あのエロい映画なんだっけ?

エロという無限の海の広さと深さ #1巻応援

あのエロい映画なんだっけ? 鈴木健也
兎来栄寿
兎来栄寿

『おしえて! ギャル子ちゃん』の鈴木健也さんによる傑作短編です。 「映画の中のエロ」というテーマを軸に、何の映画だったかは覚えていないものの断片的なキーワードを入力することでその映画を推測して当ててくれるサイト、そしてそのユーザーを巡る物語となっています。 皆さんは、まだ無垢な子供のころにうっかり観てしまい強烈に胸に刻まれたシーンはあるでしょうか。私も映画の名前は解りませんが未就学児だったころに観たシーンが今でも脳裏に焼き付いています。マンガでも同様のことは起こりがちですよね。 「人によってエロいと感じるものは違う」 「そもそもエロいとは何か」 という深淵にも光が当てられていきます。 その結果、最初は胸の大きな女性が出てくる映画だけを登録するユーザー(おっぱいは大きければ大きいほどいいが貴賤はないという哲学の持ち主)や、顔も体も良い男が最高として上質な裸の男が出てくる映画ばかり登録する女子高生(自称:皇帝のような暮らし)など比較的メジャーな性癖の持ち主が登場しますが、女性に金玉が蹴られているシーンのある映画だけを選出する老女を始め段々とコアな性癖の持ち主が登場してきます。 そういった作品を観たことでそんな性癖になったのか、あるいは、元からあった性癖がそれをきっかけに掘り起こされたのか。鶏と卵のどちらが先かはわかりませんが……ともあれ世界に存在する多様性の趣深さを短い中でも感じられる作品です。 それに加えて最後には謎の感動もあり、ワンコインかつ短時間で読める短編としては高い満足度を得られます。

R15+じゃダメですか?

何故か卑猥な文字列に見えてしまうタイトル

R15+じゃダメですか? 岸谷轟 裏谷なぎ
さいろく
さいろく

R15+ってついてるせいで一回手に取るのをためらってしまい3巻が出るまで読まずにいたのを後悔したのです。。。 ビリー先生のシネマこんぷれっくす!が終わってしまってぽっかり空いていた穴をこんな形で埋めてくれる作品が出てくるとは。 そう、これは映画ファン感涙の映画紹介マンガ。 とはいえ私は映画ファンとしてはニワカなので紹介される作品(毎回主題が1作品ずつあってコミカルな絵柄で紹介されている)は半分もわからないのだけど、たまに挟まれている小ネタは普通に「いいね」したくなる。 (シネマこんぷれっくす!は小ネタメインで終始イジりまくるタイプなのでそれはそれで最高なので是非どうぞ) 本作のいいところはただの映画紹介マンガなわけじゃなく、ちゃんと映研が部活動している高校生活が描かれているところにもある。ストーリーも序盤は割と強引だったが、急にそれっぽいじゃん!っていう話が出てきたり。 それに伴い主人公のあもーちゃん&冬峰くんらが、ビジュアルだけで誤魔化したりせず一人一人しっかり魅力的に描かれていくのでヒジョーに可愛い作品になっている。 かなこ先輩が一番人気ありそうな気がするけど冬峰くんが一番モテそうでもある!えなちゃんについてはネタバレなしで語れないのでスルー! 4巻はなんと主人公のあもーちゃんがほとんど出てこない!もしや主人公は冬峰くんだったのか…! …つまり、続きを待っています!

ニャリウッド!

創作で最も大事なのは◯◯と◯◯だ! #1巻応援

ニャリウッド! 杉谷庄吾(プロダクション・グッドブック)
兎来栄寿
兎来栄寿

映画化され、その映画がテレビ放映もされて『映画大好きポンポさん』の素晴らしさを知る人がますます増えていることが非常に嬉しい今日この頃。 「ポンポさんの新作が来ったぞー!」 というわけで、本当に今度こそ新作を出すつもりはなかったそうなのですが諸般の事情により描かれたという新作にして新シリーズ『ニャリウッド!』が発売されました。巻数表記もあり、今後も続いていきそうなのは非常に嬉しいです。 読む順番に関しては、作者の杉谷さんが直々に解説されているのでシリーズ初読の方は参考にしてください。 https://twitter.com/pompothecinema/status/1630703345680920576?s=46&t=o8eGKefj56WcuC_a_1RGww 『ニャリウッド!』1巻のサブタイトルは「映画大好きマズルカちゃん」ということで、前作(『映画大好きポンポさん』3巻)の最後で「映画撮るのって楽しすぎる……」と、自分でカメラも撮れる映画監督になりたいと志したマズルカを主軸にした物語となっています。 『ポンポさん』シリーズは常に最高で大好きなのですが、やはりセリフが良いです。そして、それがそのままキャラの魅力にも直結しています。 ″自分に自信が無い奴は心に余裕が無いから 失敗する事が何よりも怖い 他人にカッコ悪い姿を見られるのが何より怖い だから何も行動を起こさない 何もしなけりゃ何も失敗しねえからな そういう奴から見れば夢に向かって 突き進もうとするオメーの姿は 我が事だという自覚の有る無しにかかわらず 臆病で守りに入った自分の生き方を 真正面から糾弾されているようで腹が立つ… というより怖いんだな だから自分の不安を打ち消すために 上からの立場でオメーの夢を全否定するんだ 無意識のうちに脊髄反射でオートマチックに 人の夢をバカにするようなつまんねえ連中は 全ての責任は何もかも絶対他人の中にあると思い込まないと 自分の人生が格好悪い失敗作だと 自分で気付いちまうからな″ といった本質を突いたものや、 ″他者の介在しない世界で 自らが定めた目標に向けて自らを研鑽する それこそが「本物の自由」よ 本能のままに生きる事が出来ない動物と違って 人間は…人間だけが自由に…自らの意志によって 自らの命の価値を高めることができるのよ″ という魂を熱く燃やしてくれる名言が本作でもガンガン出てきて心に響き渡ります。読者に響くセリフは、当然作品の中のキャラクターたちにも響いて気持ちよく駆動してくれます。 マズルカが初めて取り組む脚本執筆という作業に悪戦苦闘し、もがき苦しみながらも少しずつ前へ進んでいく姿、ビビが真っ直ぐな気持ちで愚直に努力して成長していく王道感も熱いです。そして、遂に到る「創作で最も大事なのは◯◯と◯◯だ」という境地。そこで行われるのは物語を□□ということ。痺れました。その詳しい内容は、ぜひ読んで確かめてみてください。 作中でさまざまな創作論が出てくるのも健在。下手な創作論の本を読むよりも、『ポンポさん』シリーズを読破する方がよほど勉強になりモチベーションも湧く気がします。私も今温めている脚本を気合いを入れて書き上げたくなりました。 そして、書き上げた暁にはウインナー入りチーズグラタンを食べたいと思います。

シネマこんぷれっくす!

花さん可愛いマンガかと思ったら…真のヒロインはこの中にいる!

シネマこんぷれっくす! ビリー
さいろく
さいろく

一般的な映画知識に満たないと思う私でも年の功でなんとか半分弱わかるぐらいしかわからないし、もしひっそりカメオ出演的に埋め込まれてるネタがあったとしたら全然気づいてもないが…映画が好きとか詳しいとかはあったほうが良いんだろうけどなくても全然読みやすくてバカで好きなので好き。 スコスコのスコだ!この野郎!(4巻参照) 展開とかノリが同人誌のそれっぽいところがあるけどしっかり商業誌のレベルなので大丈夫だ、問題ない。 ちなみにゲームネタは全然出てこないので安心してもらいたい。 黒澤さんと宮さんと花さんは主人公(熱川くん)の先輩たちにあたるのだがいずれも引けを取らないおかしなキャラだし、作画的にどのキャラも死ぬほどスレンダーなのだが大体出るとこ出てるご都合的な体型でとても可愛いし、授業中のシーンはほとんどないけど……授業中のシーンばかりの学生マンガなんか見たことないな? あと、こいつめ!みたいに学生生活が羨ましくも何故かあんまりならない。少女漫画だとなることあるのに…「シネマこんぷれっくす!」でそう思えないのはきっと現実離れしすぎてるからなんだろう。でもすごく相関図も良いし4巻では特に小津ちゃんが可愛い。 語彙力がない私ですがオススメしたいという熱意が届くと嬉しい。

木根さんの1人でキネマ

映画が知れて、観たくなる漫画

木根さんの1人でキネマ アサイ
六文銭
六文銭

小生、映画が苦手なんですよね。 理由は簡単で、自分のペースで進められないから。 自分のほうが早いとか遅いではなく、自分のテンポと関係なく進むのが苦手なんですよね。 ん、今の何だ?と、少しでも気になるところがでてくると、先の展開が頭に入ってこないんですよ。 家でなら巻き戻せますが、映画館なんて、ずっと悶々としてしまいます。 本作は、そんな映画に取り憑かれた映画オタクの妙齢の女性が主人公。 映画をみては、その感想をブログにアップし、映画を語り合いたいが自分の価値観を曲げられないのでボッチで楽しむという内容。 毎回、何らかの映画(多くは誰もが知っているようなヒット映画)を題材にして、内容や感想、制作の背景、はてはそこから派生する作品まで紹介してくれるので、みてなくても映画を詳しくなれる感じがします。 また、熱量高く何が面白いのかを説明してくれるので、自分のように映画が苦手な人間でも、ついみたくなってしまう勢いがあります。 動画サービスとかによくある「あなたにおすすめ」といった、作品を並べただけのレコメンド機能がありますが、よっぽど人によってテンション高く紹介されたほうが心が動くなぁと思います。 また 映画は観賞ではなく体験だ とか 人には人の「面白くない」を変えることはできない など、エンタメ系関連の価値観を表した金言が多くて、そこもまた面白いんですよね。 それにしても、木根さん、というか作者の映画の知識量にはうなりますね。8巻までですが、凄まじい量の映画を紹介してくれます。 映画をよくみる人はもちろん、自分のようにあまりみないけど、なんか面白い映画ないかなと思ったときに、参考になる漫画かと思います。

カツシン~さみしがりやの天才~

とにかくカツシン話はやたらと面白い!

カツシン~さみしがりやの天才~ 吉本浩二
ひさぴよ
ひさぴよ

『ブラック・ジャック創作秘話~手塚治虫の仕事場から~』を始めとした吉本浩二ノンフィクション作品であり、他の作品郡と同様、関係者の証言を元に構成された漫画。座頭市の誕生エピソードに始まり、バルテュス、篠山紀信との交流、原田美枝子、渡辺謙、松田優作などの俳優としての顔、そして中村玉緒とその家族がそれぞれの勝新太郎の思い出を語る。 カツシンの大ファンである吉本浩二氏の昭和タッチな絵柄が、勝新太郎の世界では見事にマッチしています。カツシンが好きだからこそあの作風になったのではないかとすら思えますね。あまり知られていない勝新太郎の「さみしがりや」な部分は、この漫画でしか味わえない貴重な一面ではないでしょうか。寝ても覚めても映画と芝居が大好きで、作品創りに凝りすぎたあまり制作費を膨大に使ってしまい、会社を倒産させて多額の負債を作ってしまうあたりは手塚治虫と似た所があります(苦笑)。撮影事故、大麻パンツ事件なども僅かですが触れられています。この作品だけでは語りきれないほどのエピソードがあると思いますが、晩年までの出来事が全2巻でまとまっているので読みやすい長さかと。映画好きの方にもおすすめです。