劇画で描かれるとエグい内容になりそうなところですが、重野さんの絵だからこそ重くなりすぎません。ただ、戦国時代の凄惨さもしっかりと感じさせてくれる絶妙なバランスです。 なお、作者自身の注釈がありますが「宇喜多直家については『備前軍記』という軍記物が元となっており真偽不明の部分も多いのであくまで物語として楽しんでください」とのこと。実際、他の戦国三大梟雄についても近年の研究によればそこまで残忍でもなかったということが明らかになってきているそうです。歴史の授業で習うことも少しずつ変わっていきますし、その辺りも逆に醍醐味ですね。 ダメ人間である興家と、豪傑な母親の間に生まれた直家の人生は、大きな没落から始まります。そこから這い上がっていく様は、まさに下剋上のお手本でありドラマチックです。 後に彼と激しく鎬を削ることになる浦上宗景は、「酒宴大好き!宗景さん」というサブタイトルのスピンオフを出してもいいくらいのウェイ感全開面白パリピ兄ちゃん。しかしそんな表の顔の下に、たまに鋭く強かな眼光が宿るいいキャラとなっています。 祖父の仇敵と絶妙な距離感を保ったり、妻の父親を殺す命を受けたりと乱世らしい選択を迫られることの連続の中で少しずつ成長していく直家は、立派で魅力的な主人公です。一風変わった節約術など、治世部分にも面白さが色々とあります。 普通の歴史ものが苦手な人でも、少し違った毛色で楽しめるかもしれません。