鋼鐵の薔薇

『狼の口』久慈光久が描く薔薇戦争

鋼鐵の薔薇 久慈光久
兎来栄寿
兎来栄寿

三浦健太郎さんが逝去された後も、盟友・森恒二さんやスタッフの方々が遺志を継いで制作中の『ベルセルク』の行方が気になり過ぎる今日この頃ですが、いかがお過ごしでしょうか。 そんな三浦健太郎さん、そして森薫さんという偉大な師を持つ久慈光久さんの最新作1巻が発売になりました。 代表作である『狼の口 ヴォルフスムント』もそうですが、久慈さんと言えば中世ヨーロッパ。そんな久慈さんが「薔薇戦争」における″ジャック・ケイドの反乱″を描くとなればこれはもう、間違いありません。個人的に今年発売の1巻の中では、坂本眞一さんの『DRCL』と並んで「間違いないな……」と感じた企画です。 試し読める1話から、期待通りにたっぷりと甲冑を着た騎士の闘いを堪能できます。 そして、2話に登場するリチャード・プランタジネットは、『狼の口』のヴォルフラムを髣髴とする悪辣さを見せながら、一方で怒りの理由が◯◯◯◯であるなど当時の命の軽かった世相を強く感じさせます。 歴史に詳しくなくとも十分楽しめるのも、『狼の口』と同様です。たった一人で行う△△△など、エキサイティングな見所も満載。 馬の名前に反応してしまう人は仲間です。 こういう歴史マンガが増えると、どんどん歴史を学ぶ楽しみも増えていって良いなと思います。

いばらの王

石化病と怪物の脅威から生き延びろ!SF古城サバイバル #完結応援

いばらの王 岩原裕二
ANAGUMA
ANAGUMA

モンスター映画やパニック映画の仕組みを考えてみると、多くの場合立ち向かうべき危機は基本的にひとつです。サメだったり災害だったりゾンビだったり。 『いばらの王』で最初に描かれる危機は石化病と呼ばれる奇病。主人公のカスミが石化病から逃れるための冷凍睡眠から目覚めるところから本作は始まるのですが、間髪入れずに第二のクライシスが発生。 恐竜みたいなモンスターが襲ってきます(マジで!?)。 病気と怪物、脅威がダブルで襲いかかってくるので単純計算で緊張感が2倍!おまけに古城もボロボロなのでそこかしこに死の危険が転がっています。(個人的に岩原作品で「必ず描いてるな!」と思っている水場の戦闘と潜水イベントもバッチリあります!) 命の危機に対処しながらも石化病の真実、登場人物たちの過去、カスミが抱えていた秘密が次第に明かされていくのがさながらハリウッド映画を見てるかのようなワクワク感。読み始めたら止まらなくなります。 長らく電子版が刊行されていなかったのですが、『DTB』や『ディメンション W』から岩原裕二を知った方はこの機会にこちらも読んでみてほしいです。 張り巡らされた伏線、ゾクゾクするような設定、起伏に飛んだ人間模様がスリリングなアクションとともに描かれる「岩原エッセンス」が本作にもたっぷり詰まってます。