あらすじレンガ村の森の奥、小さな双子の「ナナホシ」と「タチバナ」は今日も大忙しでおいしいパンを作っています。だって二人はパン屋さん。毎日村のお客さんが二人のパンを「おいしい、おいしい。」と買ってくれるのです。双子のパンがどうしてそんなにおいしいかって? それは二人のたいせつなひみつ。たくさん働いて森が暗くなったら、さあ――はじまり、はじまり。稀代のストーリーテラーが贈る、大人のメルヘンファンタジー。
2015年に短編「星の砂」が発表された時からずっと応援しており、2018年にようやく初単行本が出た私的イチオシ新人である雨野さやかさん待望の新刊です。 この『ナナホシとタチバナ』は幼い二人の双子の少女たちが営む不思議な美味しいパン屋さんを中心に、主に1話完結型の物語が描かれて行くファンタジー作品となっています。心理描写の巧さが光る雨野さやかさんらしく、この物語でも心に響く人情ドラマが展開され見所の一つとなっています。 また毎回のお決まりである様々な美味しいパンを作るシーンはシズル感たっぷり。クロミカンとチョコレートのみつあみパンや、黒と白の悪魔と天使のバゲットなど実際に食べてみたくなります。 かわいい絵柄と作風が実にマッチしており、とても心温まる作品です。 ……というだけでは終わらないのが、『ナナホシとタチバナ』の魅力。単行本の表紙と裏表紙のコントラストにも込められた秘密が解き明かされる時が楽しみです。 雨野さやかさんの世界にまだ触れたことのない方も、ぜひここから入場してみて下さい。