あらすじ

国本八彌の家には雷神丸といわれる一振りの太刀があった。これは八彌の亡き父、国本鬼左衛門が大阪の役でめざましい働きを立てた時、前城主・間部直正より賜った名刀である。それ以来雷神丸は国本家の誇りとされ、家宝とされてきた。間部藩主二代目を継いだのは直正の嫡男正次であるが、正次は父が国本鬼左衛門に与えたといわれる雷神の太刀を八彌に一度見せてはくれぬかと、これまで再三に申し付けたことがあった。しかし、奇怪なことに八彌はその度にあれこれと口実を設けては断っているのだ……。(拝領刀始末記 鬼葬より)
とみ新蔵 初期名作選 1~元禄異聞 美童無惨~
徳川家も五代目(綱吉)を重ねた元禄の頃は、天下はすこぶる泰平、日毎穏やかな明け暮れが続く平和な時代であった。しかし風俗は…町人はもちろんのこと武士迄が柔弱淫靡に流れ擾乱の世相を現出した時代であった。すなわち奇異にして愚劣とも言うべき男色がすさまじいほど大流行した時代でもあった…。戸田家藩士、棚町隼人が山中で一人釣りをしていると、突如名も名乗らぬ一人の浪人が切りかかってきた。名を名乗れと一喝するや、その浪人は俺の顔を見忘れおったかと傘を脱いだ。しかしその顔は無惨な傷に覆われ何処の者かわからず……。(表題作より)
とみ新蔵 初期名作選 2~孤剣~
国本八彌の家には雷神丸といわれる一振りの太刀があった。これは八彌の亡き父、国本鬼左衛門が大阪の役でめざましい働きを立てた時、前城主・間部直正より賜った名刀である。それ以来雷神丸は国本家の誇りとされ、家宝とされてきた。間部藩主二代目を継いだのは直正の嫡男正次であるが、正次は父が国本鬼左衛門に与えたといわれる雷神の太刀を八彌に一度見せてはくれぬかと、これまで再三に申し付けたことがあった。しかし、奇怪なことに八彌はその度にあれこれと口実を設けては断っているのだ……。(拝領刀始末記 鬼葬より)
とみ新蔵 初期名作選 3~女郎始末記~
明治以前…三州田原城の城南丘陵の一隅に奇妙な石があった。何気なく見ていればなんの変哲もない細長い石としか見えないのだが、よく見れば見るほどそれは…奇怪に身をかがめた女の立ち姿を思わせたという。その昔…愛し合う二人がいた。だが共に貧しい二人であった。男は一旗揚げるために村を出た。一年、二年、女は待ち暮らし…三年、四年と女は泣き暮らし…翌年なんとか諦めようと決意したのもつかの間、村中を襲った野伏の群れに日夜犯されたその挙げ句、女郎に叩き売られたのだ……。(表題作より)
とみ新蔵 初期名作選 4~果し合い~
もと土佐藩の有力郷士であった品川多聞を頭目として薩摩・長州・土佐・各藩の藩士、浪人合わせて百名以上の尊皇攘夷派の者が、ときに乗じて寄り集うといわれる教徒のある屋敷へ、百姓とも武士ともつかぬ男が訪れたのは文久二年のことである。男は土佐の百姓、原玄蔵と名乗った。祖父の代までは下級ながら郷士であったという。玄蔵は品川多聞に志士の仲間に加えてもらうため、京都までやってきたのだが、当たり前のように門前払いを食らう。そこに目明かしがやってきて……。(維新秘話 暗殺者より)
とみ新蔵 初期名作選 5~闘魂記~
明治元年八月二十三日、会津藩士白虎隊・朱雀隊・青竜隊・玄武隊および旧幕兵全員は怒涛のごとき征討軍を迎え撃ってせいふう血雨の惨たる闘いを繰り広げて敗れ去った。中でも飯盛山へ逃れて絶望の果てに自刃した会津白虎隊第二番隊の最後は悲惨の一語につきるものであった。ちょうどこのおり…少年剣士らを飯盛山へ追い上げた征討軍の一隊の隊長がただ一人で死屍累々と横たわる山上へ登ってきた。若い官軍の隊長はそこで息絶えた白虎隊士が握りしめていた短冊を読み…懐中にしまって、よろめくような足取りで山を下っていった。その向かっていくところは、部下たちの待っている山下ではなかった……。(義経屋敷より)
とみ新蔵 初期名作選 6~ゼニ馬鹿~
佐野田角造。不動産業兼金融業――戦中戦後の動乱期にどん底から這い上がって巨万の富を築いた人物である――この男、兎に角金に汚い、ケチで有名。しかし金の力を誰よりも知り尽くしている男でもあった。金によって振り回され翻弄される人間たちをシニカルに描いた傑作コメディ「ゼニ馬鹿」など、とみ新蔵のコメディタッチ作品だけを集めた名作選第六集。血反吐を吐き、魂をえぐるようなとみ新蔵ワールドにあって、ふんわり笑えて可愛くそして切ない作品もこの切れ味。巨匠の技の冴えを堪能すべし!
とみ新蔵 初期名作選 7~惨なり!~
ある町のはずれに、いつの頃からか鍛冶屋があった。その男はいつも熱心に包丁造りなどに精を出していたが…どことなく暗く、近所の付き合いも一切なかった。ある日のこと。その鍛冶屋に武士が一人訪ねてきた。名を鬼倒流・萩原一角、兵法修行中であるという。その萩原は鍛冶屋に言った。一手お立ち会いくだされ! と。もちろん鍛冶屋の男は驚き戸惑い、わたしがどうしてお武家様と切り合いが出来ましょうか、からかわないでくださいと答えたが、萩原は意外なことを話し出し…。(孤剣果てずより)
とみ新蔵 初期名作選 8~城盗物語 悲士助次郎~
尼子経久の居城、富田城……城主・経久直々に呼び出された本庄助次郎は大急ぎで馳せ参じた。突然の呼び出し、要件は何かと問うと経久は「わしに命をくれぬか」と一言。流石に面食らう助次郎だったがすぐにその場で斬首されることを選んだ。経久は一喝とともに刀を振り下ろす!…も、助次郎の首は飛ばず、今のは嘘だ、助次郎にと告げるのだった。どのような状況なのか全くわからず呆然としている助次郎に、経久は話し始めた。主君の命を絶対だとする助次郎、そなたは真の忠義者だ。そのようなお主にしか頼めないことがあるのだ…果たしてその密命とは!?(城盗物語 悲士助次郎より)
とみ新蔵 初期名作選 9~蛮九郎武魂~
牢内で一人の罪人が死を待っていた。男は時折空を見つめて野獣のような低いうめきを漏らすのみ…その陰惨さにはさすがの灯な主たちも文句を言うはおろか地下よりもせず…更に彼らを不気味な思いにさせたのは、罪状に対する刑の裁決が行われた時、「鼻そぎ耳そぎ」と取り決まったにもかかわらず男は死罪、斬首を要望し、やむなく死罪と再決された時、男はさらに磔刑を願望した。刑の行われる日。気の弱いものをは気を失い、豪のものでも恐怖のあまり泣き叫ぶ磔台に、男はむしろ待ち焦がれていたように……。(憎悪蜂の姫より)
とみ新蔵 初期名作選 10~非情剣峠に斃る~
芸者玉千代が首の骨を折られて殺されたのは一年前! やっと下手人の確証をつかんだのはひと月前…奉行所のにらんでいたとおり相撲取りの荒熊が、ふられた腹いせに張り殺したという…。現場に居合わせた幇間が口を割ったのだ。今になるまで口を閉ざしていたのも、証言したことが知れたら荒熊に殺されると思っていたからだった。なにはともあれ一年近く手間取った美人芸者惨殺事件もついに解決…と思いきや、荒熊は尾州家のお抱え力士であった……。(江戸相撲惨劇 土俵殺陣より)
愛剣~剣術抄~

愛剣~剣術抄~

肥後藩藩主・細川忠利の後を追って殉死した家臣・阿部弥一右衛門。殉死禁止令が出ている最中での切腹が藩命に背いたと問題視され、弥一右衛門の遺族らに処分が下される。不満を露わにした長男・阿部権兵衛が自ら髻を切り落とすと、その行為が逆賊扱いされ、斬首・晒し首に。これに激怒した妹・阿部萌香率いる阿部一族は、兄・権兵衛の首級を奪い返し、屋敷に立て篭もる。藩は阿部家に強者揃いの討伐隊を送り込み………藩の面子か武門の意地か──ついに戦いの幕が切って落とされる!!
撃剣

撃剣

1960年代後半から始まった劇画ブームを担った平田弘史や小池一夫の伝説的作品と2000年代に描かれたネオ劇画の夢の競演! 掲載作品一覧------平田弘史「弓道士魂」(全1巻第1章より収録)、原作:小池一夫 作画:神田たけ志「御用牙」(第1巻第1話「坐禅ころがし」より収録)、原作:小池一夫 作画:桃尻三郎「飛び加藤」(第1巻第1話より収録)、とみ新蔵「鉄門海上人伝~愛朽つるとも~」(上巻1第1章より収録)、ケン月影「江戸おんな柔肌暦 其の一・熟れ頃快楽」(大江戸おんな乱れ舞・第1巻第1話「熟れ頃快楽」より収録)、作画:ふくしま政美 脚本:大西祥平&ヴァンブラン「竜剣 大菩薩峠」(第1第1巻より収録)
神風連の乱

神風連の乱

旧肥後藩の太田黒伴雄、加屋霽堅ら 約170名によって結成された「敬神党」は、政府の反対派から「神風連」と戯称されていた。明治維新によって近代化が進む中で発布された 「断髪令」「廃刀令」に対して起こった反対運動『神風連の乱』を 自ら剣術を探求する劇画家・とみ新蔵が描破する――!!
源氏物語

源氏物語

マンガでわかる、古典入門! 時代劇画家・とみ新蔵が古典の名作「源氏物語」を緻密で卓越した作画技術で、美麗かつ妖艶にマンガ化しました。「源氏物語」とは平安時代の中頃に紫式部が創作した日本が世界に誇る長編物語であり、容姿、才能などを兼ね備えた主人公の光源氏を通して、恋愛、栄光、没落、権力闘争など、平安時代の貴族社会が描かれています。マンガで簡単に日本古典文学の最高傑作「源氏物語」の世界に浸ることができます。
帝国の中国侵攻

帝国の中国侵攻

1894年に朝鮮の支配をめぐって日清戦争が起こった。そして1904年には満州・朝鮮の利権争いから日露戦争が起こった。翌年、日露講和条約によって日本は中国東北部に鉄道を敷く利権を得る。満州に「南満州鉄道株式会社」が創設された。いわゆる「満鉄」である。そして1910年になると、日本はついに朝鮮を植民地支配することに成功した。そのうえで、第一次大戦が起こり列強諸国が中国を顧みる余裕のないことにつけ込んで、対華二十一カ条の要求を突きつける…。日本がいかにアジアを侵略していったのか、歴史をわかりやすく描く。
前線と銃後

前線と銃後

1930年代。ファシズムが支配したドイツとイタリアは利害の衝突を避けるため1936年10月以来ローマ・ベルリン枢軸を結んでいたが、39年になると日本もまじえて国際共産主義への対策を強化した。そして、ドイツとイタリアはヨーロッパの弱小国を次々と侵略していった。しかしロシアを含むヨーロッパ列強はその拡大を恐れ、政治的包囲網を固め始める。ドイツ・イタリアは日独伊三国同盟を日本に申し入れるが、日本は迷った…。世界大戦に突入する前夜からの国際情勢を俯瞰しつつ、日本の歩んだ道を流麗なタッチで描いた、歴史漫画の良品!
西郷隆盛

西郷隆盛

大政奉還後、明治三年の日本、鹿児島。元官軍総大将の西郷吉之助こと隆盛は、故郷で畑仕事に精を出していた。そこへ弟の従道が訪ねてくる。従道は、隆盛が東京を離れたあとの新政府の堕落ぶりを嘆き、隆盛に東京へ戻って力を貸してくれと懇願するのだった。隆盛は日本のために、再度立ち上がる決心をする。隆盛が戻ると、まずはじめの難題は廃藩置県。さらには政府と天皇を護るための近衛隊の創設だった。なかなか日本各地のかつての大名・藩主たちの理解を得られぬ中、隆盛は理想を追って奮闘するも…。明治の大偉人、西郷隆盛の後半生を真摯に描く。
柳生兵庫助

柳生兵庫助

柳生新陰流史上、最強の男――開祖・石舟斎の孫で、幼少の頃よりの厳しい稽古と類い希なる天賦の才で、将来を嘱望されていた柳生の麒麟児・兵介(後の兵庫助)。厳しい剣の道を歩み始めた兵助が十二歳のとき、京都に道場を構える願流の遣い手・根岸矢柄が柳生新陰流に挑戦状を叩きつけてきた。その挑戦を受けるべく、京へ上った兵助たち一行だが、そこには、凄絶なる死闘が待ち構えていた。はるかなる技の高みを目指し、果てしない求道の道を歩む――それが柳生の家に生まれし者の運命!!