私と猫と二十歳の君と

"死んだはず"の親友との40年ぶりに過ごす日常 #1巻応援

私と猫と二十歳の君と あさひよひ
sogor25
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仕事を辞め、1人寂しく余生を送っていた60歳の男性・和賀鱗太郎は、唯一の家族である飼い猫が家の外に出ていくのを追いかけるうちにある神社に迷い込みます。 そこで彼は足を滑らせて境内にある池に落ちてしまうのですが、彼のことを助けたのは、40年前に死んだはずの鱗太郎のたった1人の親友・支倉紫陽(はせくら しょう)でした。 そんな導入から始まる第1話は読み切りとして非常に完成されていて(過去に同名の読み切りが発表されてますがそれとは別の世界線の物語のようです)、若くして亡くなってしまった紫陽に対する鱗太郎の思いや、そんな2人の40年の時と生死の境を超えた再会に胸を打たれる、そんな内容になっています。 そしてそんな第1話の最後にその後の物語へと繋がるキーワードが登場し、そのキーワードに関わる謎を紐解きながら、2人が40年ぶりに共に過ごす日常を描いていきます。 2人が過ごす奇跡のような時間はどんな些細な出来事もかけがえのないものに映る、読んでいると温かい気持ちになれる作品です。マンバではボーイズラブに分類されていますが、どんな人が読んでも心に刺さるような内容だと思います。 余談ですが個人的にはアジサイ(紫陽花)から花の字を取った「紫陽」を「しょう」と読ませるネーミングセンスはすごく好きです。 1巻まで読了

屍と花嫁

散りばめられた違和感が解消された時、深い愛の物語が見えてくる #1巻応援

屍と花嫁 赤河左岸
sogor25
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黄(ファン)家には兄の静(ジン)と弟の麗(リィ)という腹違いの兄弟がいました。 2人は次期当主の後継争いで対立しており、現当主である父の寵愛を受けていたリィは雹華(ヒョウカ)という女性と政略結婚をすることになるのですが、その婚礼の儀の最中、ヒョウカはジンの一派に毒を盛られてしまい、リィはジンのことをその場で殺害、一方のヒョウカはというと一命を取り留めたものの毒の影響で人前に出られない顔になってしまったとのこと。 そんな凄惨な事件が起こったあとのリィとヒョウカを描いた作品… なんですが、1話を読み進めていくうちにある違和感が顔を覗かせてきます。 「人前に晒すことができない顔になった」と作中で言われていたヒョウカですが、1話後半で描かれている"彼女"の姿は美しく描かれており、また、一見すると"彼女"が"男性"であるかのような描写も見られます。 そんなヒョウカに対してリィは至って自然に接しているのですが、ヒョウカの名前を覚えていないような振る舞いを見せるなど、なにか秘密を抱えている様子。 そんな数々の違和感が物語を読み進めるうちに少しずつ解消されてゆき、気付けば"2人"の愛の物語へと収束していきます。 ストーリーは細部まで綿密に組み上げられていて、それでいて物語の最後の最後まで仕掛けが施されている、始めから終わりまで全てが美しい物語です。

ハッピー・オブ・ジ・エンド

すべてが最高な2021BLの最高峰

ハッピー・オブ・ジ・エンド おげれつたなか
兎来栄寿
兎来栄寿

安心と信頼のおげれつたなかさん最新作。 バカエロの方の作品群も良いですけど、私はおげれつたなかさんのこの仄暗く痛みを覚える方の作風が大好きです。 まず言うまでもないことですが、美しい絵柄が最高ですね。美麗な絵でもって、主人公の千紘が惹かれる攻めのケイトのミステリアスで冷たい「顔の良さ」を無条件で承服させられます。表紙でも帯でもそうですが、瞳孔にハイライトがないケイトの暗い深淵の瞳。しかし、そこに時折光が宿るシーンが堪らない訳ですよ、ええ。 公式では「謎めいたイケ傷害男」×「人生底辺ヒモカス男」とされていますが、この主軸二人のバックボーンが非常に懇切丁寧に描かれていることで、彼らのクズな部分もアングラな部分もひっくるめて感情移入できるようになります。よく立った二人のキャラクターが織り成していく関係性の変化は極上のご馳走です。 「ゴミと動くオナホってどっちがマシなんだろうな」 という問いとそれへの回答、またep.6のラスト付近はとりわけ好きなシーンです。 彼らを取り巻くサブキャラクターも味のある人物が取り揃えられており、引きの強いストーリーを更に盛り立てていきます。 ディープな人間ドラマを読みたい方でBLへの抵抗が薄い方であれば男性にも強くお薦めしたい、今年発売のBL作品の中でも抜けている一作です。

明るい青少年のための恋愛

すごいものを読んだ【1巻感想】

明るい青少年のための恋愛 東宮千子
天沢聖司
天沢聖司

アマゾン見てたらおすすめで出てきたBL。懐かしい絵柄が素敵だな〜となんとなく1巻読んでみたら「この漫画もしかしてものすごい作品なのでは…?」と思わされた。 こんなに素敵な表紙で少女漫画みた〜いと思って読みだしたら攻めがサイコだった驚きよ……。 「サイコ御曹司×金髪碧眼ワンコ系日本男児」の2人が最後に一体どう着地するのか全く読めない。 今まで心を許せる友達の居なかった中井(育ての親を亡くしたばかりの金髪碧眼で寺社仏閣が好きな日本男児)が、趣味の話を通じて御曹司の俊鷹に心を開く。 が、俊鷹の方は中井のことを「綺麗な洋犬(※文字通りの意味しかない)」と思っていて、その言動にピュアな中井は振り回されて傷つくが金銭的には俊鷹を頼らざるを得ず……という話。 何よりすこいなと思ったのがこのサイコ御曹司・俊鷹。 日本の景気が低迷するにつれ、BL業界では「スーパー攻め様が闇のオークションで受けを落札する」というシチュエーションが減少するに留まらずその落札価格の方も安くなっているのだそう。 しかしこの『明るい青少年のための恋愛』は日本が最もイケイケだった80年代後半に描かれているだけあり、俊鷹とその兄たちが途方も無い上流階級の大金持ち。 「そりゃ〜この時代ならこんぐらいの金持ちはその辺にいただろうな」 「こんだけ実家に金があって変な兄貴たちに育てられたらこう歪むだろうな」 「こんだけ大金持ちならそりゃ攻めになるしかないわな」 と納得してしまう。 あの時代でしか描けない、途方も無い財力が説得力をもたらしているすこいキャラだな〜と感心。 1巻の時点で俊鷹はそうとうヤバ奴ですが今後本当にどうなっていくんだろう…怖いけど続きが気になる。