ひさびさに舞い込んだ家庭教師のアルバイトに歓喜する祐紀野(ゆきの)。教える子は問題のある生徒だとは聞いていたけれど、男の家庭教師を誘惑してからかうクセがあるって!……でも、陽(ひなた)くんって……男の子、ですよね!? その点、女性なら安心?……もともと女性に興味がないらしい陽くんに、正常な性意識を持たせて欲しいって……ええっ!? はあ、わかりました。なんとかやってみます……さてと、それじゃあ、女装でもさせてみるか……!(「Delicate Kid」より)。 アルバイト中のコンビニエンス・ストアで、ナプキンを買おうとする男子中学生に反応する岩崎。売っていいものか悩んでいたところ……なんと、彼は女だった!? しかもその後、路上で成人男性ともめるところを目撃してしまい「あなたとはもう終わったんだから!」……って……? 実は幼く見える彼女・光(ひかり)は成人女性、さらにバツイチで、先ほどもめていたのはもと旦那だったらしく……?(「MINIATURE HIKARI」より)。他、「好きになれるとおもう」「来る春」「The surfing utilizing method~サーフィン活用法~」「OLメランコリー」 「FLOWER」「夢見る探偵」「Powerful Love」の全10編を収録。家庭教師と女装っ子、男に間違われる女のコetc……ジェンダーの壁をとっぱらったお色気と可愛さ満点! あらなが輝の珠玉の作品集!
私は柊きらら、アイドルとして各方面で重宝されてる女のコ。でも学校では普通の生活を……してるハズ、なんだけど……たまにはこんなこともしてたりして……。そう、同じく芸能人の真太郎くんとムフフな関係なのです。ある日呼び出しを受けたのは、大御所プロデューサーの横井さん。女優としての意気込みを見せろって……? 枕営業の噂って、ホントだったんだ……ここはガマンで……?(「IDOL FUTURE アイドル フューチャー」より)。 坂を登った先のアパート・猫柳荘へと引っ越してきた牧野葉織(まきのはおり)ちゃん。坂の途中で会ったのは、管理人の美少年・柳原優希(やなぎはらゆうき)くんだった―。彼によると、住人の黒木さん(隣人同士で結婚したらしい)が、ちょっぴり変わった歓迎会の準備をしていてくれるらしく……?(「猫柳荘」より)。ほか、「愛の曲線」「猫の恩返し」「キレイになりたい!」「DYNAMITEダイナマイト」「PURE FRIENDピュアフレンド」「プールの幽霊」「小さな頃から」の全8作品を収録。豪華なあとがきゲスト陣と、描きおろし4コマも併録! あらなが輝(ひかる)ブランドのちょっとHなラブコメたちをこれでもかと詰め込んだ、「A」ra「N」aga「H」ikaru「48」手の「ARCHIVES」(保存記録)、お色気と可愛さは抜群! ちょっぴり非日常なラブコメ満載の作品集。
南風からから
好きな言葉は「勝利」、嫌いな言葉は「努力」。 自称天才ボクサーの「宮島ムサシ」は周りに期待されているのだが試合になると何故か勝てない。試合に負けた帰り道、むしゃくしゃして木にパンチを浴びせると…羽根の生えた美少女が降ってきた。なんと彼女は生まれて一度も幸せに微笑んだことのない、泣いてばかりの「勝利の女神」であった。「誰かに勝利を与え、笑えないと天界に帰れない!」という彼女に宮島は「勝利を捧げる!」と宣言するが、果たして「勝利の女神」を心から微笑ませることができるのであろうか!? 週刊少年ジャンプで人気を博した「Merry Wind」の元となる新進気鋭作家・南山本春のデビュー作「南風からから」にコミックス未収録作品3本を加えた珠玉青春短編読み切りをスペシャル大容量でお届け!
リリカ 抒情
80年代には黙殺されたこの才能を今こそ正当に迎え入れたい/松浦理英子(帯原稿より)。本書はペヨトル工房からの第二弾であるが-リリカ-から四年の月日がたっている。しかし内容は逆に-リリカ-以前のものが収められている。キャプションでもあるように-エステル-に至る道であり、宮西の“技術修練”を垣間見ることが出来る。作品は79年ブロンズ社刊「ピッピュ」と81年久保書店刊「薔薇の小部屋に百合の寝台」から自選した物で、いずれも77年~79年にかけて青年雑誌各誌に発表された作品である。なんと作者が18歳~20歳の間に描かれているというのだから驚いてしまう。宮西の言葉づかいは独特である、ここでその謎に触れておかなければならない。本書「Lyrica」の口絵にはタイトル下に《抒情》とある。では、その意図するところは? 抒情とは感情に訴える感覚であり、生来人に備わったが予感する能力とも言える。それは彼の追い求める感覚の総称であり作品はその予感の実体なのである。自ら捕らえようとしたものの姿がこれらの作品である。と、言いたいのではないだろうか。彼の文章は“詩”である。そこに音楽をつけるように彼は絵を描いてゆく。預言的感情に導かれ実体化した抒情…それが -Esther-における副題《あふれてくねるもの》なのではないか…では、あふれてくねるものとは何処へ? それは次回作で明らかとなるだろう。 収録作品:貧しきフリュート/嬲りのよる(ふたなりのよる)/鶏少年/花粉/エンゼルの丘/月の園/大きな黒い岩/メロンの岩/十七歳の妾/Chenges/Friend Angel No.5/ぼくのお尻にきみの勇気/肉体関係/充血果実/歓び、ふるえる/夜のつまづき/鬼百合秘/五月物語
宮西計三は黙殺された才能なのだろうか。 きっと、そうなのだろう。 『ちびまる子ちゃん』のキャラ名に使われていないのだから。 …というのは、まあ、軽口の冗談として。 しかし、彼のそれほど多くない漫画作品を、こうして電子で簡単に読むことができるのだから良い時代ではある。 本書は 「79年ブロンズ社刊「ピッピュ」と81年久保書店刊「薔薇の小部屋に百合の寝台」から自選した物」 ということで、80年代初頭に花輪和一や丸尾末広に続く才能として一部から注目された早熟の異才を知るには、格好のものであると思う。 個人的には、けいせい出版から出た『金色の花嫁』が最も印象に残っているのだが。 とりあえず本書の「1巻を試し読み」をクリックしてもらいたい。 表紙画面から1ページ進むと、モノクロの総扉が顕れる。 寝台に身を横たえた全裸の少年の絵。 この絵にこそ、漫画家・宮西計三の異能が凝縮されていると信じる。 これに感応(=官能)するなら、ぜひ漫画へと進んでいただきたい。 ちなみにこのイラストは、上記『金色の花嫁』所収の「リアリティ」という作品の一部だと記憶する。自分は、この掌編が宮西作品のフェイバリットなのです。 すごい絵だ。 今見ても、心が震える。 名前の印象が近いせいか、宮西計三のことを考えると、いつも宮谷一彦を思い出してしまう。 一応「一時代を築いた」宮谷のマチズモとは、アンダーグラウンドに身を潜め続けた宮西のハイリー・センシティブな資質は随分と異なるのだが、それでも、漫画史の表舞台からこぼれ落ちた「幻の漫画家」として、このふたつの異能は似通ったところがあると感じているのだ。