東京ヒゴロ

松本大洋ここにきての最高傑作!?

東京ヒゴロ 松本大洋
TKD@マンガの虫
TKD@マンガの虫

『鉄コン筋クリート』やスポーツ漫画の大傑作『ピンポン』を送り出した 漫画界の生きるレジェンド松本大洋待望の最新作 物語は主人公塩沢が30年務めた出版社を退職し漫画編集者として引退したところから始まり、彼が辞めたことで起こる周りの担当作家や編集者達の変化を丁寧に描写していきます。 私が個人的に松本大洋作品前作で通底して素晴らしいと思う点は『人間の暗い部分弱い部分を逃げずに描写するところ』で、例えば大傑作『ピンポン』でも類稀な才能を持ちながら高い壁にぶつかり一度は卓球から逃げ出してしまうペコという場面で自尊心が打ち砕かれた人間の脆さをしっかりと描写しています。 もちろん今作でもそう言った要素が見事に描かれており 例えば、一度は大ヒットを生み出しながらも長い漫画家生活の中で情熱が擦り切れてしまったベテラン作家長作が様々な葛藤を抱えながらもう一度奮起して漫画に向き合う姿が情感たっぷりに描写されており、 私個人としては「もしかしたらそう言った描写に関してはこれまでの作品の中でも一番なんじゃ?」と思っています。 というのも、今作は漫画に関わる人々というおそらく松本先生から見て最も身近なところに生きる人々を書いているので、人間描写がこれまで以上に切実感とリアルさを持っているのではないかと思います。 ここからは読んだ人向けですが、長作が爆音で包まれるパチンコ屋の中で涙を流すシーンには思わずこちらも涙を流してしまいました。

GOAT HEAD

コロナへの怒りを原動力に

GOAT HEAD 安堂維子里
ナベテツ
ナベテツ

コロナという文字を目にしない日は恐らくないのではないかと思いますが、パンデミックが世界を覆うという百年に一度の出来事を迎え、我々の日常も変わってしまいました。 クリエイターの作品にもその影響は避けられないと思いますが、このタイトルは作者の安堂先生の思いが率直に込められているのではないかと思います。 コロナに対する憤りは、言挙げする必要も無いことと思います。愛する人が命を落としても、遺体と対面することが叶わない恐ろしい病。コロナをぶっ飛ばしたい、という思いは、誰にでもあるものだと思いますし、その思いを託している作品として、広く読まれて欲しいと願っています。 コロナ禍において作品を描く、その描き方はクリエイターにとっても千差万別だと思います。ビターなテイストを持ち込んで描く方もいるかと思いますし、憂鬱な日常を快刀乱麻を断つような描き方もあるかと思います。 文字通り、ウィルスをぶん殴るというアイディアでもってアクション活劇を描く、その辺りに安堂先生のユーモアの素晴らしさを感じますし、この憂鬱な日常を生きていく糧として、コロナが終息するその先まで、作品が続いて欲しいと願っています。