マイ・ブロークン・マリコ

歴戦のマンガ読みが戦慄した驚愕の才能

マイ・ブロークン・マリコ 平庫ワカ
兎来栄寿
兎来栄寿

最近登場したCOMIC BRIDGEというレーベルは大人の女性向けの作品を多数掲載しており、非常に面白いものが増えてきていると感じます。 去年の7月16日。雨が降り、例年なら蒸し暑くなっていそうなところ、例年より10度以上低い涼しい7月となっていたあの日。コミックブリッジで新作が公開されたということで読み始めました。 写実的なバナーから画力の高さは見て取れましたが、すぐにそれまでの作品と比べても異彩を放つその内容に圧倒されました。 そしてすぐさまTwitterでそのタイトルを呟きました。『マイ・ブロークン・マリコ』という名前の強烈な新連載が始まった、と。それは、Twitter上で2番目に呟かれた「マイ・ブロークン・マリコ」という文字列でした(1番になれなかったのが悔しいのはここだけの話)。すぐに数千人フォロワーのいる作家の友人に引用RTされ、そのコメントは単行本の帯にもなりました。その日の間に面白いマンガを求めるマンガ読みに伝播し、その次の日には更に広く拡散され瞬く間に大きな話題となっていきました。 Twitter上の有志がその年の面白かったマンガに投票する #俺マン2019 では、未刊行作品ながら18位という高順位に。その前の5年間の未刊行作品トップがどういった順位だったかと言えば以下の通りです。 2014年 ゴールデンカムイ 65位 2015年 猫工船 101位 2016年 猫工船 196位(BEASTARS、映像研には手を出すな! 227位) 2017年 二兆円と、1日と、猫 47位 2018年 王様ランキング 31位 今現在絶大な人気を誇っている作品群と比べても、『マイ・ブロークン・マリコ』がどれだけ圧倒的な支持を受けたかが解ります。2020年の各マンガ賞でも確実に上位で名前を見ることになるタイトルでしょう。最早、『マイ・ブロークン・マリコ』は事件であり現象と化しています。 目の前にあるものを灼き尽くさんばかりの激情、駆け出さずにはいられない疾走感、魂を抉り取るような哀切。 ラスト1ページを読み終えた時の言葉で表し切れない感情を、タイトルを改めて噛み締めてしまう名状し難き想いを味わってみませんか。 平庫ワカさんの今後の活躍が楽しみでなりません。

ホームメイド・スイートホーム

小さな島を舞台にした掴みどころのない2人の恋模様 #1巻応援

ホームメイド・スイートホーム 中村ユキチ
sogor25
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小さな島の役所で働く穂高大志、44歳。一級建築士でありながら現在は土木課に勤務しており、一人暮らしの家事も完璧にこなす。どうも過去に何か秘密があり、建築事務所を辞めたのにも理由がありそうなんだけど、淡白な振る舞いからあまり考えの底が見えない人物。 そして突然孤島に現れた女性、嶋燈子、28歳無職。私有地にテントを張って居座り、「ここに家を1人で1から建てる」と嘯く。どうやらそのために会社も辞めてきたらしいけど、貯金自体はしっかりとあり、冗談で言っているわけではない様子。 という全然違う意味で掴みどころのない2人が出会い、燈子の"家を建てる"という目的のために距離感を近づけたり遠ざけたりしながら進んでいくラブストーリー。 端から見れば掴みどころのないキャラクターの2人なのに、物語が進むごとにモノローグでお互いの心の中が描写されて、何を考えているのか、過去にどういう秘密があったのかが徐々に明かされていく感じが新鮮で面白い。今のところは奔放な燈子に当てられてなのか穂高のほうが心を徐々に開いていっている感じがあるのだけど、1巻の終わり方を見るとまだまだ大きく物語が動いていきそうであり、また穂高・燈子それぞれの過去について完全に明かされたわけではないので、ここからどう進んでいくのか楽しみな作品。 1巻まで読了