ひめちゃんは重い女

面倒な人に優しい作品 #1巻応援

ひめちゃんは重い女 花束葬式
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

『お父さんは心配性』なんて作品もありましたが、心配性・考え過ぎ・嫉妬深い人はマンガにおいては極端なコメディにされるかライバルとして冷遇されるか……あまり自分事として受け入れられない。 なんで?みんなだって、メンドクサイ人でしょ?(暴論) ★★★★★ 大学生のひめちゃんは、思考が後ろ向きで、嫉妬深い。カッコいい彼女がいて幸せそうなのに、とにかく悪い事ばかり考えて落ち込んでいる。 ひめちゃんを不安にさせない様、気遣いの出来る彼女はパーフェクト。でもだからといって、ひめちゃんが不安にならないという事は無いんだよなぁ……不安の種を見つけては堕ちて行く思考回路は同じ「重い」人間として、とても分かる。 そんなひめちゃんを普段から支えるのは、ゲイの後輩。彼とひめちゃんの対話が、とにかく面白い。 どちらかが、普通は引かれるような不安や嫉妬を吐露すると、「わかるわー」と返ってくる。その遣り取りを見ていると、「それ重いって」と突っ込む自分がどれだけ一般論に迎合していたかに気付く。そして二人の「重さ」が自分事として、沁みるように理解出来る。 基本百合マンガでありながら、不安症の二人の相互理解にも心を持っていかれる。最高な彼女がいるひめちゃんには、酷い男に引っ掛かり続ける後輩に優しくしてあげてよ……と思いました。

思えば遠くにオブスクラ【電子単行本】

ベルリン・暗い部屋から外へ #完結応援

思えば遠くにオブスクラ 靴下ぬぎ子
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

現実世界の冒険譚は、非現実的ファンタジーに比べて地味でカタルシスに欠ける反面、自分でも同じ事ができそうな、地に足のついた希望があって、私は現実世界を同じ様に歩いてみたくなる。『思えば遠くにオブスクラ』も、そんなちょっとだけ「うずっ」とする感覚が味わえる作品です。 本作は、異国の地での生活と仕事を通じて、一人の女性の「自信の無さ」がほぐされてゆく物語です。 主人公は勢いで越して来たベルリンで、同居人に背を押され、何の準備もなく行き当たりばったりの生活をし、存外いい加減なベルリンに染まっていく。 ドイツの食を堪能しながら時になんちゃって和食に挑戦したり、気候に戸惑ったりワークライフバランスを学んだりするうちに、主人公の顔が緩んでくるのが羨ましくなります。 仕事では一眼レフカメラの「レンジファインダー機」の扱いが面白い。視覚表現者として優秀な主人公ですが、とある理由で自己と周囲の視覚認識にズレがあるらしい事にわだかまる。それ故に正確さ・厳密さを求めてきた彼女が、この曖昧でままならない機材を託されての変化が、何とも興味深いのです。 頭の中の「暗い部屋」で立ち止まっている人が、外に出て(外国に行く事も含め)少しだけ離れて自分を見て、知り、楽になる。そんな地味でも大切な変化の物語は、どんな大袈裟な物語よりも私にとって切実かつ爽快なものでした。 ベルリンはじめヨーロッパの光景は美しく、食や人々の描写等、エッセイ的表現が楽しい。一コマも読み逃すのが勿体ない、何度でも読み返したい作品でもあります。