バクマン。 カラー版

賛否両論だと思うけど名作には違いない

バクマン。 カラー版 小畑健 大場つぐみ
名無し

ジャンプ漫画の流れを変えてしまった漫画かもしれない。 昔からの少年漫画とは劣等感をもつ少年が何かがきっかけで成し遂げたい目標をもち、それに向かって突き進む様が描かれることで読者は勇気付けられる、そんなイメージが強い。 漫画の漫画、仕事漫画が出てきた時点で夢、希望がすごく現実と近くなる。 この漫画を境にどこかファンタジーの想像もつかないような世界を書き表す漫画から現代の趣味嗜好に迎合した仕事漫画、恋愛漫画が多くなったように感じる。 それはさておき、この漫画が面白いことには変わらない。 むしろ、漫画における「嘘」の部分がリアルに近いことで読みやすい少年漫画の文体で、知らない現実を垣間見ることができる。 漫画家の厳しい世界をエンタメに昇華すると言う点ではありえないだろ〜と言う設定もしばしば。 ジャンプのトップにすぐに立てるところと、おじさんが漫画家で設備が全て整っていると言うアドバンテージがあるところ。 そういう違和感も多分、編集とか業界部分がリアルなせいかなと思う。 飽きさせない漫画ではある。 恋愛部分も含め、人間関係も含め、リアルな部分と驚きと知識、そして表現力で殴ってくる(ぐらい情報量が多い)。 大畑健の絵が好きな人は読むし、漫画を描いている人漫画が好きな人は読むしかない。 アンケート重視の仕組みが崩れつつある今は、この漫画ではもう違ってきているところもあるのかもしれない。いい時に連載して完結した漫画だと思う。

ガンバ! Fly high

3馬鹿トリオこそ真の主人公

ガンバ! Fly high 菊田洋之 森末慎二
名無し

スポーツで汗を流す青春って妬ましいですね。僕が一人きりの部屋で不健康な汗をかいていたとき、グランドや体育館で健康的な汗をかいていた彼らは、きっと美人マネージャーと幸せな関係になっていったのでしょう。僕は2次元な彼女と不適切な関係になっていたというのに……。ああ妬ましい。今回紹介する『ガンバ! Fly high』も“スポーツ”と“ねたみ”というキーワードは欠かせません。「オリンピックで金メダルをとりたい」と、逆立ちもできない運動音痴の藤巻駿が飛び込んだのは、県最弱の平成学園体操部。そこには、一芸だけは秀でた三馬鹿トリオの先輩、内田、真田、東がいた。藤巻のひたむきな姿に3人も影響されて――。そんなプロローグから始まる『ガンバ~』の主人公・藤巻駿は典型的な少年漫画の主人公です。はじめはどんくさいけれど、眠った大きな才能をもち、努力を厭わない。あっと言う間に日本代表になり、世界初のオリジナル技を発明するまでになります。しかしこうなると、なんとも感情移入できなっなくなってしまいます。「努力とかいいながらも、結局“天才”の物語かよ」と。ああ妬ましい。しかし、『ガンバ~』はひとあじ違う。後半になると、完璧超人となった藤巻から、藤巻に追いこされてしまった3馬鹿トリオにフォーカスが移るのです。身近にいる天才・藤巻が世界の舞台で活躍するのをみて、感動しながらも焦りを感じた内田と真田は、自分なりの努力を重ねます。しかし、どうしても、どうしても、藤巻の背に追いつくことができない。藤巻に逆立ちを教えた内田は言います。 「俺はあいつに負けたくねえのよ! 体操の技術がどうとか得点がどうとかじゃなく、一生懸命ガンバるってことにおいて!」 決定的に実力の違う天才の背中を見ながらも、そんな気持ちをストレートに吐きだし踏ん張り続ける3馬鹿トリオこそ、読者が感情移入に足る、真の主人公だと思えてならないのです。これは、ひとつの【凡人萌え】マンガの極みと言えるではないでしょうか。そうジメジメした部屋の中で思うのです。

くまみこ

一人と一匹のとてつもなくカワイイものを愛でる

くまみこ 吉元ますめ
名無し

JC巫女とかね、もふもふした熊とかね、私の大好物がメインになった作品が『くまみこ』でございますよ。まいった!可愛すぎてね、何度も何度も何度も読み返しては、鳥取砂丘のように乾いた私の心に、じょうろで水をまいて潤いを感じさせてくれるような、そんな作品です。  舞台は東北地方のどこかにある熊出村。はっきりいって限界集落な熊出村には、中学生巫女の雨宿まちという少女と、人語を解する、半ば神の使いとして崇められている熊のナツがいます。  まちは都会に憧れていますが、長い田舎暮らしのため、一般常識はよくわかっていません。その点、クマのナツはブルーライトカットメガネをかけ、Nexusを操り、なぜか現代社会にとても詳しかったりします。  可愛らしいまちと、わりとリアルよりな造形ながらもふもふとした毛並みとつぶらな目が魅力的なナツのゆるい日常が限界集落を舞台に繰り広げられます。  都会に出たいというまちに、ナツはテストとしてユニクロでヒートテックを買いに行かせたり、ヴィレッジヴァンガードでDVDを買いにいかせたり……、そのどれもが、まちにとってはとてつもなく難しいことなで、いつも慌てふためいてしまうまちが非常にカワイイのです。  このまま延々と、まちの可愛らしさとナツのもふもふを語っていてもいいのですが、ちょっと待って欲しい。  はたして、この熊出村の山奥度合いがどのくらいかなのでしょうか。国道沿いのユニクロまで自転車で40分、ヴィレッジヴァンガードが入っているイオンも、国道沿いにあるようです。当然、ファッションセンターしまむらもあります。私個人が田舎の尺度にしておりますコメリ(ドライブしているととんでもない山奥にあってビックリすることがあります)がどのくらいの距離にあるのかが非常に気になりますが、数値的にみれば、意外と都会…な気がしなくもありません。  しかし、描かれている村の雰囲気や田んぼや森の様子は、ドライブで道に迷った時に、「助けがこないかもしれない」と不安に感じるような日本のど田舎の風景そのままです。都会に生まれ育った人間もなぜか感じる郷愁といっしょに、一人と一匹のとてつもなくカワイイものを愛でるのが、この『くまみこ』なのです。