それってパクリじゃないですか? 新米知的財産部員のお仕事

知的財産について学べる物語 #1巻応援

それってパクリじゃないですか? 新米知的財産部員のお仕事 臼井ともみ U35 奥乃桜子
兎来栄寿
兎来栄寿

KONAMIがウマ娘を訴えたことが話題になっている昨今。 とりわけゲーム会社は非常に微に入り細に入り様々な特許を握っているので、様々な理由からやっていないだけでその気になればいくらでも訴訟はできると聞きます。ただ大きな会社ほどお互い様なところもあるので、任天堂とコロプラの時のようなあまりに酷いことがない限りはそこまで大きな訴訟には至らないケースが多い、という中で今回の件は久々に大きいのが来たなと思います。 個人的にはメタルギアシリーズやゴエモンシリーズなど好きだったこともありKONAMIに思う所は多々ありますが、法的にはKONAMIの所作は正当なもので後は専門家の判断を仰ぐことになるでしょう。 本作は、そんな知的財産の難しい扱いを描いた小説を原作とするコミカライズです。面白く、ためになる作品です。 知的財産部、通称「知財部」に主人公・藤崎が製品開発部から異動となり、弁理士の北脇と衝突しながらも「侵害予防調査」など今までとは異なる仕事に向き合っていく姿が描かれていきます。 第2話冒頭で描かれる、会社の人間の特許出願に対する腰の重さや古い認識は、現実にも多くの企業に存在するところでしょう。 白い恋人のパロディである面白い恋人はどういう立ち位置や解釈になるのか。 自分が描いたキャラクターの権利を他人に主張された時どうすれば良いのか。 契約書を読みこまずに一方的に被害者意識を持ってSNSで自社を叩くインフルエンサーにどう対処していくべきなのか。 現実にも類型がたくさんあるであろうケースを通して、合理性だけでは立ち行かない人間を相手にした時の難しい判断を迫られるビジネスの姿が描かれていきます。 マンガを担当する臼井ともみさんの絵の良さもあって、原作の面白さを減じることなくマンガとしての魅力を生み出しています。 楽しみも、学びもある良い作品です。

ハコイリクリエイト

デザイン仕事の色々が解る4コマ #1巻応援

ハコイリクリエイト 行町咄
兎来栄寿
兎来栄寿

広告制作会社のお仕事4コママンガです。筆者が現役で働きながら概ね実体験に基づいて描かれているということで内容がかなり細かいところまで描写されており、もしデザイン関係に興味がある方は読んでおくとかなり有用な知識がたくさん身に付きそうです。 ひげ、秀丸、隷書などフォントに関する部分はもとより、フォントによっては字と字の間のスペースにばらつきが出てしまうのを修正する「カーニング」という作業のやり方なども事細かに解説されます(なお、私にはその見栄えの悪さがまったく理解できないため、デザインや絵を描くような仕事はつくづく向いてないなと思います)。 お店ののぼりやスーパーのチラシがどのような作業工程で作られているのか、よく世間でデザイナーの方々が悩まされているという 「良い感じ! 良い感じだけどもう一声!」 のようなふわっとしたオーダーにどう応えていくのかなど、見ながら少し胃が重くなる展開もありつつ、知らない業界でありながらその成果物は日頃よく目にするものなので、大小のさまざまなネタになるほどなるほどと頷きながら楽しめました。 物語を盛り立てるのは、かわいい社員たち。 父親が大手印刷会社の会長というお嬢様でDTPオペレーターに配属されるハイル。 デザイナーで社畜体質のある凜々。 同じくデザイナーでダイエット中の環奈。 クリエイティブディレクターの時東。 関西弁のアートディレクター・華子。 同じく、アートディレクターの眼鏡っ子・恵梨。 仕事やそれ以外の日常風景を通して、彼女たちのキャラも少しずつ解ってきます。 とりあえず、凜々さんには少ししっかり寝て欲しいです。 なお、目次のデザインなども凝っていて好きです。

ドラゴンクエスト 4コママンガ劇場

第一巻の表紙だ!

ドラゴンクエスト 4コママンガ劇場 ゲームドラゴンクエストシリーズシナリオ エニックス出版局
ゆゆゆ
ゆゆゆ

第一巻だけ、巻数表示がないんですよね。 続くかは売れ行き次第だったんでしょうね。 たまたま本屋さんでドラクエが表紙の漫画を見つけて、買ってもらったのが、おそらく第ニ巻。 検索して、表紙をみて、心がときめいたからきっと、第二巻。 ゲーム画面では表現されない旅のシーンが描かれた、各巻の表紙イラストは、今見てもドキドキします。 なけなしのお小遣いで約1000円もする漫画はなかなか揃えられなかったので、第一巻表紙は表紙で印象に残っています。 たしか12巻までそろえました。 懐かしさのあまりウィキペディアを見たら ‘これらの中で「定番ネタ」として用いられたキャラクター造形や設定が、後に制作されたドラゴンクエストのメディアミックス作品やリメイク版、派生作品で逆輸入する形で公式設定になった例もある。『IV』で後に公式設定になった「クリフトはアリーナに片想いしている」「マーニャは酒豪である」などは、『4コママンガ劇場』の影響が見られる。’ とあったんですが、いやクリフトはファミコンのころからアリーナ大好きですよね? 「ひめに もしものことが あっては このクリフト…………。」 とあったもの。 え、このセリフは王への忠誠とも取れるんですか? ‥公式二次創作、半端ないな。 それから、楽屋裏の小話も好きでした。 風呂でタバコを吸って「屁が燃えた」という話は未だに忘れられません。 あれが大人とはこういうものだと知った、初めての経験かもしれません。 他の巻のイメージ画像として、Amazonのスクショを載せますね。 全巻表紙イラストを再び見たい方、メルカリが一番わかりやすいですよ。

すべっちゃいけない芸人ごはん

売れっ子芸人たちの酒食ライフのシズル感 #1巻応援

すべっちゃいけない芸人ごはん 鈴木マサカズ ヒデ
兎来栄寿
兎来栄寿

お金と時間に余裕がある芸能人に美食家が多いのは必然的ですが、その中でもとりわけ成功した芸人さんがたくさんの美味しいお店を知っているのことが多いのは、芸能人の中でも特に芸人さんは上下や横の繋がりが強く、そうした繋がりも含めた交友関係も広いことで多くの情報が集まってくるからでしょう。 何せ、ご飯に行くにしても後輩には侮られないような店や「流石!」と思われる店を知っていなければならない。先輩と行くとなれば更にハードルは上がり、相手もそれなりに良い所を知っているという前提の上でそれでも満足して喜んでもらえるように料理はもちろん雰囲気から接客まで良い店を選ばなければいけない。 「仮に舞台で滑っても……  食事では絶対に滑りたくない……」 という1コマ目から始まる本作は、ペナルティのヒデさんが1話ごとにさまざまな先輩後輩と多くの実在のお店にご飯にいったり、リモート飲みをしたりするお話です。 ココリコ・遠藤章造さん、品川庄司・庄司智春さん、銀シャリ・橋本直さん、とにかく明るい安村さん、馬場園梓さん、はんにゃ金田さん、チャド・マレーンさん、レギュラー・西川さん、ナインティナイン矢部さんなど、錚々たる有名芸人たちとの会食の様子は芸人らしく会話の端々でボケやツッコミが小気味よく出てきて笑わせてきます。また、他にも話の中でたくさんの芸人が登場するので、お笑い好きの人はより楽しめます。 ヒデさんが五反田出身ということで、都内のお店が中心ですがどれも行ってみたくなるような良いお店と料理ばかり。平和軒のレバニラや、春菊とチーズと青唐どうふのおでんなど、機会があれば行って食べて来たいです。 料理の描写がリアルでとても美味しそうな上に、最高の味わい方やメニューを知り尽くしているヒデさんたちがそれはもう美味しそうに食べるので、シズル感が異常です。夜中には絶対読んではいけません。 純粋なグルメマンガとしてだけでも高い完成度を誇る内容ですが、芸人に詳しい人は更にさまざまなポイントを楽しめる、しかも滑らないお店をたくさん知ることができる1冊で何度も美味しい作品です。 なお、作中でも描かれている通りこんな生活を満喫できるのは最上位の一握りの芸人だけで、売れない頃は月収25円でジュース1本買うのに5ヶ月かかるという厳しい世界です。私も特殊な人生なので、人一倍売れる前の芸人さんたちと交流してきたので肌身で解ります。だからこそ、売れればこんな生活ができるんだという憧れを持つ指針となるという意味でもこのように描かれることもある側面では大事なのではないかと思います。

透明なゆりかご 産婦人科医院看護師見習い日記

産める方の産婦人科個人医院のお話

透明なゆりかご 産婦人科医院看護師見習い日記 沖田×華
ゆゆゆ
ゆゆゆ

「コウノドリ」のように産科でのお仕事をテーマにした漫画。 こちらは個人病院で、産める方の産婦人科で、堕胎も取り扱っているそうで、街のお医者さんならでは、「コウノドリ」とは違った大変さが語られている。 そんな中で見習い看護師として働いていた、高校3年生×華ちゃんは、なかなか肝が座った子だと思う。 産婦人科って、赤ちゃんがぴょこぴょこホギャホギャしていて心あらわれる風景があるのは、健康な赤ちゃんがコットで寝ている新生児室くらいで。 病院へ行ってみると、婦人科も、産める産婦人科も、産めない産婦人科(妊娠後期は転院)も、どこも独特の緊張感が満ちている。 病院だけでなく患者側もピリピリしている。 不調を治したい人、おさえたい人、子供を産みたい人、産みたくない人、全部まとめてかかっているのだから、当然だと思う。 赤ちゃんはかわいいけれど、それだけじゃない。 出産は病気でも怪我でもないけど、死ぬかもしれない事象。 生殖のための臓器が絶妙なバランスで成り立っているものだから、ちょっとしたことで起こる不調。 残念ながら、すべて望まれている生ではないということ。 読んでいて、こんなお仕事を裏ではしていたんだなと思うと同時に、この中で働き続けられる医療従事者ってすごいなと思った。 沖田×華さんは「毎日やらかしています」の印象が強かったのですが、変わりました。