今日のさんぽんた

中毒性高い「散歩」劇

今日のさんぽんた 田岡りき
六文銭
六文銭

『吾輩の部屋である』が謎に好きだった私。 その著者の新作ということで手にとったが、これも最高だった。 そもそも『吾輩の部屋である』が、基本的主人公1人が悶々としながら独り言している会話劇?(会話じゃないが)が面白かったのだが、 本作も、基本フォーマットは同じで、犬と散歩しながら一人で話している構図。 それもたわいもない、自販機がどうのとか、この道は通ったの通らないだの、受験勉強がどうのとか、ホントにたわいもない話を延々とする。 それに犬のポン太がモノローグでツッコむ感じ。 たったそれだけのことなのに、すごい中毒性がある。 1話が短くて物足りなく感じるのも理由の1つだろうが、それ以上に著者の日常にあるちょっとした疑問などの着眼点が面白いからだと思う。 ガードレールのつなぎ目のルールとか、この本読まなかったら一生知らなかったと思う。 主人公・りえ子もちょっと残念というか、イタイというか、そこに加えてコミュ障なところもいい。 それに、ポン太が冷静にかつ鋭くツッコむの良い感じです。 時系列がバラバラで、各話いろんな時代のを断片的に描く形式なので、どこかの話とつながっているのも、また楽しいです。 まだ3巻ですが、謎の中毒性があって3回くらい通して読んでしまいました。

徘徊女子

観光は観光客にまかせて歩きましょう

徘徊女子 やんむら
野愛
野愛

先週のおすすめランキングを見て気になったので読んでみました。 こういう「ただ〇〇するだけ」の漫画は大体面白いと相場が決まっているので(当社比)。 やっぱり、面白かったです。 まず主人公の人間性が好きです。 タイトスカートを着こなすそれなりに美人なお姉さん。 「それなりに」って言われてイラっとしちゃうのに当たり障りなく対応するのがとてもいい。人と関わるのがめんどいから善人として生きてる人だ、というのが1ページで読みとれます。言い訳みたいに薄っすら恋をしてるのも解像度が高いです。 そして日々のストレスを癒やすべくひたすら徘徊します。 グルメスポットやら大自然やら目的があるわけではなく、石像や古い家を見ながら思考を巡らしひたすら歩きます。 「軽い城下町」とか「スパッとハウス」なんてキラーワードも次々生まれます。 何も考えずゆるゆる〜ではなく、目についたものを考察し分析し頭を回転させながらの徘徊、めちゃくちゃ楽しそうです。 「癒される」ではなく「癒える」なのも能動的な感じがしてよいですね。 癒されるのを待ってるだけじゃつまらない、自分から癒えに行きましょう。歩きましょう。

徘徊女子

これ大好き!!!ダイヤの原石すぎる街歩き漫画 #1巻応援

徘徊女子 やんむら
天沢聖司
天沢聖司

新刊ページで見つけて値段見てみたら220円だったので買ってみました(※各巻約20ページ)。そしたらメッッッチャいいじゃないですかこれ…!!すごく好きなやつでした! 正直本編を読む前は 「何でもない街を精細に描き込み、タイトスカートのOLさんがブラブラ徘徊する、マッタリゆるゆるの癒し系お話です。私の好きなものを詰め込みました。」 というあらすじで、よくある可愛い女の子が何もしない日常漫画かな…とあまり好みじゃなさそうだなと全然期待していなかったのですが、読んでビックリ! よつばと!のような緻密な背景! なんてことない街並みを1人で内心味わう孤独のグルメのようなモノローグ! なんと中身はブラタモリでした。最高〜〜!! https://twitter.com/yanmura/status/1186292824972521477?s=20 もっと言うと、「ブラタモリみたいにマニアックな視点で街歩きをしつつ、そこからアカデミックな部分を抜いて、街並みを眺めて自分が『いい…!』と趣を感じる心を大事にするお散歩」という感じ。 自分もこれよくやるので仲間がいる〜!! と読んでいて嬉しくなってしまいました。 これ絶対鉄筋入ってないだろみたいなブロック塀とか、玄関と公道がゼロ距離で家の壁に沿って植木鉢並べてる平屋とか大好きで、街中で見つけると「うわ〜、いい…!」って見ちゃうんですよね。 シーズン1の主人公女子アナ・早乙女さんの萌えは、早乙女さんが「スパッとハウス」と呼ぶ元長屋をぶった切って、一部だけ駐車場にしたりリノベーションした建物。 これ今度散歩するとき絶対探しちゃう…! 何よりこの漫画に共感したのが、早乙女さんがスパッとハウスの写真をSNSに上げないところ。 決して映えないし万人には理解されない風景でも、自分は確かにそこに趣を感じたから撮った写真。自分が好きで「いい」と思ってるから、他人からの「いいね」は別にいらないんですよね。 4巻からはシーズン2となり、主人公は親が再婚して高校生の妹ができたサラリーマンの来人に。 いきなり出来た女子高生の妹・美里という存在に戸惑いながらも、歩くのが好きだという美里に付いて行き、自分が「なにも見るものがない」と思っている地元・尾張瀬戸を美里の視点で見て回る。 この2人の距離感がすっっごくいい…! こういう義理の兄妹ものっていきなりゼロ距離でベタベタするエッチなJKが出てきがちですが、こちらはあくまで現実的な壁のある距離感。 特に来人のJK相手にキョドるわけでもなく、「あのお邪魔じゃなければついていってもいいですか?」大人に接するのと同じようにとても丁寧な言葉遣いで接しているところが素敵でした。 2人散歩の続きが早く読みたい! こちらの作品は漫画家の背景アシスタントをしているというやんむら先生の同人作品のようなのですが、大手出版社で連載始めればメチャクチャ人気出ると思います…! 月スピとかモーツーとかに載っててほしい。 というか本当に背景がうますぎる…これ写真加工じゃなくて描いてるんですよね? すごすぎる…。 あっという間にファンになりぜひ応援したいので全然1巻出たばかりじゃないんですけどマンバの「#1巻応援」タグで応援させてください。 いい漫画に出会えてよかった〜!

ちづかマップ

古地図とちづかの広がる世界

ちづかマップ 衿沢世衣子
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

『講談社無印版』の続編がこちら『小学館版全三巻』。古地図を愛するちづかは、祖父や友人に触発されて、東京+αを歩き、その土地の記憶と共に、色々な世界を知ります。 若干、講談社版のちづかより積極的かな?彼女独特の『面白がる』能力で、どんどん新しいものを吸収するようになります。 美大の先輩、元気な犬、古典芸能+甘味好き同級生、相撲好きの親友、イケメンスイーツ同級生、天文台好き小学生……彼らの専門性にちづかの提示する土地の記憶を掛け合わせると、互いにとっての新発見が生まれます。 特に複数回登場する従姉妹のりんちゃんの、小学生離れした勉強量と、ちづかの地形感覚が合わさると、そこには古の風景が広がり、心踊ります。 一方、隣人とのドライブのナビでは、地図作りとリサーチで徹夜した結果、失敗してしまったりもします。 そういった経験の集大成として、ちづかが後輩の為に、来日ミュージシャンの東京観光を特定・再現する時……あれ、これって『尋ネ人探偵』じゃん!となるのです。 講談社版で一度手放した試みが、復活する驚き! ここに至るまでのちづかの積み重ねを、様々な東京+琵琶湖、高野山、坂越(兵庫)の発見と共に、楽しみたいところです。

ちづかマップ

ちづかと古地図と東京の今昔

ちづかマップ 衿沢世衣子
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

東京を散歩する女子高生漫画『ちづかマップ』には版型の違う二つのバージョンがあります。こちらで紹介する、講談社の無印版が最初に描かれ、小学館から出た全三巻は、その続きです。 講談社版は連載当初『尋ネ人探偵』という題名だったそうで、全5話中3話は、探偵っぽく探し人・物をしています。 ちづかは大好きな古地図片手に、依頼者の微かな思い出から土地の来歴を紐解き、探し物に辿り着く……とカッコよく書く程、ちづかは積極的ではありません(1話以外は)。 ただ、ちづかは『面白がる』能力が高く、どんな所でも何かを発見し、夢中になります。 従姉妹の勉強熱心な小学生・りんちゃんと共に浅草の過去と未来を空想し、同級生の音塚君に誘われて新旧の「書体」に興奮し、連れて来られた京都で幼馴染みの三四郎と「御朱印」集めを競う……そんなちづかの柔軟な頭脳は、「道を見つけ、辿り着く」工夫の楽しさに満ちていて、ワクワクさせられます。 主体性に欠けるちづかが、古地図を起点に次第に面白い事を見つけ、積み上げていく道程の「始まり」が、この『講談社無印版』なのです。 三四郎、音塚君、りんちゃんは、引き続き小学館版にも登場します。小学館版はキャラの嗜好から行動目的が設定される事が多いので、彼らの背景を知る為に、講談社無印版を読んでおくと楽しめると思います(特にりんちゃん!)