方舟

大人気ミステリのコミカライズ #1巻応援

方舟 夕木春央
兎来栄寿
兎来栄寿

週刊文春ミステリーベスト10国内部門第1位、MRC大賞2022第1位、 2023年本屋大賞 7位受賞など、高い評価を受ける夕木春央さんの『方舟』。 そのコミカライズを『誰かを呪わずにいられないこの世界で』の木場健介さんが構成、「5人の内、誰が死ぬか」の悠木星人さんが作画という形で行なっている作品です。 私は『方舟』は原作既読で楽しんでいたので原作との違いを楽しむ方向性で読んでいますが、「5人の内、誰が死ぬか」も良い短編サスペンスだったのでマンガ化にはぴったりだなと思いました。 『方舟』はいわゆるクローズドサークルで、若い男女が閉鎖空間の中から脱出できない状況に陥り、その中で事件が起こっていくタイプのミステリです。 この手の作品は大学生グループが多いのですが、本作の主人公たちは大学で繋がりを持った社会人です。それによって特徴となっているのが、主人公が大学時代から好意を抱いていたヒロイン的ポジションの女性が既に別の人物の人妻になっているという点。いわゆるBSS的な要素も入っており、そこもある種他の同系統の作品とは異なる見所となっています。 たくさんの名作が書かれてきたジャンルですが、そこでこの評価を受けるだけの理由はしっかりと存在する作品です。連載部分では遂に犯人が明かされるところまで描かれており、単行本を読んで続きが気になってもマンガUP!で読むことができるので親切です。 エンターテインメント性の強い設定なのでマンガにしても面白いだろうなと思いながら読んでいましたが、キャラクター含めおおよそイメージしていた通りにコミカライズされています。 普段小説は読まないという人も、推理系やサスペンス系のマンガが好きな方であれば間違いなく楽しめるでしょう。ぜひ、最後まで見届けて欲しいです。

ガリ勉地味萌え令嬢は、俺様王子などお呼びでない

ちょっとズレてるご令嬢が地味でガリ勉の三男に惚れ、ものすごいアタックする話。

ガリ勉地味萌え令嬢は、俺様王子などお呼びでない くろでこ 鶏冠勇真 カルパッチョ野山
ゆゆゆ
ゆゆゆ

だけだったら、ふつうのラブコメだった。 ものすごくイケメン高能力高身長、性格は俺様系の第一王子がご令嬢にちょっかいを出さなければ。 恋は盲目故か、第一王子をゴミのようにとらえるご令嬢シャリーナ。 たしなめるガリ勉リオル。 気にもしない王子レオナルド。 不可解なセリフとともにアタックしてくる、神出鬼没な王子から逃げるご令嬢。 逃げるのを手助けするガリ勉。 ハイスペック故、なんなく追いつく王子。 一巻無料で読んでみたら、予想外におもしろくて、とってもビックリ。 タイトルが長いので油断していた。 まさか、ファンタジーもので、恋愛全振り(コメディだけども)とは思わなかった。 この世界には、魔法はあるけど、魔王はでてこない(もしくは関わってこない)。 ただし、魔王よりたちの悪い第一王子は出てくる(ものすごく関わってくる)。 人の恋路を邪魔するやつは、という言葉があるけれど、まさしくそれで、読んでいてヤキモキワクワク。 とはいえ、王子からしたら、黒鼠ことガリ勉リオルがそれにあたるんだよなあ。強メンタルすぎる。

血を這う亡国の王女

屍山血河の女の闘い #1巻応援

血を這う亡国の王女 我妻幸
兎来栄寿
兎来栄寿

表紙や巻頭カラーの目を奪われるような美麗さ。 美しいだけではなく迫力溢れる緻密な絵によって紡がれる、厳酷で慈悲のない物語。 1話目を読んだ瞬間、これは凄まじい新作が登場したなと感じました。 中世の西洋的世界観の架空の諸国を舞台に、亡国の姫に襲い掛かる過酷な運命。国も家族も奪われて姫から家畜同然の存在へと堕とされた主人公が、娼婦として成り上がりある「作戦」を実現するための闘いの様子が描かれて行きます。 実際に歴史上で多々起こって来た戦勝国による略奪や陵辱行為。蓋されがちな側面を、ここまで良い意味で悪辣かつ美麗に描く作品は寡少です。 読んでいて息が詰まるような苦しさがある一方で、暗黒の中から生まれる背徳的なカタルシスも存在します。残酷な運命や世界と対峙する、鬼気迫る表情がそれをアクセラレートしており秀逸で必見です。 エログロが苦手な方にはお薦めしませんが、『狼の口 ヴォルフスムント』や『ブラッドハーレーの馬車』的な作品を好む方には非常にうってつけの物語です。 我妻幸さん、四季賞の「360°の思い出」の後はマンガよりイラストの方面でプロとして活躍されていたようですが、とてつもない画力である上に前作からの振り幅を考えると引き出しも多そうで、さまざまな物を生み出してくださりそうな期待が募ります。

乙女ゲーム六周目、オートモードが切れました。

オートモードが切れたので断罪回避に動きます

乙女ゲーム六周目、オートモードが切れました。 双葉はづき 空谷玲奈 昴カズサ
ゆゆゆ
ゆゆゆ

ゲームの悪役令嬢・マリアベルへ転生したものの、意思とは反する悪役令嬢らしい言動が自動的に繰り広げられるオートモードで物語が進んでいく。 どのエンドも痛くて苦しいバッドエンドばかり。 また次もかと感情が死んできた6週目。 オートモードが切れ、さらに0歳からのスタートとなった。 6週目は断罪ルートを回避するため、悪役令嬢となるフラグを潰しに、潰し。 ゲーム開始まで残り3年となる魔法学園中等部への入学からストーリーは始まります。 信頼は皆無、信じられる人もいなかったオートモード時代が深く心に刻まれているため、周囲の評価にも関わらず、マリアベル視点だと非常に自尊心が低いです。 悪役令嬢だからか、忍び寄ってくるトラブル。 マリアベルは断罪されないルートを手にすることができるのか。 そんなお話です。 悪役令嬢ものと端的に言っても、バリエーションが多いですね。 オートモード時の話はあまり出てこないのですが、そのためにトラウマの強さを感じ取れます。 見たくない映像を見せられ、最後の嫌な思いは確実にしなければいけないとしたら、罰ゲームというか拷問に近いものだからでしょうか。 創意工夫して乗り切ろうとするマリアベルには、後に引けない思いと強さを感じます。