正義の味方コンビ・中大兄皇子と中臣鎌足が、大悪人の蘇我入鹿を成敗して成し遂げた政治改革を「大化の改新」と言う。日本古代史上、最大級の暗殺事件だ。明治17年、美術研究家アーネスト・フェノロサと岡倉天心は奈良の法隆寺・夢殿の中にある謎の仏像を見ようとした。その仏像は「救世観音」と呼ばれ、聖徳太子をモデルにしたとされる。ところが白布でぐるぐる巻きにされて1200年以上も封印され、誰も見ることができない。おまけに、その仏像を見ようとすると天変地異が起こるという伝承まで残されていたのだ。ふたりが夢殿の扉を開こうとすると、恐怖に駆られた僧達が逃げ出すほど。しかも仏像を調べると、後頭部に釘が打ち込んであった!!ありがたき聖徳太子の化身を、なぜ人目に触れぬよう封印し、釘を打ち込み、絶対秘仏とせねばならなかったのか?まるで、その祟りを恐れているかのようである。ここで日本古代史上、最大の暗殺事件の犠牲者が浮かび上がってくる。「大化の改新」の真相は、中大兄皇子(天智天皇)と、父親を殺された大海人皇子(天武天皇)との、壮絶な兄弟喧嘩の号砲だったのだ……!!
大海人(後の天武天皇)は、父・蘇我入鹿を殺した異父兄・中大兄皇子(後の天智天皇)の従者となった。これが復讐への第一歩だ。まずは中大兄と、そのブレーンである豊璋を分断したい。優秀な戦略家である豊璋の支えが無ければ、中大兄は何もできないはず。大海人は豊璋が溺愛している息子・真人に目を付けた。真人は孝徳天皇の落とし胤との噂があり、中大兄から皇位継承のライバルと見なされたら、命が危ない。そう説き伏せて、中大兄が大反対している遣唐使船に乗せて国外脱出させたのだ。……そこまではよかった。しかし大海人は思い知ることになる。豊璋なしには何もできないと思っていた中大兄皇子が、モンスターに成長していたことを…!?かねてから憎く思っていた孝徳帝と、その息子・有間皇子に中大兄は狡猾で非情な牙をむいたのだ!!
巡り物語………闇夜の中、ひとつの蝋燭の灯りの下で皆が車座になり、心情を吐露し合う。中大兄皇子の提案で集まった面々は、いつもだったら絶対に言わない本音を語り出す。母・斉明帝への複雑な想いと、亡き蘇我入鹿への思慕を口にした中大兄。今や百済の強敵と化した新羅王・金春秋との出会いを語り、中大兄と豊璋を動揺させた大海人皇子。父・義慈王の残虐行為に危機感を強め、入鹿と新羅の接近を食い止めるため中大兄に接触した百済王子・豊璋。そして大海人が心から愛する額田王の、衝撃的な発言………孝徳帝の遺児・有間皇子の悲劇的な最期、大海人皇子と、絶世の美女・額田王との出会い、百済の王子・豊璋の愛する祖国を襲った運命……時代は大きく動き出そうとしている!!