あらすじ

どこにあるともわからない「天国」を目指して、「魔境」と化した未来の日本を旅するマルとキルコ。二人は「天国」を見つける鍵だと思われる「キル光線のマーク」を追い、「高原学園」奈良施設にたどり着く。そこには関西復興省が管理する栄えた町が広がっていた。だが、マルとキルコを捕まえるために追ってきた竹塚に見付かってしまう……。一方で、「天国」で暮らしていた子供達は、「大災害」の影響もあり、外の世界で暮らしていくことを余儀なくされていた。彼らの行く末は……。謎が、正体が、次々に明かされる! 少年少女サヴァイブ群像劇!
天国大魔境 1巻

美しい壁に囲まれた世界で暮らす子供たち。少年・トキオはある日、「外の外に行きたいですか?」というメッセージを受け取る。一方、外では、マルとおねえちゃんがサバイバル生活をしながら、天国を求めて、魔境となった世界を旅している。未来の日本を「あね散歩」。二つの世界を縦横無尽に行き来する、超才・石黒正数最新作、極大スケールでスタート!!

天国大魔境 2巻

壁に囲まれた緑豊かな施設の中で暮らす子どもたち。トキオは「外の外に出たいですか?」というメッセージを受け取り壁の外の世界を想像する。外の世界ではマルとキルコがサバイバル生活をしながら天国を目指し旅している。撃退した暴漢から情報を得て「トマト天国」に着いた2人は、そこが目指していた場所ではないことを知り、次の目的地・浅草へ向かう。日本全国、全部廃墟!未来を旅するSFアドベンチャー、待望の第2巻!

天国大魔境 3巻

廃墟と化した未来の日本。マルとキルコは、どこにあるともわからない「天国」を目指して旅を続けていた。「天国」のヒントを求めて東京にたどり着いた二人は、今後の活動資金を得るべくひと稼ぎすることを目論む。一方、トキオが暮らす高い壁に囲まれた緑豊かな学園では、原因不明の病で容体が悪くなる子どもが現れたりと、不穏な現象が起こり始める。世界の秘密が紐解かれるたび、世界の複雑さは混迷を極めてゆく。荒廃した世界をサバイブせよ!

天国大魔境(4)

廃墟と化した未来の日本。マルとキルコは、どこにあるともわからない「天国」を目指して旅を続けていた。「天国」のヒントを求める二人は、廃墟での「医療行為」の是非を巡って対立する「不滅教団」と「リビューマン」の抗争に巻き込まれていく。一方、高い壁に囲まれた緑豊かな学園で暮らすトキオは、原因不明の体調不良にみまわれる。厳しい世界を、悩みながらも軽やかに生き抜く、少年少女サバイブ群像劇!

天国大魔境(5)

廃墟と化した未来の日本。マルとキルコは、どこにあるともわからない「天国」を目指して旅を続けていた。二人は、「天国」を見つける鍵だと思われる「キル光線のマーク」を看板に掲げた「高原学園」のビルをついに発見! そこには何が……? 一方、「天国」こと「高原学園」では、学園の根幹を揺るがす事件が起こり、組織の人事異動が行われる。園長の思惑とは、果たして……? 厳しい世界を、悩みながらも軽やかに生き抜く、少年少女サバイブ群像劇!

天国大魔境 6巻

廃墟と化した未来の日本。マルとキルコは、どこにあるともわからない「天国」を目指して旅を続けていた。二人は、「天国」を見つける鍵だと思われる「キル光線のマーク」を追い茨城にある「高原学園」の施設を訪れる。そこにある「復興省」を訪れたキルコは捜し求めた人物との再会を果たす! 一方、「天国」の「高原学園」では妊娠のために隔離されていたトキオが無事に出産を果たす。脳移植を目論む園長の野望は果たして……? 厳しい世界を、悩みながらも軽やかに生き抜く、少年少女サヴァイブ群像劇!

天国大魔境 7巻

廃墟と化した未来の日本。マルとキルコは、どこにあるともわからない「天国」を目指して旅を続けていた。二人は、「天国」を見つける鍵だと思われる「キル光線のマーク」を追い、「高原学園」茨城施設を後にして奈良施設を目指すことに。だが、執拗で残虐な追跡者がいることに、二人はまだ気付いていない……。一方、「天国」の「高原学園」では、トキオが出産した子を巡って権力抗争が激化していく。そして、ついに……学園の子供達に「テスト」の実施が告知される。世界の全貌が徐々に明かされる、少年少女サヴァイブ群像劇!

天国大魔境 8巻

どこにあるともわからない「天国」を目指して、「魔境」と化した未来の日本を旅するマルとキルコ。二人は「天国」を見つける鍵だと思われる「キル光線のマーク」を追い、「高原学園」奈良施設を目指す。だが、森をさまよう中で「奇妙な人物」に行く手を阻まれ……。一方、「天国」の「高原学園」は何者かの攻撃を受け、子供達が襲撃者に「保護」される事態に。新しい生活を送る子供達だったが、「園長」の目論見が明らかになり……!? ついに「天国」と「魔境」が繋がる、少年少女サヴァイブ群像劇!

天国大魔境 9巻

どこにあるともわからない「天国」を目指して、「魔境」と化した未来の日本を旅するマルとキルコ。二人は「天国」を見つける鍵だと思われる「キル光線のマーク」を追い、「高原学園」奈良施設にたどり着く。そこには関西復興省が管理する栄えた町が広がっていた。だが、マルとキルコを捕まえるために追ってきた竹塚に見付かってしまう……。一方で、「天国」で暮らしていた子供達は、「大災害」の影響もあり、外の世界で暮らしていくことを余儀なくされていた。彼らの行く末は……。謎が、正体が、次々に明かされる! 少年少女サヴァイブ群像劇!

天国大魔境 10巻

「天国」と呼ばれる場所を探して、「魔境」と化した未来の日本を旅するマルとキルコ。二人は「天国」を見つける鍵だと思われる「キル光線のマーク」を追い、「高原学園」奈良施設にたどり着く。そこには関西復興省が管理する栄えた町が広がっていたが、超巨大な人食い(ヒルコ)が、じわじわと近づいてきていた。このままでは、町がメチャクチャにされてしまう……。一方で、「天国」で暮らしていた子供達は、崩壊した外の世界で暮らし始める。二つの世界が、ついに接地する!!

天国大魔境 11巻

「天国」と呼ばれる場所を探して、「魔境」と化した未来の日本を旅するマルとキルコ。関西復興省の管理する町で超巨大な人食い(ヒルコ)を援軍の協力を得て討伐した二人は、「高原学園」の設立目的やそこに暮らしていた子ども達の秘密、そして「天国」の場所を知る。旅を再開したマルとキルコだが、道中で「新天国」と呼ばれる場所の存在を聞かされ……!? 時は変わり「大災害」の日、幸せに生きてきた者にも幸せを奪ってきた者にも等しく訪れた世界の崩壊は、それぞれの人生を大きく歪ませていった。テレビアニメが世界でも大好評の少年少女サバイヴ群像劇、最新11巻!!

天国大魔境

正統派のマンガ家とはパロディ作家だ!!

天国大魔境 石黒正数
影絵が趣味
影絵が趣味

手塚治虫にしても、藤子不二雄にしても、元をただせばパロディ作家なのである。そもそもスターシステム(同一の作家が同じ絵柄のキャラクターをあたかも俳優のように扱い、異なる作品中に様々な役柄で登場させるような表現スタイル)からして自作間におけるパロディであるし、一般に手塚が体系を整えたといわれる漫画的記号の数々にしても発明者本人に特許権のようなものは何ら存在しておらず、作家間を隔てる異空間を超えてあたりまえのことのように浸透している。あまりに広く、あまりに希薄に、浸透しているので、それがパロディだとも気づかぬほどだが、1970年代には吾妻ひでおが『不条理日記』等の作品で漫画的記号の使用を脱臼させてみせ、それがパロディ的要素を備えていることを如実に示してみせた。吾妻はその後、アルコール依存症に苦しみ、一時はマンガ界から姿を消すが、大ヒット復帰作となった『失踪日記』が『不条理日記』の頃からは考えられない"正統派"のマンガであったことは記憶に懐かしい。ちなみに手塚は自作内に吾妻のマンガキャラクターをパロディとして登場させるなどしていたが、手塚キャラをパロディギャグにして世に出てきた田中圭一が最近では『ペンと箸』や『うつヌケ』等の"正統派"のマンガで第二次ブームをむかえている。 そしてほかでもない石黒正数も、手塚治虫や藤子不二雄、それから吾妻ひでおや田中圭一らに連なる正統派のマンガ家であると思うのだ。正統派のマンガ家とは、マンガというものに広く希薄にも共有されて、そして受け継がれているものの使用に自覚的な作家にほかならない。それは当たり前にそこにあるものではなくあまりに貴重な共有財産である。パロディとは、それを使わせていただきます、という一種の照れのようなものである。だからこそ異端であるかのようなパロディ作家こそが正統足りえるのだ。 いっぽうで共有財産の使用を拒んだ真の異端としてのマンガ家が数人いる。彼らはマンガの革命者であり、マンガの可能性の限界を押し広めた者たちであった。大友克洋、高野文子らがそれにあたるだろうか。そして石黒正数のパロディは多岐に渡るが、作品間を超えて貫かれており、今作『天国大魔境』にも見られるのは大友や高野のパロディである。背景の白い建物の壁にひび割れや汚れが描かれるのは大友そのものであるし、ジーンズの描き方は高野から来ているものにちがいないだろう。さらに一巻目をさいごまで読んで驚いたのは、おねえちゃん、ストップひばりくんではないか! 江口寿史とは正統→異端に転じたひとであろう。異端である革命者はやはり偉大だが、わたしは正統派も同様に偉大であると思う。パロディとは一種の愛のようなものではないか。なぜって石黒正数のマンガのそこここから偉大なマンガの数々への愛が感じられるのだ。