可愛いだけじゃない式守さん

2巻で華麗なる変身を遂げるTwitter発マンガ

可愛いだけじゃない式守さん 真木蛍五
sogor25
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不幸体質の和泉くんとその彼女の式守さん。普通にしてると式守さんはすごく可愛いんだけど、降りかかるアクシデントから和泉くんを守ろうとする時、彼女は"可愛いだけじゃない"顔を見せる。 当初はTwitterに掲載されていた4ページマンガで、4ページ目の式守さんの表情が4コママンガでいうオチのような役割をしている。その構成のまま1巻は130ページほどで17話収録という内容で、それでも絵の魅力が高いのでラブコメとして充分に面白い内容。 しかし、2巻に入ると少し様子が変わってくる。式守さんと和泉くんだけじゃなく、和泉くんの友人の犬束くん、式守さんの友人の猫崎さんと八満さん、そして和泉くんのご両親などにもフォーカスが当たり、1話12ページ前後のストーリーマンガに華麗なる変身を遂げる。1話あたりのページ数が増えても、キーとなるキメ絵の威力は変わらないので物語に大きな波がなくてもしっかりと起承転結がある。式守さんの表情にも幅が広がり、なにより登場人物の中に悪意が存在しないので安心して読めるラブコメになっている。 きっと「からかい上手の高木さん」や「疑似ハーレム」などの作品が好きな方には気に入ってもらえるはずだし、「うたかたダイアログ」のような1話ごとにストーリーのあるようなラブコメが好きな方にも薦めたい作品。 2巻まで読了。

交響詩篇エウレカセブン

君はエウレカセブンのプレイリストを作っただろうか?

交響詩篇エウレカセブン 片岡人生 BONES
せのおです( ˘ω˘ )
せのおです( ˘ω˘ )

君はエウレカセブンのプレイリストを作っただろうか? スーパーカー、ジョイディビジョン、ニューオーダー、oasis、ビョーク、ハービーハンコック、Beastie Boys、コーネリアス、坂本龍一…などなど、 この名々を見るだけで人生がいかに豊かになったか分かるだろう、 君はエウレカセブンを観て何を始めたか?何に憧れたか? 思いっきりボードを蹴ってみたい、メットなしでスクーター走らせて「この最悪な街」から逃げ出してみたい、音楽に体をあずけて思いっきり踊ってみたい、みんなでサッカーをしてみたい、 一つずつ叶えた日々は、今でもかけがえのない日々である 君はエウレカセブンを観て誰に出会ったか? 吉田健一というアニメーターを初めて強く意識した。彼の描く人物の表情に涙した。彼の関わった作品を夢中で観た。それだけで多くの出会いになった。 君はエウレカセブンを観て何を学んだか? 「ねだるな、勝ちとれ、さすれば与えられん」! そして「ア〜イキャ〜ンフラ〜〜イ!」と叫べば好きな子の元までひとっ飛びで行けちゃうかも?! エウレカセブンを学べばサブカルチャーを一周できちゃうくらいには、様々な要素が散りばめられています。これほど青くさい10代の為になるアニメ・漫画はないでしょう… そんなエウレカセブンにトリコジカケニナったわたしの人生は、まだまだ「つづく」!!

ドカベン

だから野球マンガは面白い!

ドカベン 水島新司
影絵が趣味
影絵が趣味

当初は柔道マンガとして始まり、いくつものシリーズを経由しながら、ひじょうに長い年月を経て、とうとう『ドカベン』に終止符が打たれた。最終巻の最終話では、第一巻の第一話における山田と岩鬼の出会いをそのまま回想としてなぞり、このあまりにシンプルでありながら、これしかないという演出には言うにいわれぬ感慨を憶えたものだった。 『大甲子園』を含めたドカベンシリーズの本流だけで全205巻。それ以外の支流からドカベンシリーズの本流に合流してきたものを合わせれば300巻に迫る勢いである。じつは、こち亀の200巻の記録をゆうに超えてしまっているのだ。 この途方もない事態は、おそらく『ドカベン』にのみ関わるものではない。すべての野球マンガに、野球マンガというジャンルに関わるものであると思う。マンガには様々なジャンルがあるが、そのなかでも野球マンガというジャンルは、マンガという体系に対して、ある特権的な位置を占めていると思うのだ。これはハリウッドが西部劇というジャンルとともに映画産業を発展させてきたのとよく似ているような気がする。すなわち、ここでは映画が西部劇を撮るのではなく、西部劇という土壌が映画を撮らせているというある種の逆転現象が起きている。映画においてもっとも重要な光線の処理の問題、これをハリウッドはその近郊の年中天候の変わりにくい荒涼地帯で西部劇を撮ることで解決してきたのだ。天候がほいほい変わればそのたびに撮影を中断せねばならないが、西部劇ならばそんな心配はしないでどんどん撮影をすすめ、作品を量産することができる。つまり、こうした西部劇の量産で興行した潤沢な資金を次の撮影にまた注ぎ込むというサイクルがハリウッドにはできていたということだ。 では、マンガはどうかといえば、マンガ制作に天候はあまり関係がなさそうだが、やはり手塚治虫の登場いらい体系の整えられてきたコマと記号の処理という問題が"大友以降"のマンガにおいても頭をもたげてやまないはずなのだ。というより、マンガにおける諸問題はコマをいかに処理し、記号をいかに処理するかに集約されるはずだ。あれだけマンガというものに抗ってみせた『スラムダンク』の井上雄彦もけっきょくはコマからは逃れられないし、記号には頼らざるを得ないところがあった。そもそも井上がマンガに抗わざるを得なかったのはマンガ家という身分でありながらバスケが好きだったという不幸に由来する。マンガでバスケの動きをどう表現するか、それは文字通りマンガへの過酷な抵抗であったことだろう。『スラムダンク』の美しさは、このマンガへの過酷な抵抗と山王への果敢な挑戦がダブるところに集約されるだろう。ただ、あくまでも井上に許されていたのはマンガへの飽くなき抵抗という姿勢までで勝利ではなかった、だからこそ湘北が山王に奇跡のような勝利をおさめたときに連載を止めねばならなかったのだ。その点で、マンガは野球に愛されていると言わざるを得ない。愛に守られてスクスクと育ち、野球マンガに特有の素晴らしき楽天性でもって『スラムダンク』とはまたちがった豊かさを随所で花開かせている。そのことは近年ますます豊饒となった野球マンガのひとつ『おおきく振りかぶって』にもよく描かれている。すなわち、打者のほとんどが打ち上げてしまう三橋くんのまっすぐ、打者はボールの運動をじっさいに目で正確に追っているのではなく、その軌道を経験的な記号として捉えてバットを振っている、と。このことは野球を外からみる側にもいえる。投手が構えて、ボールが投げられる、打者が構えて、バットが振られる、この一連の運動を隈なく目で追っているひとなどいないはずなのだ。わたしたちが見ているのは、投手が構えて、次の瞬間には、構えていた打者がスイングし終えていて、マウンドの投手はまるでバレエでも踊るみたいな不可思議な格好になっている。この野球をみるときの呼吸はマンガの呼吸とぴったり合いはしないだろうか。コマからコマのあいだの欠落を敢えて埋めようとはしなくてもマンガは野球を経済的に語る術をはじめから心得ていた。つまり野球マンガは、あるいはバスケマンガのように、マンガそのものに抵抗する必要があらかじめなかった。この追い風を受けてマンガは野球という物語を幾重にも変奏して量産することができたのではないかと思うのだ。

新装版 真・女神転生 デビルチルドレン

コミックボンボンの伝説的ハードボイルドアクションマンガ

新装版 真・女神転生 デビルチルドレン ATLUS 藤異秀明
ANAGUMA
ANAGUMA

「ボンボンのベルセルク」とはよく言ったもので、およそ児童マンガとは思えぬハードな表現と展開で当時の小学生をビビらせつつも興奮させまくった本作。 原作は女神転生シリーズを子ども向けにリメイクした同名のゲームボーイソフトですが、原作プレイヤーが「なにかの手違いかな?」と思うほどのハードボイルドが盛られていることで有名です。 なんなら本家女神転生よりタフかもしれない。 主人公の甲斐刹那は小学5年生にしてデビルの使役者「デビルチルドレン」に選ばれ、魔界の騒乱に巻き込まれますが、巻き込まれ方からすごい。 自室が吹き飛び悪魔の召喚銃デビライザーを謎の配達屋から押し付けられたかと思うと、その配達屋が目の前で速攻息絶えます。いきなりハード過ぎる。小5ですよ? 基本このマンガでの「死」は身体が消えるとかファンタジーなやつじゃなく超フィジカルに訪れるので、現実的な死の感覚が子ども心に強烈に刻まれたわけです。(実際最初は怖くて読めなかった) 連載はじめの頃はキャラクターの頭身も子ども向けっぽいデフォルメが効いた感じなのですが、ふとした瞬間から筋肉が盛りに盛られたゴージャスな作画に吹っ切れていきます。 絵柄の変化と同時進行で周囲のキャラが次々に壮絶な最後を遂げ、主人公(※小5)の目がどんどん据わっていくのはマジの迫力。マーブルランド編に突入して刹那が再登場したときのゾクゾク感はそうそう味わえるものではないです。 『ベルセルク』と喩えられる最大の理由はおそらく同戦争編だと思いますが、こちらも出色の出来で、ラセツ族の兵士が自分のちぎれた腕を抱えて狂気の笑いを浮かべていたのをよく覚えています。大人になった今だからこそ「あ、それ描いちゃうんだ?」っていう凄まじさが分かりますね。 手加減無しで徹頭徹尾リアルに描写されたキャラクターの生と死、痛み、苦しみがあるからこそ、物語とキャラクターの生きざまに説得力があって、今でも十分楽しめるのはそういう理由なんだと思います。 子ども向けなのに云々を超えた重厚なドラマ、是非味わってほしいです。