あらすじ
著者が6年がかりで描き下ろした意欲作。敗戦の気配を察知して日本に絶望する虚無的な小説家と、過去に女郎屋、飲み屋で働いていた不感症の女。戦争に生かされた二人の刹那的な同棲は、空襲の日々で高ぶり、そして終戦で終わりを告げる…。戦争への興味から坂口安吾の異色作に入り込み、膨大な資料による時代考証と、原作であるGHQ検閲前の無削除版「戦争と一人の女」、「続戦争と女」「私は海をだきしめていたい」を一つの話に構成しマンガで表現。坂口安吾と近藤ようこのコラボレーションによる最高傑作が遂に誕生!
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表紙がすごくカッコよかったので手に取りました。内容は坂口安吾の小説をコミカライズしたものになります。原作小説が発表された当時はGHQから大幅に検閲された影響もあって評価はあまり高くなかったそうですが、近藤ようこ先生は2001年に講談社文芸文庫から出版されたGHQ無削除版を元に漫画にされているのでパンチがすごいです。まず「夜の空襲はすばらしい」から始まります。 戦時中にどうせ日本は負けるんだと思いながら生きていた男女がいて、二人は夫婦同然に暮らしてるんだけど、戦争が終わったらこの関係も終わるんだろうってお互いに心の中では思っている。女は貞操観念にダラしなくて、でも不感症で、男は全部を知っていて一緒にいたけど、戦争が終わりを迎えて…という話です。 読んでいて理解はしていると思うんですが言葉にするのが難しいですね。改めて読み返してみたら、あとがきに「青林工藝社に漫画化のアイディアを承諾してもらってから完成までに6、7年かかっている」と書かれていたのに驚きました。でも、こんなにすごいものはそれ程の年月がかかって当然だと思います。