あらすじ第二幕「荷風のあがき」開幕!!! 青年期の葛藤(かっとう)を乗り越えた荷風の壮年期!! 41歳の荷風は麻布市兵衛町(現・六本木一丁目)に 洋館「偏奇館」を新築し、“終(つい)の棲家(すみか)”とする。表向きは、作家業に専念する家であったはずである。だが、“人間の本能”とどこまでも向き合った荷風のことだ。そう簡単に行くはずがない。壮年期を迎えた“荷風のあがき”が、いま始まる――― 事実と永井荷風作品を基にした 評伝的フィクション第2集!!
本作は一本の連続物語ではなく、これを読んでもわかるのは永井荷風の事ではなくそれに憧れたある漫画原作者の一途な想いである。 「女帝」を始めとした夜のマンガの原作では帝王と言っても過言ではない、倉科遼が、自身の思い出や体験、思い返す瞬間などから自身が憧れ、成りたいと思っていた文豪・永井荷風に重ねて想いを寄せるというどこか走馬灯のような作品。 時代も大きく影響しているし、銀座のクラブ通いも大人過ぎてわからない、という色んな意味で別世界すぎる話なのだが、人間が憧れの人間に陶酔し、自身を重ね、弱さや脆さ、かっこ悪いところも含めて深く掘りながら夢中になっている様はとてもおもしろい。 ましてやそれが倉科遼という夜の帝王(ちょっと語弊があるけど)なので興味深いもので、実際倉科先生という人物も読者から見たら憧れられてもおかしくない存在だな、と本作を読めば更に印象づくのではないかと思います。