キャプテン
4世代にわたる大長編野球マンガ!!
キャプテン ちばあきお
酒チャビン
酒チャビン
表紙のとおり、野球マンガです。特徴としては、墨谷二中の野球部のキャプテンが4代にわたって主人公をつとめる、リレー形式のマンガという点です。 谷口キャップ→丸井キャップ→五十嵐キャップ→近藤キャップ マンガは主人公のキャラクターが大事と思いますが、4者4様なので、その都度結構作風・校風が変化します。初代の谷口キャップは、素質はそこまででもないと思いますが、とにかく努力の人で、読む者に勇気を与えてくれます。谷口キャップ時代の面白さに文句をつける人はいないと思います。 わたしが次に好きなのは、近藤キャップ時代です。丸井&五十嵐の時代にも、近藤キャップは登場してましたが、そのときはいけすかないキャラ設定で、正直好きになれず、五十嵐キャップの次のキャプテンが近藤キャップに決まったときは、「これでこのマンガも終わったな」と思いました。 ですが、近藤キャップはキャプテンになってからものすごく変わりました(変わりきれずに退場になったりもしてしまうのですが・・)。それまでの墨二は、ものすごい練習量で、言い方は悪いですが、とにかくシゴきにシゴきまくって欠点を修正し、チーム力をアップさせるやり方を採っていたのですが、近藤キャップに変わり、皆の長所をうまぁく引き立たせて、野球を楽いと思いながら前向きに頑張れるように導くスタイルに変化します。練習量は激減しますが、逆に成果は落ちてなくて、下級生たちの実力も選抜大会出場校の選手と比べても遜色のないほどに成長していきます。 どちらが良いとかは一概には言えませんが、素質はありながらも1年のときから先輩たちにバカだの何だの言われて怒られ続けてきた近藤キャップだからこそ、できない人・怒られる側の気持ちがわかり、その人達の実力を引き出すことができるんだなと思って感心して読みました。最終盤で近藤キャップがお父さんと相談して作った練習計画ノートが出てきたときは感動で咽び泣きました。 丸井と五十嵐の時代は、わたしは読んでてダレてしまいました。正直読破を諦めようかとも思いましたが、最後近藤キャップの活躍が見れて、がまんして読んで本当によかったです。 丸井も合宿の掃除や炊事を買って出たり、悪いやつではないのはわかるのですが、正直でしゃばりすぎだと思います。基本いいやつだとは思いますが、出てくる度にがっかりしてました。タイムとかも取りすぎです。 谷口キャップと近藤キャップのところだけなら★5でいいと思います。
バトルスタディーズ
若人のゆめ 羽曳野の 聖丘清く 育みて
バトルスタディーズ なきぼくろ
酒チャビン
酒チャビン
名門・PL学園高校野球部出身の方によるPL学園マンガです! 実はわたし、あろうことかメルカリ等でPL学園の帽子やTシャツを買ったことがあるほどのPL学園ファンで、昨今活況を呈しているユーチューブ界隈のPLものはほぼ全て拝見しているのですが、その中で面白おかしく触れられていたことがそのままマンガになっております!!面白か!!! YouTubeでは卒業生の方々が、当時のことを面白おかしく話されてますが、やってる当時は信じられないくらいの苦しみがあったと思います。それを乗り越えられたのはやはり甲子園優勝という目標に対する強い想いがあったからだと思いますし、そういうこの世の地獄的なところを一緒に潜り抜けてきた友達との固い絆は羨ましく、自分もかくありたいと願います。 訪れよ!困難! あとこれも大事だと思うのですが、PLの上下関係とかしきたりとかに注目が行きがちですが、肝心の野球パートもさすが名門PLでやられていた著者の方なので、かなり奥深い描写もあり、野球マンガとしてもかなりレベルが高いと思います。野球もうまくてマンガもうまいなんて、そんな方が世の中に爆誕し得るのですね。すごか!!
ROOKIES
燃やせ!ニコガクダマシイ!!
ROOKIES 森田まさのり
酒チャビン
酒チャビン
わたしはテレビ、というか動画全般があまり好きではないのですが、当時の同居人がどうしても見たがったため、こちらの作品のTVドラマ版を毎週見ていました。 あれ、なんか面白い・・・。それで手に取ってみた本作品のマンガ版!!小さい時に読んでいた「ろくでなしBLUES(ぶる〜ちゅ)」でお馴染みの森田先生による高校野球マンガ!!!最高クラスに面白すぎる!! 読んだ当時、マイベストマンガランキングの1位か2位か3位には入りました!全部スポ根ものですね!! 登場人物は基本いわゆるヤンキー系なのですが、悪いんだけれども、その代わりすごくピュアなんですよね。我が強い自己中心的なメンバーばかりでチームワークに一抹の不安を残しますが、ある試合であるメンバーがチームの勝利のため、自分に代打を出すことを承知する場面は、相鉄線の中で号泣しました。 公共交通機関内で号泣したのは人生で計4回あるのですが、そのうちの1回です。ちなみに相鉄線に乗ったのは人生でその1回(往復なので2回とも)だけなので、号泣乗車率が100%です。 今でも、どうしてもつらいなってとき、ニコガクのメンバーも頑張ってるんだから、と勇気をもらっています!!!
甲子園の空に笑え!
初めて「クワドラプル」という言葉を覚えた『銀のロマンティック…わはは』について
甲子園の空に笑え! 川原泉
兎来栄寿
兎来栄寿
北京の冬季五輪では、羽生結弦選手が挑戦した前人未到のクワドラプルアクセルが大きな話題になりました。 私が「クワドラプル」という言葉を知ったのは、川原泉さんの『銀のロマンティック…わはは』でした。 川原泉ファンの間でも屈指の名作とされており、花とゆめコミックス版では単巻で発売されていたのですが、電子化されているのは文庫版『甲子園の空に笑え!』の中に収録されているものだけです。『川原泉傑作集 ワタシの川原泉』というシリーズの3巻にも収録されていますが、こちらも紙版書籍のみとなっており、電書派の方からは非常に見付かりにくくなっていると思うので、これを機に紹介しておきます (『甲子園の空に笑え』自体や「ゲートボール殺人事件」も面白いのですが、そちらは別で非常に熱いクチコミが書かれていますのでそちらをご参照ください)。 本作は、元々スピードスケートの選手だったものの競技中に怪我をしてしまいフィギュアに転向することになった影浦忍と、父親が世界的な天才バレエダンサーでありながら母から教わったスケートの方が好きで初のジャンプでトリプルアクセルを飛べてしまう才能を持つ由良更紗の二人がペアを組み、ペアスケートという道で戦っていく物語です。 この作品が書かれた1986年には、まだ公式戦でクワドラプルを成功させた選手は現れていませんでした。それから2年後、カナダのカート・ブラウニング選手が1988年の世界選手権で初めて4回転トウループを成功させることとなります。伊藤みどりさんがトリプルアクセルを決めて世界を沸かせて本格的なスケートブームが日本に訪れるのもその後の時期です。川原さんがフィギュアスケートを題材として選び、(「アーティスティック・インプレッション」など現在では採用されていない基準ですが) ルールの解らない読者にも懇切丁寧な解説を挟みながら、クワドラプルに挑戦していく様を時代を少し先取りして描いたのは流石の慧眼と言うべきでしょう。 本作のみならず川原泉作品に通底する特徴としてシリアスとギャグのバランスの良さが挙げらます。中でも、この作品は特に抜群です。時にメインキャラクターが酷い境遇であったり、理不尽が襲い掛かったりするのですが、抜け感のすごい絵柄によって悲しみが緩和されながらも心の奥底にはしっかりと届く作りとなっています。シリアスな絵柄と混ざり合い、しかし決めのようなシーンでも絵が抜けているところはあり、それでいて深い感動を与えられる……。こんなにも軽やかでありながら沁みるマンガを描ける人はそうそういません。「川原節」と言うべき、独特の読み味を実現しています。 元々はB6サイズ1冊に収まるお話ですが、その分テンポも良く充実感も大きく、何度も何度も読み返したくなる名作です。 時代は移り変わり、とうとうクワドラプルアクセルを現実に行う選手が現れたことに目を細めながら、クワドラプルという単語を聞くといつもこの作品の「ある見開き」と、最後の二人の表情を思い出さずにはいられないのです。