「生存率ゼロパーセント…巨大な鉄の棺桶……」――。生きては帰れない人間魚雷「回天」に搭乗することになった若者達の苦悩と生き様を描いた戦争ドラマ。大東亜戦争末期、絵を描くのが好きな福岡海軍航空隊予科生・渡辺裕三(わたなべ・ゆうぞう)は、生還を期さない特殊兵器の搭乗員に志願して、とある島へと連れて行かれる。そこで人間魚雷「回天」を見て衝撃を受けた渡辺は、その創案者・仁科(にしな)と出会い……!?
「死に意味を見い出せぬ者を連れて行く訳にはいかん…。貴様は生きろ……」――。水中特攻兵器「回天」の創案者である仁科(にしな)と語り合い、人間が変わったかのように回天の訓練に集中する渡辺裕三(わたなべ・ゆうぞう)。しかし回天の攻撃作戦命令が出され、出撃者12名の人選を任された仁科が提出した名簿には、渡辺の名前はなかった。そして旅立っていく仁科達を見送った渡辺は、複雑な思いを……!?
「オレは…この日のために生まれてきました…」――。第二回目の回天攻撃作戦で出撃命令を出された渡辺裕三(わたなべ・ゆうぞう)は、危険すぎる泊地攻撃作戦に納得いかないまま潜水艦へと乗り込む。しかしその潜水艦は敵機に位置を知られ、敵艦による爆撃で仲間の関口(せきぐち)が重傷を負ってしまう。そして新たな敵艦の登場で潜水艦は窮地に陥り、渡辺達は艦長へ回天での出撃を直訴するが……!?
作戦海域へと向かう潜水艦・伊53潜は、米軍に発見され攻撃を受けてしまう。敵艦に囲まれた危機的な状況の中、関口は渡辺に「生きる」ことを託し、回天でひとり出撃する。
敵艦隊の眼前で、回天に乗り込んだまま意識を失ってしまった渡辺。回天の中では浸水も起こっていた。艦長は渡辺の命を守るため、敵艦隊の待ち受ける海面に浮上することを決断する。
昭和20年2月、敗戦の色が濃い日本。回天特別特攻隊、いわゆる特攻隊である千早隊が出撃した。見送る渡辺二飛曹は特攻隊より帰還し、生きる望みを失っていた。その渡辺は自殺を考え、海の中へと。だが、助けられてしまった渡辺は死を願うが、指揮官は帰還者を卑怯者呼ばわりしたことをあやまり、生きろと説得する。
沖縄は米軍に占領され、戦艦大和は沈んだ。迫りくる本土決戦を目前に、最後の回天戦が始まる!それは停泊する敵艦ではなく、洋上を航行する敵艦に突っ込むという成功率の低い作戦だった!
本土決戦を目前に、作戦海域へ到着した 伊53潜は、17隻からなる大輸送船団と遭遇。艦長は数的不利を鑑み、敵を分断する策を試みる。だがその作戦の最中、艦長は負傷。敵の護衛艦が迫る!
ついに出撃した渡辺。敵駆逐艦が目前に迫る。渡辺の執念は結実するのか!? そして、海底に取り残された伊58潜の運命は…!? 第二次大戦末期に実在した特攻兵器「回天」をめぐる極限の人間ドラマ、ついに完結。
戦記物を読み込んでいる私でも、この漫画の存在を知りませんでした。帝國海軍が誇った酸素魚雷に人間を搭乗させ、生身の人間が動きをコントロールして敵艦を葬る、この凄まじい発想を具現化してしまった、敗戦間際の我が国の追い詰められた姿を見る事が出来ます。 特攻を語る時に「決死」と「必死」の違いが論じられますが、その議論すら組み込まれた奥深い漫画である事を請け負います。一読に値する作品と断言します。
第二次大戦末期の日本では、複数の特攻兵器が開発されました。人間ミサイル「桜花」や人間魚雷の「回天」などですが、いずれも命を犠牲にして敵艦に体当たりすることを目的に作られた悲しい兵器です。『特攻の島』は、回天とその搭乗員を描いた作品ですが、回天という兵器は操縦することが非常に難しい有人魚雷だったようで、搭乗員の若者たちは訓練段階から死と隣り合わせの状況に苦悩します。兵士だけでなく、回天を開発した人物も登場し、史実を織り交ぜながら物語の極限状態に向かっていきますが、もし少しでも前に敗戦の日が分かっていれば、と思わずにはいられませんでした。
戦記物を読み込んでいる私でも、この漫画の存在を知りませんでした。帝國海軍が誇った酸素魚雷に人間を搭乗させ、生身の人間が動きをコントロールして敵艦を葬る、この凄まじい発想を具現化してしまった、敗戦間際の我が国の追い詰められた姿を見る事が出来ます。 特攻を語る時に「決死」と「必死」の違いが論じられますが、その議論すら組み込まれた奥深い漫画である事を請け負います。一読に値する作品と断言します。